風の鳴る歌を翼にして光さすところまで   作:秋月玲

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翼の視点


CASE last

私、風鳴翼は目の前の少女、立花の言葉に苛立ちを隠せないでいた。

 

 

「わたし、奏さんの代わりになれるように頑張ります」

 

 

先程私に向けられた言葉だ。虫唾が走る。

 

 

奏と同じガングニールを纏うだけでも私の神経を逆撫ですると言うのに。お前なんかが奏の代わりになどなれるはずもない。

 

 

「そうね。あなたと私、戦いましょうか」

 

 

そう言って立花に剣を向ける。もう我慢がならなかった。

 

 

「奏がいなくなって私は1人で戦い続けた。この身も、心も防人として戦い抜くと決めて!」

 

 

刃で斬りかかる。立花はただ斬られている。正直、動きが素人だ。それがまた私を苛つかせる。

 

 

《天ノ逆鱗》。アームドギアを空中で巨大化させ、蹴り落とす。その体勢に入ったところで私は腹部に痛みを感じ、崩れ落ちる。

 

 

「翼さん!」

 

 

立花に受け止められ大事には至らなかったが、謎の腹部の痛みに何故か懐かしさを感じていた。

 

 

「翼さん。わたしいつも親友に一言多いって怒られるんです。だからもし、翼さんの嫌がることを言ってしまったのならごめんなさい。でも、わたしたちがいがみ合っているのを喜んでくれないとわたしは思います」

 

 

誰に? 奏にだろうか?

まずその疑問が浮かんだ。しかし、何故か立花の言葉に納得してしまう。

 

 

結局立花への苛立ちはどこか消え失せ、その後雪音が加わり、マリアや暁、月読が参入したことで、二課の装者は一気に増える。

 

 

「これはいったい?」

 

 

合流したばかりのマリアたちと立花や雪音は簡単に呼吸が合っている。私だけが上手く噛み合わない。

 

 

「なんかマリアさんたちと一緒に戦うの初めてな感じしないんですよね」

 

 

「お前もか。あたしもそうなんだよな」

 

 

「初対面なのに懐かしい感じ」

 

 

そんな会話が聞こえる。

 

 

「それにしても。なにか足りない気がするのよね」

 

 

「マリアもデスか? アタシも変な感じがするデスよ」

 

 

マリアや暁の言葉には私も含めた全員が感じていた。

 

 

なにか大切なものが抜けている気がする。心にポッカリと穴が空いたような感覚に襲われている。

 

 

数日後には小日向が神獣鏡のギアを纏うことが決まる。小日向も私たちと同じような感覚を感じているようだった。

 

 

「奏。私はこれでよかったのだろうか? いつのまにか立花のことも認めている。雪音やマリアたちにも頼もしくも感じながらいる。防人の誇りを忘れているつもりはないが」

 

 

昔なら考えられなかった自分の感情に、つい奏の写真に語りかける。

 

 

「あれ? 奏との写真はこんなに少なかっただろうか?」

 

 

所々抜けがあるアルバムを見つめ、呟く。そして古びたなんの写真も飾られていないアルバムに胸が痛む。

 

 

小日向も含めた全員が珍しく二課に集まっていた。

 

 

「歌を聴いてみたい?」

 

 

月読に言われた一言。

 

 

「そうデス。アタシたちちゃんと聴いたことないデスよ」

 

 

「生で聴いてみたい」

 

 

「わたしもお願いします。わたし、ファンなんです」

 

 

暁や小日向にまで言われて戸惑う私を他所に、3人は顔を見合わせている。

 

 

「あれ?」

 

 

「前にもこんな会話したデスか?」

 

 

雪音や立花も頭を捻っている。

 

 

「しかし、歌と言われてもどうしたものか。場所もあるまいし」

 

 

「あら場所ならあるじゃない?」

 

 

私の呟きにマリアが返す。しかし、初耳だ。

 

 

「そうだな。あそこは防音もしっかりしていたし」

 

 

「楽器も置いてあったりしたもんね」

 

 

雪音や立花の言葉に全員が頷いている。

 

 

「ちょっと待ってくれ。そんな場所私は知らないが?」

 

 

私以外の全員が知っているのに、1番古くから二課にいる私が知らないのはおかしい話の気もする。

 

 

「とりあえず行ってみませんか?」

 

 

「そうだな」

 

 

私が案内されるという少し変わった状態で、1つの部屋にたどり着く。誰かが最近まで使っていたのか、埃もなく綺麗な部屋。ピアノとギター、簡単な録音機がある部屋。

 

 

「不思議だ。私はこの部屋によく来ていた気がする。しかし、皆はどうしてこの部屋を知っていたのだ?」

 

 

私の質問に全員が顔をしかめる。

 

 

「どうして知っているんでしょう?」

 

 

「思い出せない」

 

 

とりあえずギターを手に持ってみる。しっかりとくる感じだ。

 

 

「歌ってみせてもらえる?」

 

 

マリアに促され、音源を探す。それにしても再生する機械はあれど、曲がない。風鳴翼として歌ってきた曲も、ツヴァイウイングとして奏と歌ってきた曲も見当たらない。よく来ていた気がするが、私が使っていた部屋ではないのだと改めて思う。

 

 

「音源がないのであれば困ったものだな」

 

 

入っているのは知らない1曲のみ。

 

 

「とりあえずその曲をかけてみたら?」

 

 

「それもそうだな」

 

 

そう言われて再生ボタンを押す。流れてくるメロディに何故か涙が止まらない。

 

 

あぁ、この曲は私が初めて作ろうとした曲だ。色々な人に協力してもらって完成させた曲。どうして忘れていたのだろう。

 

 

 

「翼さん。これなんて曲ですか?」

 

 

あぁこれは

 

 

 

『風の鳴る歌を翼にして光さすところまで』




これで完結となります。


また違う作品も書いていこうと思うので、よければそちらも楽しみにしていただけると幸いです


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