風の鳴る歌を翼にして光さすところまで   作:秋月玲

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CASE 3

奏ことがあってから2年の月日が流れた。相変わらず忙しくしている翼とオレ。あれから同情に近い感情からファンになってくれた人もいたりして複雑な気分だ。

 

 

「それでも私は歌で癒せるならいいと思う」

 

 

翼は会うたびにそう言っていた。でも、お前の心はどうやって癒すんだ?

 

 

 

「至急集まってくれ」

 

 

歌手として活動がない日はこうやって二課に呼び出されることも増えた。戦えるのは翼1人。その翼のケアのために呼ばれている。

 

 

「なぁ、南さん。オレ引退しようと思うんだけど」

 

 

正直、あの一件以来歌うことに抵抗がある。楽しく歌えてないのだ。

 

 

「それは、してほしくないです。光さんの最近の歌を聞いているので理由はなんとなくわかりますが」

 

 

司令や了子さん。緒川さんも驚きの表情をしている。

 

 

「もう少し考えてみてはいかがですか? あなたには多くのファンもいらっしゃるのですから」

 

 

緒川さんの言葉もわかる。決断するのが早いって言われるのもわかる。でも2年考えた結論だ。

 

 

「それなら最後に引退ライブでもしないとね。じゃないとファンが悲しむわよ」

 

 

それもそうだなと思う。引退の発表とライブの発表をいつにするかを考えていたら警報音が響く。ノイズが現れたようだ。

 

 

「すぐに翼を現場へ向かわせろ」

 

 

「ノイズの反応の他に高エネルギー反応。これはアウフヴァッヘン波形。波形パターンの照合完了。そんな」

 

 

「ガングニールだとお?」

 

 

その言葉に動揺が隠せない。だってそれは奏の。

 

 

「すぐに現場に向かいます」

 

 

同じように衝撃だったのだろう。翼が慌てるように飛び出す。

 

 

「オレも行きます」

 

 

「しかし、光ではノイズに」

 

 

そうわかっている。オレにはノイズと戦う力なんてないって。それでも、

 

 

「それでもこの目で確かめたいんだ」

 

 

司令の言葉を最後まで聞かず飛び出す。すぐに車に乗り込みエンジンを回す。その動作が普段より遅く感じてイライラが募る。

 

 

結局オレが現場に到着したときには翼が全て終えていた。そして翼の目の前にいる初めて見る女の子。奏の、ガングニールのシンフォギアを纏った少女。

 

 

「わたし翼さんに助けてもらったの2回目なんです」

 

 

その少女の言葉にオレも翼も、一瞬だが思考が停止する。意味がわからないからだ。

 

 

「おい、それどういうことだ?」

 

 

気付けば少女の肩を強く握り揺さぶっていた。

 

 

 

「光さん」

 

 

慌てて翼に止められ、遅れてやってきた緒川さんにも静止されてようやく冷静になれた。

 

 

「すまない」

 

 

意識が朦朧とするまま本部へ帰還した。ガングニールを纏っていた少女、立花響を引き連れて。

 

 

その後の流れはよく覚えていない。立花響が共に戦うことになったのはなんとなく理解した。

 

 

それでもどこかその少女を受け入れられずにいた。

 

 

「あのぉ? 光さん少しいいですか?」

 

 

自販機でコーヒーを買い、その側にある椅子でボーッとしていると立花響に話かけられていた。

 

 

「わたし、翼さんとうまくやりたいんですけど、どうも上手くいかないんですよね。光さんは翼さんと付き合い長いって聞きました。どうしたらいいと思います?」

 

 

勝手に相談を持ちかけられていた。気付けばオレの隣に座っていて。

 

 

「翼は」

 

 

そこで言葉に詰まる。奏じゃないと難しい。そう言おうとしてしまっていたからだ。

 

 

「難しいところは確かにある。気も強いし。それでも優しい子だ。きっと君から覚悟が感じられないんだろう。なんのために戦うのか。その覚悟が」

 

 

その言葉で納得したのか、何度も首を縦に振って頷いている。

 

 

「だったら、わたしに戦いを教えてください。強くなりたいんです。わたしにも守りたいものはあるんです」

 

 

断ろうと思った。それでも真剣な目をする立花に承諾してしまう。後々大きく後悔すると知らずに。

 

 

「どうしてオレなんだ? 司令や緒川さん。オレより強い人はいるのに」

 

 

「だって、光さんは翼さんや奏さんに稽古つけていたと聞いたので」

 

 

なるほど。そう思ってしまう。あの2人に稽古つけていた記憶はないが、一緒に訓練はよくしていた。

 

 

「でも強くなっただけじゃ翼は認めないと思うけどな」

 

 

「だとしてもです。想いを伝えるために、わたしにも守りたいものがあるって。そのためには守れるくらい強くないと意味がありませんから」

 

 

その後の訓練でわかったことは、この立花響という少女は、刀術も槍術も棒術も、銃器もそれらの素質がないことだった。

 

 

「立花は、その拳で戦うほうがいいかもしれないな」

 

 

武器の扱いが残念すぎるため、そう伝える。格闘技の経験はないが、それでもなんとか形になるよう何度も指導を続けいた。

 

 

「あれは、光さんと立花?」

 

 

その光景を翼に見られていたと知らずに。そして指導を続けることでだんだんとこの立花響を可愛がるようになっている自分に気付かずに。

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