風の鳴る歌を翼にして光さすところまで   作:秋月玲

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CASE 4

立花と翼は何度一緒に出撃しようがその呼吸が合うことはなかった。そもそも翼が合わせるつもりがないように見える。

 

 

「んー。どうもいかんな」

 

 

それは司令も感じているようだ。このままではよくないことも。

 

 

「翼、ちょっといいか?」

 

 

戦闘から戻った翼を捕まえて話をしようと思った。

 

 

「なんでしょう?」

 

 

「奏のことがあって、お前が立花を受け入れにくいことはわかる」

 

 

翼の表情が歪む。苦虫を噛み潰したように。

 

 

「それでももう少しどうにか出来ないか? 立花は立花なりに一生懸命やっていることだし」

 

 

「話はそれだけですか?」

 

 

初めて見る翼の冷たい目に思わずたじろぐ。

 

 

「ないようでしたら失礼します」

 

 

そう言い残し立ち去る翼。その背中を見つめるしか出来なかった。

 

 

「怒っているのか。まだ仕方ないか」

 

 

長期戦になると思っていたオレの思惑を覆すかのような大きな出来事が起こるとは思っていなかった。

 

 

 

数日後にノイズが現れたときのことだ。

 

 

「あいつらはなにをしているんだ」

 

 

そう呟く司令の言葉はおそらくこの場にいる全員の代弁だろう。ノイズを倒し終わったと思ったら立花が翼になにかを話しかけた。それをきっかけに翼が立花に刀を向けているのだ。

 

 

立花がなにを言ったかは聞こえなかった。それがきっかけなのもわかる。それでも驚くなと言うのが無理な展開だ。

 

 

「止めてきます」

 

 

オレが立ち上がると声がかかる。

 

 

「気をつけろよ? お前ではシンフォギアを止めることは難しいぞ」

 

 

司令の言葉に頷くと、大急ぎで現場へ向かう。

 

 

「そうね。あなたと私、戦いましょうか」

 

 

オレが到着したときに聞こえた翼の声。

 

 

「いやわたしが言っているのはそういう意味ではなくてですね」

 

 

立花の言葉も聞かず、翼が斬りかかる。なんとか立花はかわしたり防いだりしているが、次の翼の行動に心臓が飛び出そうになる。

 

 

アームドギアを空中で大きく展開し、それを蹴り込む翼の技《天ノ逆鱗》の体制に入っていたからだ。

 

 

「マジかよ」

 

 

なんとか立花に当たる直前に持っていた刀で受け止めることが出来た。

 

 

持っていた刀は当然折れ、ついでに受け止めた右腕も折れた。衝撃で内臓も傷ついたのか口から血を吐く。さすがにシンフォギアの攻撃を受け止めるなんて無謀すぎたかもしれない。

 

 

 

「光さん! どうして」

 

 

「なにをやってるんだよ。らしくないぞ、翼?」

 

 

翼の両目から大量の涙が溢れているのが、目に入り言葉に詰まる。

 

 

「泣いてるのか?」

 

 

「泣いてなどいない。私は剣、剣に涙など不要だ」

 

 

涙が止まる様子のない翼に動きが止まる。

 

 

「どうしてお前なのだ? 何故だ?」

 

 

立花に詰め寄る翼。両手を立花の肩に乗せ大きく揺さぶっている。

 

 

「ガングニールは奏の、それだけじゃない。どうしてソコにいるのがお前なのだ!!!」

 

 

「翼」

 

 

そっと翼の手を掴んで止める。

 

 

「八つ当たりか? らしくないぞ?」

 

 

「らしい? 私らしいとはなんですか? 全てを我慢し防人として生きる私のことですか!?」

 

 

翼の言葉に衝撃を受ける。そんなつもりはなかった。それでもそう受け取れるような言い方をしてしまったのだと思ったから。

 

 

もう自分の前だけでは、ただの翼でいていいとは言ってくれないのですね

 

 

翼の声は小さくなにを言ったのか聞こえなかった。それがすごく大事な言葉な気はしていた。

 

 

「翼、今なんて」

 

 

「もうよいのです。決別です。歌女であった私と」

 

 

オレの胸を押して離れると1度だけこちらを向く。 

 

 

「さようなら。***」

 

 

最後の言葉は風にかき消された。手を伸ばすオレを無視するように翼はその場から飛び立った。

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