オレが目覚めたのは、あの日から3日が過ぎていた。
「目が覚めましたか?」
病院のベッドのようで、ベッドの横にある椅子には立花が座っていた。
「どうしてここに?」
「光さんはわたしのせいで怪我してしまったので」
それから立花から色々話を聞いた。オレは一歩間違えていたら命を落としていたかもしれないらしい。翼はあれから戻っていないようだ。
「それにしても全治1ヶ月か」
「そのくらいで済んでよかったじゃないか」
司令もいたようでそんなことを言われる。
「シンフォギアの攻撃を生身で受け止めるなんて無茶をする」
あの時のことを思い出す。咄嗟に動いてしまったが、自殺行為だったなと思う。
「それで今ノイズは?」
「それはわたしが頑張ります。翼さんの分まで」
明るく笑う立花の頭を撫でようとして、腕が動かないことに気付く。
「その右手は神経が壊れているそうだ。リハビリ次第だが、もしかすると2度と動くことはないかもしれん」
オレの視線に気付いたのか司令が説明してくれる。
「そうか」
一言だけ呟く。正直実感がない。
翼のいないまま数日が過ぎる。その間ノイズの相手は立花が上手くやっているようだ。オレも退院し、二課でリハビリついでに仕事をこなす。
「無理しないでくださいね。あったかいものどうぞ」
「あったかいものどうも」
オペレーターの友里さんが入れてくれたコーヒーを受け取り、画面を見つめる。片手で扱うのはなかなか慣れないが、なんとかやっていく。右手はまだ動く様子はなかった。
「翼ちゃんのこと、あまり自分を責めないでくださいね」
友里さんにお礼だけ言い作業を続ける。ノイズが何者かに倒された情報を主に探す。翼の行方の手掛かりが他に思い当たらないからだ。
「最近、九州の方でノイズが不自然に現れて消えているな。翼かもしれないし、行ってみるか」
この腕で音楽活動は休止している。時間もあるのでそう提案してみるか。
見つけた情報を司令や緒川さんにも見せて、そこに行かせてもらえるように頼む。
「しかし、1人で行くつもりか?」
「その腕じゃ難しいんじゃない?」
司令や了子さんには反対される。
「それでも翼がいるかもしれないなら行ってみたいんです」
「翼さんのことはあなたの責任じゃない。無理はしないでください」
緒川さんにもそう言われて行くのは難しそうだと感じる。どれだけ反対されても行くつもりでいるが。
「光さんが歌手活動を休止している今、私も暇していますし、運転手くらいなら出来ます。私でよければ」
南さんがそう言ってくれる。
「まぁそれならいいんじゃないの?」
了子さんが後押ししてくれたけどこともあり、ノイズが出たらすぐに撤去することを条件に許可してもらえた。
翌日、オレたちは目的の場所に来ていた。
「ここが前にノイズが現れた場所ですか?」
市街地でもなく、山の中にいる。
「あぁ。しかしこれは翼じゃないな」
戦闘があったであろう形跡を見ると、穴が空いたり一部が吹き飛んだような跡から、翼ではないことが予想される。あいつなら剣で切り裂いたような跡になるだろうから。
「でも翼さんじゃないならこれはなんなのでしょう?」
そう。シンフォギアは翼の『アメノハバキリ』と今は立花の体に埋め込まれている『ガングニール』しか存在は確認されていない。そのどちらもこの跡からは違うことがわかる。
「未確認のシンフォギアがあるっていうのか」
顎に手を置いて考えこむオレを見て南さんが本部へと確認を取る。
「やはりあの2つ以外のシンフォギアは確認されていないそうです」
「とりあえず今日はこの辺にして戻りましょう」
それ以上の手掛かりはないと思い、ホテルに戻ることにする。
「ここはあたしも居場所だ。荒そうってなら考えがあるぜ」
ふと言葉が聞こえた気がして、辺りを見渡す。誰もいないことを確認して歩きだす。
少し高い場所からこちらを見ている存在に気付くことなく。