翌日、再びオレたちは同じ場所を訪れていた。ここに翼へ繋がる情報はなさそうに思えたが、未知の力を無視するのも違うと思ったからだ。
「それにしても、どんな風に戦えばこうなるんだ?」
大きく削られた地面を見つめ呟く。
「新たなシンフォギアか。はたまた全く違う力か。どちらにしてももう少し情報がほしいところだな」
櫻井了子が築いた、櫻井理論。それに基づき生み出されたFG式回天特機装束、通称シンフォギア。作った本人である了子さんがガングニールとアメノハバキリの2つしか存在しないと言っている。その言葉が本当なら、全く別の人間が真似して作ったものか。それとも「彼女」が嘘を言っているか。
「光さん、この辺りでは最近ノイズを目撃したという情報はないみたいです。大きな音がこの山からよくするとの情報はいくつかありますけど」
南さんの伝えてくれた情報から、この辺りで観測されたノイズは特定の誰かを狙ったかのような感覚を覚える。
「しかし、そんなことありえるのか? ノイズが意思を持って誰かを襲うなんて」
「ノイズが意思ですか?」
オレの呟きに南さんが反応する。まぁ当然の疑問だろう。
「ノイズは無差別に人を襲うと思われている。しかし、ここに現れたノイズはそれだとおかしいんだ。この山の麓には小さな村がある。でも、ノイズの目撃情報がない。ならこの山にいる誰かを狙って現れたと考えたほうが自然なんだ。それにこの山だけにノイズの出現が集中しているのもおかしな話だ。でもノイズを操る聖遺物があると仮定すれば、納得もできる」
「そんな聖遺物があると?」
聖遺物に関してはほとんど知識はない。どんな力を持った物があっても不思議ではないのかもしれない。
考えこんでいると、耳に雑音が入る。ノイズが発する声のようなものだ。
「近くにいるのか?」
当然オレたちではノイズに抗う術などあるはずもない。急ぎで山を降りる準備に入る。
『Killter Ichaival tron』
そんなオレの耳に今度は歌が聞こえた。
「これは聖詠?」
シンフォギア装者がシンフォギアを纏う時に歌うものだ。
「なら、コレは新たなシンフォギアの仕業か」
ここに未知のシンフォギアがあることを意味している。翼のとも、立花のとも、もちろん奏のとも違う聖詠。
「どうします?」
近くで爆発音のような大きな音もし出している。未知のシンフォギアが戦っているのだろう。近づくか撤退か。
「南さんは村に戻って、司令に連絡を。オレは一応接触を試みてみる」
納得はしていない様子だったが、南さんは車に乗り込むと山を降りて行ってくれた。
ノイズにもシンフォギアにも気付かれないよう慎重に移動する。少し開けた場所で目に入ったのは、ノイズを銃やマシンガンのような武器で蹴散らしていく真っ赤なシンフォギアを纏った少女だった。
「あれがか」
邪魔にならないように隠れて様子を伺う。順調にノイズを倒していく少女に感心してしまう。
「翼や奏とは違った、それでいて慣れてる戦い方だな」
大味な戦闘は奏と似ているのかもしれないが、それでも撃ち漏らしがほとんどないところは似ていない。
ノイズをほとんど倒し終えて、私服に戻った白銀の髪をした少女。接触するならここかとオレも姿を見せる。
「お前は昨日の。お前があたしを狙っているのか?」
いきなり胸倉を掴まれる。
「なんのことだ?」
「惚けるな! 『ソロモンの杖』を使ってノイズをあたしにけしかけてるのはお前なんだろ?」
ソロモンの杖?
「なぁ、やはりノイズを操る聖遺物が存在するのか?」
「当たり前だろ。お前がそれを使ってあたしにノイズを襲わせたんだろうが!」
そんな聖遺物があるとして、なんでこの少女は狙われた?
誰に? なんのために?
頭の中を疑問が埋め尽くす。
そして何より、
「そのシンフォギアはどこで手に入れた?」
「やっぱり知ってるんじゃねぇか。これはあたしのパパとママの置き土産だ」
なるほど。少女の両親が作ったものか。誰かに渡されたものか。狙われていることを考えるなら渡されたものと考えるべきかな。
そこでまたノイズが現れる。
「だあ。今日はなんでこんなしつこいんだ」
『Imyuteus amenohabakiri tron』
1番聞いたであろう聖詠が聞こえた。空から降ってくる短刀でノイズはあっさりと倒されていく。
「そのギアはいったい? 翼」