風の鳴る歌を翼にして光さすところまで   作:秋月玲

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CASE7

現れた翼は《真っ黒なアメノハバキリ》を纏っていた。

 

 

「黒いギアだ? お前もシンフォギアかよ」

 

 

さっきの少女が騒ぐが、オレの耳には入ってこない。

 

 

「光さん」

 

 

こちらを見つめる翼の瞳はどこか淀んで見える。

 

 

「翼、今ま……」

 

 

言葉が途中で遮られる。少女が吹き飛んだのが見えたからだ。

 

 

「いきなりなにしやがる」

 

 

瓦礫から出てきた少女が腰に備えてあるミサイルを放つ。が、翼はあっさりと真っ二つに斬り裂く。

 

 

「誰もかれもが、私を」

 

 

「その場所にいていいのはお前ではない」

 

 

翼の言葉は小さく聞き取れない。

 

 

「なんなんだよお前は」

 

 

「風鳴翼が歌うのは戦場だ。容赦などしない」

 

 

翼の攻撃をなんとかかわす少女。しかし、長くもちそうにはない。

 

 

「翼! もうよせ」

 

 

オレが左腕で掴んだため、翼の動きが止まる。

 

 

「まさか光さん、右手が?」

 

 

咄嗟にとは言え、翼から遠いほうの腕でわざわざ掴んだことで察したのだろう。

 

 

「あぁそれは」

 

 

「私のせいなのでね」

 

 

上手く言い訳も浮かばずにいると翼にはわかったようで、刀を離して膝から崩れ落ちた。

 

 

「あぁ! 私は! 私は私が憎い!!!!!」

 

 

そのまま飛び去ってしまう翼。真っ黒がギアが、まるで真っ黒な翼で羽ばたくように見えた。

 

 

「ったく。なんだったんだ?」

 

 

「すまない。君を巻き込んだようだ」

 

 

実際翼がなんの目的でここに来たのかはわからない。でも、確実にこの子は巻き込まれた形だろうと謝る。

 

 

「クリスだ。雪音クリスだ」

 

 

なにを言われたのか一瞬わからなかったが、名乗られたのだとわかる。

 

 

「倉田光だ。君には少し話を聞きたいのだが、構わないか?」

 

 

オレも自己紹介って言っても名乗るだけだが。返し、雪音クリスを連れて本部へ戻ることにする。もちろん新たなシンフォギア装者なのだから色々と聞きたいし、保護しておきたい。

 

 

 

 

 

「あたしもいくつか聞きたいこともある。別に構わないって確かに言った。だけど、どうしてあたしは今ここにいるんだ?」

 

 

本部まで連れて来られると思っていなかったのだろう。本部に着くなり騒ぎ出す。

 

 

「司令、とりあえずこいつ、雪音クリスのことは任せても?」

 

 

「あぁ。俺が話しておこう」

 

 

司令の許可を得て部屋を出る。目的の人物はすぐに見つかった。

 

 

 

「真っ黒なギアねぇ。私にもさっぱりだわ」

 

 

了子さんはシンフォギアを作った本人だから、あの翼のギアについて聞いてみたが、答えは得られない。

 

 

「私が立証したシステムって言ってもわからないことも多いのよね。心象が作用しているとは思うんだけど」

 

 

「真っ黒だったってことは、なにか悪いモノが取り憑いたとか? それとも」

 

 

「心を闇に引きこまれたか。どっちにしても後回しには出来ない案件ね。色々調べてみるわ」

 

 

やはりそうなのかと思う。あの翼はどこか寂しそうで、禍々しさもあった。それに立花や雪音に対しての態度は翼らしくない。

 

 

「ありがとう」

 

 

お礼だけ言って部屋を出ようとしたオレの背中に言葉が投げかけられる。

 

 

「彼女を信じてあげなさい」

 

 

どうしてその言葉だったのかはわからないが、胸に留めておこうと思った。

 

 

 

「その、なんだ。勘違いして悪かったな」

 

 

いつものように自販機でコーヒーを買い、ベンチ座っていると話が終わったであろう雪音がやって来た。

 

 

「別に構わない」

 

 

「いやそれでも一応謝っておこうと思って」

 

 

まだ手をつけていないコーヒーを雪音に渡す。

 

 

「ありがと。気にすることはないさ」

 

 

そう言いながら雪音の頭を軽く叩く。

 

 

「いや、おい」

 

 

雪音がなにかを言っていたが、そのまま歩き自分用に当てられた部屋へと入る。

 

 

「心を闇にか。女の子だってわかっていても、翼なら大丈夫だと思っていたんだろうな」

 

 

翼を追い込んだのは間違いなく自分だろう。立花と翼がぶつかったあの日。

 

 

あのとき、オレが言葉を間違えなければ、翼はああならなかったのだろうか。

 

 

(大丈夫さ。まだ間に合うよ。光が***)

 

 

奏の声が聞こえた気がした。最後の1番聞きたい部分は聞こえなかったけど。

 

 

 

「でも、そうだな。オレが諦めるわけにはいかないよな。よし、翼に会って謝るか」

 

 

気合を入れるオレに司令から通信が入る。

 

 

『戻ったばかりで申し訳ないのだが、米国のお偉いさんがお前さんに会いたいそうだ。アメリカに渡ってもらえないか?』

 

 

「アメリカに? それは歌手としての仕事ですか?」

 

 

『ああ、歌手と二課。両方での仕事だ』

 

 

二課でのオレは主に交渉をメインにしている。それなりに有名だから、色々と都合の良い場面も多い。優先して会ってもらえたり、紹介してもらえたりと。

 

 

「わかりました。アメリカに向かいます」

 

 

翼のことは気になるし、歌手としての仕事は受けたくない。しかし、そうも言ってばかりいられない。なので不承不承ながら了承する。

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