風の鳴る歌を翼にして光さすところまで   作:秋月玲

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CASE 8

「はじめまして。こちらでアーティストをしている」

 

 

「マリア・カデンツァヴナ・イヴ。さすがに貴女のことは知っていますよ」

 

 

まさか米国のトップアーティストが、交渉の場にいるとは思わず少し驚く。

 

 

「そう。その割にはなんの反応もないのね。やはりツヴァイウイングと昔からいるからかしら?」

 

 

「さあどうでしょうね。それで今日はどんな用件で?」

 

 

歌手として来ているわけじゃない。二課の職員として相手の要求を聞く。

 

 

「そうね。貴方とユニット曲をやりたいと思っているの」

 

 

「それはオレの一存では決めれることではないので」

 

 

正直、歌手としての依頼なら断りたい。世界の歌姫と言われるマリアとのコラボに興味がないわけではない。それでも誰かと歌う気になれないし、なにより今は右腕のこともあり、不可能に近い。

 

 

「そっちはその答えで結構よ。もう1つの用件なんだけど……」

 

 

「はっ?」

 

 

そのもう1つの用件があまりに予想外すぎて言葉を失ってしまう。

 

 

「私と私の妹のような2人を二課で受け入れてほしいのよ」

 

 

シンフォギア装者3人の受け入れ。それには驚きを隠せない。米国にシンフォギアがあることも驚きだが、それを二課で受け入れる。米国にノイズが出ないわけじゃない。ノイズへの対抗手段を手放す必要性がわからない。

 

 

「そもそもどうして米国にシンフォギアが?」

 

 

「それの説明がなければ受け入れられないですか?」

 

 

ここまでずっと黙っていた米国の聖遺物研究所の所長、ウェル博士が口を開く。

 

 

「ええ。さすがにどんな思惑があるのか判断しかねますからね」

 

 

「なるほど。2年前のツヴァイウイングのライブ。これの映像を極秘に手に入れましてね。もちろん極秘裏での入手なので一般に出回っていたりはしませんよ」

 

 

あの映像が仮にあったとして、そんな簡単に作れるものなのだろうか?

 

 

「もちろん、僕のこの頭脳があってこそですがね」

 

 

当然それで納得するわけもない。しかしながらそれ以上のことは聞けそうにない。

 

 

「それで双方のメリットは?」

 

 

「それはもちろん、戦力アップ。僕も出向くので技術的にも大きいと思いますよ?」

 

 

こちらへはまぁそうだろうなと思う。

 

 

「実は米国には不審な動きがあるの。だから二課の保護してもらいたいと思っているわ」

 

 

翼は未だ行方知れず。立花は未熟さが残る。こちらとしては大きいと思うが、それでもどこまで信用できるかわからない話に判断に困る。

 

 

「わかりました。前向きに上に掛け合ってみましょう。ただし、装者の検査、及び管理はこちらに。ウェル博士にもしばらくは監視の意味も込めてこちらの職員が補佐としてつきます。後、マリアさんには歌手としてだけでなくタレントとしての活動も要求されると思います。その条件でよければですが?」

 

 

オレの言葉に今度はマリアとウェルが相談をしている。正直、これでも不安のほうが強い。だから最低でもこのくらいは相手に飲ませないと。

 

 

「わかったわ。その条件で構わない」

 

 

マリアの言葉にウェルも頷くのを確認して、この話は終わる。

 

 

「ところで、他の装者2人というのは?」

 

 

「今なら訓練室にいるはずよ。見学していく?」

 

 

マリアの案内で訓練室へ向かう。

 

 

「やはり噂は本当のようね。風鳴翼の失踪」

 

 

二課にこれから来るマリアに誤魔化しても意味がないのかもしれない。

 

 

「そんな噂があるのか。まぁ今活躍休止していて、オレとは違ってメディアへの露出も少ないから仕方ないのかもしれないな」

 

 

なんとなく、そう答えてしまう。多分、オレが認めたくないからだろう。

 

 

「着いたわ。今ちょうど訓練している2人よ」

 

 

緑のシンフォギアを纏う金髪の少女と、ピンクのシンフォギアを纏う黒髪ツインテールの少女がそこにはいた。

 

 

「イガリマのシンフォギア、金髪のほうが暁切歌。シュルシャガナのシンフォギア、黒髪のほうが月読調よ」

 

 

マリアが2人の紹介をしてくれる。オレはそれに耳を傾けながら訓練を眺める。

 

 

暁のほうは、大胆な攻撃に動きが目立つ。月読のほうは確実性を求めすぎて攻撃パターンが読みやすい。

 

 

「中に入っても?」

 

 

「なにを言っているの? シンフォギアに生身でやりあうって言うの?」

 

 

オレが聞くと初めて見るマリアの慌てた顔。

 

 

「まぁ、奏や翼ともよくやってたからな。そっか。二課のほうはデジタル体になってのだったか。ならこっちでは諦めるか」

 

 

向こうでの訓練は生身じゃなく、オレの体をコピーさせた体を動かして戦っていたのだったと思い出す。もう立花の訓練に付き合うときは生身と生身だったし、翼ともしばらくやっていなかったから忘れかけてた。

 

 

「そんな技術があるなんて驚きね」

 

 

「まぁノイズと戦う手段がないから、オレが強くても意味がないかもしれないけどな」

 

 

そうどれだけ強くても、指令や緒川さん、オレもノイズと戦えない。それがもどかしくもある。

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