14話 病院
病院のベッドの上
「知らない天井だ。って言ってみたかったんだよね〜。いてて。流石に痛むか〜」
「どうやら目を覚ましたようだな」
横から声がしたので振り向くと綾小路くんの姿があった。それに私の手を握って目を腫らしながら寝ている愛里ちゃんの姿があった。
「ふふ、私が生きてて嬉しい?」
「まあ、お前がいないと困るからな」
「そう言う所嫌いじゃないよ。ふふ」
神条はこの状況が楽しいようで笑っている。
「まあ、お前の冷蔵庫にあったものを見た時は俺でも驚いたがな」
「ふふ、病院に行った時くすねておいて正解だね。輸血袋〜ふふ。こんな時の為に私の血を抜いておいて正解だったよ〜」
神条の冷蔵庫には自分の血液を抜いたものを何パックも保存していたのだ。
それをあの当日、自分で輸血し血の量を増やしていた。
「死ぬのが怖くないのか?」
神条にとっての死の概念が気になり綾小路が問いかける。
「私が死ぬと思う?まあ、死んでみるのも面白いと思うけどねぇ〜。その時の人間の表情見てみたいし。目の前で人が死ぬ時どんな表情をするのか知りたいじゃない?ふふ」
神条はその時を想像して笑っていた。
「お前は本当に狂っているな。お前がするあの質問、神条ならなんて答えるんだ?」
神条がいつもする質問。
生きたいか死にたいか。
神条自身はその質問についてなんと答えるのか。
「私は狂ってないよ。いたって正常。人の感情に興味があるだけ。私はどっちでもいいよ。私を楽しませてくれるなら飽きるまで生きるし死ぬ事が私を楽しませてくれるなら笑顔で目の前で死んであげる。」
神条は笑顔でそう答える。
「意味がわからないが。今は置いておこう。」
「ん?そう?それで私はどれくらい寝てたの?」
「1日ほどだ。驚異の回復力だと思うぞ」
「まあ、妥当じゃないかな〜。そろそろナースコールして診察でもしようかな。」
ナースコールを押そうと右手を伸ばすとその振動が伝わったようで佐倉が目を覚ます。
「じゅん、さん?」
「うん、そうだよ。おはよう。愛里ちゃん。恐い思いさせてごめんね」
神条が頭を撫でてあげると、佐倉が神条に飛びつく。
「准さんが……死んじゃう……と思って…わ、私恐くて…」
涙をたくさん流しながら私を抱きしめる。
「よしよし、大丈夫だよ〜。愛里ちゃんを残して私は死なないから。私がいつでも守ってあげるからね〜」
泣きじゃくりながらこく、とうなずく。
佐倉はこれから神条の言う事を聞き続けるのだろう。依存という形で。自分の事を身を挺して守った神条を崇めながら。
その後ナースコールをして看護婦を呼ぶと検診をしてもらう。
傷がそこまで深くなかった為、1週間ほどで退院できると言われた。
その後警察関係者がきて証言を求められたので綾小路と打ち合わせた内容を話す。
私達には一切の罪はないようだ。
そしてその後学校関係者の人達が来る。
担任の茶柱先生と理事長の坂柳さんだった。
「この度は我が学校の敷地内職員がこのような事件を起こしてしまい本当にすまない」
理事長は深く頭を下げた。
「大丈夫ですよ。私がやりたくてやっただけですし。でも〜私の実力でこの学校から不要な輩を排除できたので報酬が欲しい所ですね。ふふ」
その言葉に理事長は驚くが茶柱先生はやはりといった視線を送る。
「いくら欲しいんだ?神条」
理事長に代わり茶柱先生が質問する。
「そうですね〜。私に2000万ポイント、ストーカー被害にあった、佐倉愛理に500万ポイント、犯人を取り押さえ警察などを呼んだ綾小路清隆に500万ポイントは欲しいですねぇ。」
「中々の高額をふっかけるじゃないか」
神条はにっこりと笑うと話を続ける。
「もし、これが現金だったら適正な金額を言いますけど。この学校はポイントがお金。外で使えないですし。私の刺された場所が悪かったら学校で殺人事件が起きたことになりますからねぇ〜。条件を飲んでくれるならこの事は私が穏便に済ませて欲しいと言っているからと警察に言ってもらってかまいませんよ〜。そうすれば傷害事件が起きたくらいで済ませれますし。マスコミにも言わなくて結構です。」
「はは、中々面白い生徒が君のクラスにいるじゃないか。わかったその条件を飲もう。それに加えて君にはプロテクトポイントを付与しよう」
「理事長、よろしいのですか?」
「かまわない。彼女は優秀だからね、退学にでもなってもらっては困る。」
「話が早くて助かります。それでプロテクトポイントというのは?」
「1度だけ、退学を無条件で回避できるというものだよ。」
「それはいいものをもらいました。」
「それでは私は失礼するよ。今から準備があるからね」
理事長は茶柱先生を残して出て行った。
「はぁ、神条、お前は怪物だな」
「失礼ですよ。茶柱先生。私は怪物じゃないです。」
ぷんぷんといった風に神条は怒る。
「神条、Aクラスを目指す気はないのか?」
「そんなに私にAクラスを目指して欲しいですかぁ?貴方がなれなかったAクラスに」
茶柱先生は驚いた表情をする。
「なぜ、それを知っている。」
「私の情報網を舐めない方がいいですよぉ〜。大抵の事は調べれますからぁ〜。もちろん綾小路くんの事もねぇ〜」
「全てお見通しというわけか…」
「でも安心してください。私が何もしなくてもいずれAクラスには上がりますよ。堀北さんが〜頑張ってくれますからぁ〜」
ケタケタと笑いながら神条は言う。
「どう言う事だ?」
「まあ、詳しくはお話しする事はできません。それにすぐにAクラスに上がったところで他のクラスには勝てませんよ〜むりむり。だってクラス全体のスペックが違いますから。すぐ追い越されます。今は待つ時なんですよ。」
神条は小さな子供のような顔で笑っていた。
「間接的ではあるが、目指してくれるという事でいいのか?」
「まあ、時が来れば動いてあげますから。それまで待っててくださいよ」
あの期待した目、あれが歪む姿を見てみたいけど〜。鈴音ちゃんの方が美味しそうなんだよね。
それに〜私達がAクラスに上がったらぁ〜坂柳さんと龍園くんはどんな表情するのかなぁ〜。
でも上がるのは今じゃない。
我慢も大事、我慢すればするほど食べる時もっと美味しくなる。
龍園くんと坂柳さんが上位争いし続けるようにこれから私が動いて、拮抗させる。
そして三年生最後の最後の試験で私が逆転する。
その時、美味しく食べたい。
3人の表情が見れるのが楽しみだなぁ〜
後日、何名か神条の元へ見舞いに訪れた。
「お前が刺されたと聞いた時は耳を疑ったぞ」
「ふふ、刺された方が得だったから、刺されたまでだよ」
ケラケラと神条は笑う。
「どんなに利があったとしてもわざわざ刺されてやろうなんて思わねーよ。人間は死の恐怖からは逃れられねぇんだから」
「私は死ぬ時がきたらただ死ねばいいと思ってる。死んで助かる事もある。あの人みたいに…」
神条が初めて見せる悲しみの表情にその場にいた龍園と綾小路は驚いていた。
「おっと、今日の私は口が軽いみたいだ。余計な情報まで話してしまった。」
いつもの表情に戻った神条は笑っている。
「そいつは教えてくれねぇんだろ?」
「まあ、2000万ポイントくらい積んでくれたら話してもいいかもね」
「クク、ほんとお前は面白いな、バカンスには参加できるんだろ?」
「もちろん、私が行かないわけないじゃないか」
「なら楽しみにしてるぜ。またな」
龍園は帰っていった。
その次に病室に来たのは坂柳だ。
「お見舞いに来ましたよ。神条さん。」
「坂柳さんどうもありがとう〜」
「いえ、私も理事長の娘という立場にあります。神条さんには謝罪をしなければなりません」
頭を下げようとする坂柳を制す。
「ふふ、大丈夫だよ。見返りは貰ってるから。ほんと理事長は気前が良くて助かるよぉ〜」
「多大なポイントを要求されたらしいですね。面白い生徒がいたとお父様も言っていましたよ。」
「あは、そう言ってもらって光栄だね。それで今日はお見舞いだけじゃないでしょぉ?」
「貴方に隠し事はできませんね。葛城派を倒すのに御助力いただければと思いましてね。」
「私が売った案だけじゃ物足りなくなった?」
「たしかに貴方の案は画期的でした。おかげさまで葛城派の人数は随分へり、私の派閥は増えました。しかし残り少数とはいえ中々こちらの手には落ちません。そこでバカンスで決着をつけようと思いまして。」
「なるほど、私が渡した情報を有効的に使うわけね。潰すなら私より適任がいると思うけど〜」
坂柳はにっこりと笑う。
「龍園くんですか。もう彼には話はつけてあります。葛城派を沈める事ができるなら今度の試験Aクラスを潰してかまわないと」
「アハハ、さすが坂柳さんだね〜。その思い切った行動好きだよ。まあいいよ。協力してあげる。でも私のやり方でやるからね」
「もちろんです。貴方の好きなようにしてもらって構いませんよ。報酬も弾みます。」
「ふふ、ありがと、でも…」
神条は有栖の顎に手を添える。
「私を操ろうなんて思わない方がいいよ〜。私は縛られるのが大っ嫌いなの。私とやり合いたいなら覚悟しておいた方がいいよぉ」
神条は目を剥いて坂柳に微笑んだ。
とても邪悪で美しくまるで悪魔のようだった。
「ええ、心得ていますよ。」
坂柳からは冷や汗がこぼれ落ちた。
後日談
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松下千秋
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長谷部波瑠加
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佐藤麻耶
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幸村輝彦
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三宅明人