15話 子猫
退院まで数日となったある日
「失礼するわ」
「おぉ〜だれかと思えば鈴音ちゃん」
綾小路に目線を送り人払いをする。
綾小路が出ていき神条と堀北の2人きりになる。
「どうしたのかな〜鈴音ちゃん。」
2人きりなった事で堀北の顔が変わる。
「心配だった…貴方が刺されたと聞いて…気が気じゃなかった…私を置いていくんじゃないかって…」
不安を心にためここ数日を過ごしたのだろう。目には涙を浮かべていた。
「もう〜そんな心配しなくていいのに、私は死なないよ、ふふ、ほらおいで」
堀北はこくりとうなずくと抱きついてくる。
まるで母親の胸へ飛び込む子供のようだ。
堀北鈴音は愛情に飢えている。
常に優秀な兄と比較され続け親からの愛情が兄しか向けられなかった。
神条はそこにつけ込んだ、愛情の補完である。
親が向けなかった堀北鈴音という存在の肯定。神条はその心の穴を満たす。
神条はここ数週間にわたり堀北鈴音を肯定し続けた。優秀な存在であり自分にとって必要だと。
神条は助け育てる。
機が熟すその時まで。
そして自分の手で壊す。
神条の中の美学である。
自分で育てあげそれを自分で壊す。
神条にとってそれが一番美しく、一番気持ちいいのだ。
彼女はその時を待つ。
「ふふ、もう甘えんぼさんだなぁ〜。そんなに私が恋しかった?」
堀北はこくりとうなずく
「ふふ、今はだれもいないから安心して甘えてね。」
恥ずかしそうに神条の胸に顔を埋める。
「おねぇちゃんって呼んでもいい?」
「好きに呼ぶといいよ。鈴音ちゃんの自由だし」
堀北がこうなるのも仕方なかった。
現在まで堀北が甘える事ができる存在がいなかったのだ。そこに神条が現れ愛情を満たす。
その結果、神条の前でのみ幼児退行してしまうのだ。
神条は人の感情や心、過去について推測するのにたけている。
孤独を好み、人を信じる事が出来ず、承認欲求がある。
これはどれも愛情不足による症状だ。
そして必ずと言っていいほど人に依存する。
神条はそれを全て見抜いていた。
「ふふ、おねぇちゃんには甘えていいんだぞ〜。」
堀北はその言葉をかけてもらい満面の笑みになる。
「おねぇちゃんはいつ退院できるの?」
「あと数日かな、鈴音ちゃんは頑張れる?」
「うん、頑張る」
「えらいね〜鈴音ちゃんは、頑張ってくれたらご褒美あげるね」
「ご褒美?」
「うん、私が前に使ってた髪飾りあげる」
「本当に?私頑張る!」
堀北は嬉しそうに笑顔を向ける。
「ふふ、どっちがいいかな〜」
と言って2つの花の髪飾りを堀北に見せる。
その花はゴジアオイとリンドウだった。
二つの髪飾りを前にして堀北は悩んでいた。
そして指をさしたのはリンドウの髪飾りだった。
ふふ、そっちを選ぶのはわかってるねぇ
鈴音ちゃんに似合ってる。
ゴジアオイはまだ早い。
「じゃあ退院したら、鈴音ちゃんにあげるね。それまで頑張るんだよ」
「うん!」
「ふふ、いい子だね。そろそろ時間だからお帰り。また来ていいから」
「わかった。また来るね。おねぇちゃん。」
「うん、でも約束は覚えてるよね。ちゃんと戻してから行ってね。」
「わかったわ。これで大丈夫かしら?」
いつも通りの堀北に戻る。
「うん、大丈夫。バッチリだよ」
堀北は帰っていき、その後綾小路が入ってくる。
「全く、お前は怖いな。あそこまで洗脳が進んでいるとはな」
「はは、洗脳なんて簡単だよ。彼女は依存しやすい体質だし。最初の恐怖の感情がだいぶ効いてるみたいだしそれからは流れだよ」
彼女は楽しむように笑って見せた。
「それに加えて神条は堀北に愛情を与える。それによって堀北は神条を信じ込むというわけか」
「ふふ、多分綾小路くんにもできるでしょ?」
「まあ、不可能ではないな。」
「綾小路くんも作ってみるといいよ。おもちゃ」
神条は期待した目で綾小路を見つめる。
「候補でもいるのか?」
「まあ、2人ほどね〜」
「2人もいるのか」
「まあね〜候補止まりではあるけど」
「楽しそうだな」
「うん、楽しいよ。最高にね」
神条は笑った。
残虐さの溢れ出した顔をしながら。
花言葉は調べてもらえたら面白いかもです。
今回はなんというか意味がわかると怖い話的な感じですね。
後日談
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松下千秋
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佐藤麻耶
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幸村輝彦
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三宅明人