16話 依存
朝から医者の最後の検診を受ける。
「問題ないでしょう、今日で退院して結構です。」
「ありがとうございます〜、お世話になりました」
荷物をまとめて病院を出る。
平日の昼前、綾小路達は学校で授業中のため出迎えはない。
テストが明後日に迫っているので必死に勉強してもらわなければ困るからね〜
まあ、過去問は鈴音ちゃんに配布させたし、問題ないでしょう。今回はちゃんと本物をね。まあ、最初は疑ってたらしいけど、私が入院してたからそれほど疑心暗鬼は大きくならなかったみたいだし。
さて、私はどうしようかな。ひとまず寮に戻るとして。今日まで公認欠席扱いだから学校に行く必要ないんだよね。
神条は部屋へ戻ると料理をする事に決めた。
病院食は栄養価は高いが美味しくないのだ。キッチンに立ちメニューを考える。1週間も入院していたので久しぶりに味の濃ゆいものが食べたい。
そろそろ、学校はお昼休みか〜
誰か来そうな予感もするから少し多めに作ろうかな。
ん〜でも、どうしよう。
神条はこの前購入した大きな冷蔵庫の前で唸る。
うん、決めた麻婆餡掛け炒飯にしよう。
やっぱり中華料理が美味しいし。
調理を始めもう少しで完成というところでインターホンがなる。
出てみるとそこにいたのは堀北だった。
「鈴音ちゃん、どうしたの〜?」
「今日、退院って聞いてたから、、」
恥ずかしそうに呟く。
「お昼は食べたの?」
堀北は首を横に振る。
「ふふ、そんなに私に会いたかったんだ〜。ちょうどご飯作ってたから一緒に食べましょ」
堀北は目を輝かせこくりとうなずいた。
堀北を部屋に入れソファーに座らせるとキッチンに立ち料理を2人分に分ける。
神条は出来上がった料理をテーブルの上に置く。
「辛いのは大丈夫?」
「うん」
「ふふ、よかった」
レンゲを渡し神条は微笑む。
「いただきます」
2人は食べ始める
「美味しい、おねぇちゃん料理上手!」
「ありがと。そう言ってもらって嬉しいよ」
神条は堀北の頭を撫でた。
お互い食べ終わると神条は思い出したように髪飾りを取り出す。
「約束だったもんね。鈴音ちゃん、頭こっち向けて」
嬉しそうに頭を向ける。
リンドウの髪飾りを堀北につけてあげる。
「うん、できた。かわいい。」
神条は堀北に手鏡を渡してあげる。
「嬉しい。ありがとう、おねぇちゃん」
「大切にするんだよ。この髪飾りは鈴音ちゃんと私を繋ぐもの。この髪飾りがある限り私は鈴音ちゃんのお姉ちゃんでいてあげれる。」
神条は次の段階へと進めようとしていた。物への依存である。この髪飾りは神条と堀北を繋ぐ唯一の物となった。堀北はこれをなによりも大事にするだろう。
この髪飾りがなくなったとき堀北と神条の関係は破綻してしまう。
ただの他人に戻る。
そんな事は堀北にとって最も避けなければならない事だ。
堀北はこの関係性を守るためこの髪飾りだけは何があっても守る。
そんな堀北を見るのも悪くないと神条は考えたのだ。
その間、家族ごっこに興じるのもまた面白いと。
堀北の感情を壊すのに色々な要素が有れば楽しみが増える。どんなパターンでも自分は楽しむことができるだろうと考える。
最後、堀北だけがAクラスから落ちたとしても神条とのつながりが有れば精神は崩壊せずに済むだろう。だが髪飾りもなくなれば堀北に残るのは何もない。
自分の手で壊すもよし。
他人に壊させるもよし。
綾小路に壊させても楽しめるだろう。
その姿をケラケラと笑いながら見る。
それもまた一興だ。
そこで神条は問いかける。
死にたいか生きたいか
答え次第ではその後もそばに置いてやってもいい。
一生かけての玩具にできるのだから。
どちらに転んでも満足できる。
神条はその時を待つ。
「私、大切にする。おねえちゃんの為に頑張る。」
「ふふ、期待してるね。鈴音ちゃん」
昼休みが終わるので堀北は教室へ戻っていった。
放課後になり綾小路達、派閥のメンバーが神条のもとへ集まる。
メンバーは次々にねぎらいの言葉をかけてくれる。
神条はそれに笑顔で対応する。
その後他のメンバーを帰し佐倉と綾小路だけになる。
佐倉が神条に抱きついてきた。
「准さん退院おめでとうございます」
「ありがとう。愛里ちゃんも勉強頑張っていたようでなによりだよ」
「准さんから言われていたから頑張りました。」
「ふふ、がんばった愛里ちゃんにはご褒美をあげよう。」
神条は複色のカーネーションのネックレスを佐倉につけてあげる。
「綺麗、もらっていいんですか?」
「もちろん、頑張った子にはご褒美をあげる。それが私のやり方だからね」
「大切にします!」
「うん、これからも私の為に頑張るんだよ」
頭を撫でながら佐倉に囁く。
「はい!准さんの為に頑張ります!」
「ふふ、期待してるね」
その後佐倉が帰り、綾小路と2人きりになる。
「順調のようだな」
「まあね〜」
「それでこれからの予定は?」
「そうだね〜テストまであと2日、とくに動く事はしないよ。動くのは終わってからかな。まあ、今日の予定はあるよ」
「俺はついて行ったほうがいいのか?」
「うん、まあね。ちょっと面白い事になりそうだし」
「相手は誰だ?」
「鬼龍院さんと南雲さんだよ〜」
「なるほど、いつもの場所か?」
「うん、いつものカフェだよ。時間はそれぞれ1時間後と3時間後」
「了解だ。」
「ふふ、久しぶりにお話しできるから楽しみだよ」
神条達はカフェへと向かう。
後日談
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松下千秋
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長谷部波瑠加
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佐藤麻耶
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幸村輝彦
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三宅明人