2話 契約
准は綾小路と共に買い物をしていた。
「神条、お前はさっき知った事をクラスに話すのか?」
「話すつもりはないかな。これくらいの事調べようとも思わない人に教える価値はないしね」
「それだとクラスポイントが下がって神条の手元に入るポイントが減ると思うんだが」
「最初の3ヶ月くらいは我慢するよ。」
准の発言に疑問を覚えた綾小路。
「なんでって顔してるね。まあクラスを良くしようとは思ってないよ。でも邪魔な人には消えてもらわないといけないでしょ?」
「退学させるのか?」
「うん!聞いた話だと退学すると100クラスポイント引かれるんでしょ?それならポイントをいっぱい持ってる時より0になった時に処理しちゃった方が効率がいいと思わない」
彼女にとって自分を害する者はすべて消すつもりなのだろう。しかし彼女は優秀だ。誰もこの状況で動ける者は少ないだろう。
「効率はいいと思うが、俺が喋る事だってあると思うが?」
「ん?綾小路くんしゃべるの?」
彼女の顔から笑顔が消えた。
「まあ、綾小路くんが喋るとは思ってないよ。君は自分が目立つ事を嫌うよね?だったらこの事を喋ることはない。それに君はどちらかというと傍観者だ。」
話の途中から彼女の表情はいつもの笑顔に戻っていた。
「まあ、俺は喋るつもりはない。だがポイントはどうする気だ?神条の言葉から察するに0ポイントになると思っているみたいだが」
「大丈夫だよ。明日動くつもりだから」
彼女には何か考えがあるらしい。
「今は買い物だよ。今のうちに生活必需品とか買わないといけないしね」
そう言って買い物を再開する。
彼女は無料品コーナーからお一人様二個までと書かれた食材をカゴに入れていく。
俺もそれに便乗して無料品コーナーから食材を手に取る。
「綾小路くんって料理する人?」
「した事はないな。だからどれを選べばいいかわからない」
「ふーん、そうなんだ。なら提案なんだけど。毎月1万5千ポイントくれるなら三食私が作ってあげるよ」
彼女が持ちかけた提案は意外と魅力的なものだ。自炊のできない俺が学食や外食で済ませると考えた時、最低でも3万近くになる。それを半分にに抑えられるならこの提案受けても悪くない。
「いいのか?」
「うん、そっちの方が効率がいいしね。1人分を作るより2人分の方が楽だし。それに無料品も2倍かえるから。私としてもメリットがあるの。」
「なんで、そこまでしてくれるんだ?」
「私の生活を良くするには君の力が必要だからだよ。」
といって彼女はふふと笑った。
「すまないがお願いする」
「了解、任せて!」
そして2人は買い物を終える。
「どっちの部屋で料理しよっか?」
「俺はどっちでも構わないぞ」
「じゃあ私の部屋でしよっか」
そう言って彼女の部屋に案内される。
「じゃあ今から作るから15分くらい待ってて」
「わかった」
彼女は料理を作り始めた。
ものの十数分で料理ができる。
「はい、おまちどうさま。手始めにカルボナーラにしてみたよ。ブラックペッパーはお好みでかけてね。」
「いただきます」
綾小路は出されたパスタを一口食べてみる。
「美味いな」
自然と感想が口から出ていた。
「よかった。食べたいものがあるときは遠慮なく言ってね。基本的になんでも作れるから。」
「わかった」
そして食事が終わると彼女は明日の事について話を振ってきた。
「明日ね1年AクラスかCクラスに行こうと思ってるの」
「理由はなんだ?」
「今日職員室に行く前他のクラスを通ったじゃない?そこで早速グループ作りとか行ってる生徒とかいたんだけど。2人ほど優秀な生徒ぽい人がいたの」
「あの一瞬でよくそこまでわかるな」
「女の勘だよ」
「そこに俺もついて行けばいいというわけか?」
「うん、しっかりボディガードしてね」
神条であれば俺がボディガードなどする事なく相手を返り討ちにできると思うんだがな。明らかに戦闘経験がある。ここは彼女についていく方がいいか。いい隠蓑になりそうだ。
「わかった。明日の放課後動くのか?」
「うん、すぐ行かないとどこに行っちゃうかわからないしね」
「了解だ。」
「話は変わるけど明日の朝ごはんはどうしたらいい?」
「朝から神条の部屋にくるって事でいいか?」
「うん、それでいいよ。それならこれ渡しておくね」
そう言って渡してきたのは合鍵だった。
「無闇にこんなもの渡すべきではないと思うが」
「大丈夫だよ。君は絶対にリスクを犯さないからね。」
その場で解散となり次の日になる。
放課後予定通り、まずCクラスへ向かった。
「どいつ何だ?」
「あ、いたあの人だよ」
そう言って指さしたのは明らかに他とは風貌が違う龍園翔という生徒だった。
彼女はズカズカと教室に入ると龍園のところまでいく。
「はじめまして、神条准って言います」
「他のクラス奴がなんのようだ?」
彼女は端末に書かれているメモを見せる。
『取引がしたい。Sシステムについての情報を持っている』
龍園はそのメモを見ると驚いた顔になると同時に笑みを浮かべていた。
「ついてこい」
准と綾小路は龍園についていくとそこは屋上だった。
「それでその情報ってのは何だ?」
「まあまあ落ち着いてって、こっちもタダで売るつもりはないから」
「それはそうだ、いくら欲しい?」
「5万ポイント欲しいな」
「偉くふっかけるじゃあねぇか」
「ううん安いと思うよ。これをクラス40人で割れば1250ポイント。とても安い計算になると思う。これはサービスだよ」
「それほどの内容ってわけか」
「そうだね、どう?受ける気になった?」
「もしこの情報が間違ってたらどうする?」
「そのときは私を好きにしていいよ。」
彼女は満面の笑みで答えた。
気が狂ってるとしか思えないその言葉。
龍園ですら恐怖を覚えた。
しかしニヤリと笑うと
「わかった番号を教えろ。5万振り込んでやる。」
「毎度あり。」
ポイントの入金を確認すると神条は龍園にSシステムについて説明をしはじめた。
「どう?5万が安く感じたでしょ?」
「ああ、サービス感謝するぜ。これからも情報を売ってくれるのか?」
「もちろん!ポイントがもらえる限り君に情報を売るよ。」
「それときいていいか?察するにお前はクラスを勝たせる気がないように見えるが」
「うん、勝たせる気なんてないよ。私さえ良ければそれでいい」
「全く侮れない相手だな」
「じゃあ、私たちはいくね」
そう言って2人は次の取引相手のもとへ向かう。
Aクラスの教室へ向かうとちょうどその目的の生徒が教室から出てきた。
「こんにちは、神条准って言います。」
「こんにちは、坂柳有栖といいます。」
「急に話しかけてごめんね。実はお話したいことがあるの」
と言って有栖にだけ見えるように端末のメモを見せる。
有栖も龍園と同様驚くがすぐにニヤリと笑った。
「それでは場所を変えましょうか。」
向かった先は個室が付いているカフェだった。
カフェの個室に入ると有栖が話し始めた。
「それで、いくらがお望みですか?」
坂柳は優秀そうなので最初から値段の提示を求めた。
「6万は欲しいかな」
「それほどの情報なのですね。」
「うん、絶対役に立つと思うよ。それに坂柳さんの派閥で割ればそこまで痛手にならないと思う」
「すでに私たちのクラスの現状まで把握しているのですね。」
「たしか、もう1人のリーダー格の人がいたよね。スキンヘッドのその人に情報を売らないって意味でプラス1万にさせてもらったよ」
「なるほど、あなたはかなり優秀ですね。わかりましたお受けします。」
「安心して、嘘だったら全額返すし。坂柳さんの駒になってあげるから」
龍園の時と同様に彼女はとんでもない発言をする時必ず綺麗な笑顔を向ける。
「ふふ、貴方は狂っていますね」
神条はSシステムについて説明を始めた。
「なるほど確かに金額に見合う価値はありましたね。」
「でしょ。それで相談なんだけど説明した通り、Aクラスは優秀だからポイントがあまり減らないと思うの、だから定期契約にして欲しいなって思ってる。」
「ふふ、あなたは結構がめついのですね。それで内容は?」
「私達のクラスの情報や試験についてわかった事とか色んな情報を優先して流してあげる。必要ないって感じたら定期契約を切ってもいいよ。情報以外だとそれとは別にポイントをもらうけど」
「面白い提案ですね。いくらが望みですか?」
「坂柳さんの派閥、一人当たり2万かな。それで手を打つよ。」
「なるほど、それは来月からという事でよろしいのですね。」
「うん、もちろん。いま、6万ポイント貰ったばかりだし。今月はこれ以上ポイントを要求する事はないよ。受けてくれるの?」
「受けましょう。貴方と組んでいれば面白そうです」
「まいどあり。定期契約結んでくれたから。これはサービスだよ」
坂柳に渡したのは中間試験の過去問と小テストの過去問だった。
「これは何か意味があるのですね」
「うん、その時になれば気づくと思う。本来ならポイントをとるけどサービスだよ」
「ありがとうございます。これは受け取っておきます。」
「じゃあね、また連絡してね」
「はい、また連絡させてもらいます。」
2人は退席する。
「それにしても神条はすごいな今日だけで11万ポイントも手に入れたのか」
「へへ、私こういうの得意なんだよね。あとこれ今日付き合ってくれたお礼」
綾小路の端末がなるそこには2万ポイント振り込まれていた。
「いいのか?」
「うん、今日は特別に気分がいいからね。」
いつ見ても彼女の笑顔は綺麗だ。
しかしその笑顔の下に何があるのかは誰も知らない。
あと1話挟んで5月に行きます。
後日談
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幸村輝彦
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三宅明人