30話 夢と現実
久しぶりに夢を見た。
幼き頃の彼との思い出。
何気ない彼との日常が夢として流れていく。
そんな二人の風景を高校生の私が見ている。
楽しい?嬉しい?悲しい?苦しい?あの時の感情はどうだったのか、私はそれが気になってしかたなかった。
「僕は准ちゃんに感情ができて嬉しいよ」
声をかけたのはここにはいるはずのない高校生の姿となった天離優輝だった。
「やぁ、ユウ君久しぶりだね。」
久しぶりの再会に笑みが溢れる。これが私の作り出した幻想だったとしても。
「君が笑っている顔をあの日以来、初めて見たよ。」
「あの日から私は変わったんだよ。今はどんな時でも笑顔だよ。」
「今は幸せ?」
「うん、とっても。毎日がキラキラしてるよ。」
「なら、僕があの日した行動に意味があったんだね。」
彼は私に笑顔を向けてくれる。
「まだ、私はユウ君みたいに笑えないな。あんな綺麗な笑顔できないもん」
「ハハ、そう言ってもらって嬉しいよ。僕が君の中にいると言う証明だからね。そろそろ時間だよ。」
「もう、そんな時間?もっと話したかったよ」
「また、会えるよ。」
目が覚める前に見た彼の笑顔はとても綺麗だった。
一つ背伸びをしてベットから起き上がる。そのままの足で洗面台に向かい顔を洗い歯を磨く。
そして台所へ立つと今日の朝食とお弁当について思考する。
(んー?何にしようかな。綾小路君はあんまり注文しないんだよね〜。ハンバーグ以外は。今日は気分がいいし豪華にしようかな)
少し微笑むと調理を始める。
そして調理が終わり弁当箱に詰め終わるとチャイムがなり綾小路がやってくる。
「今日は機嫌がいいんだな。」
「まあね。今日の目覚めはよかったよ。」
朝食を綾小路と食べそのまま学校へと向かう。
BクラスやCクラスの生徒は騒がしくしているが気にも留めず教室へ入る。
そして授業を受け今日もつまらない一日が始まり終わる予定だった……
踊り場で倒れている神条に佐倉は駆け寄る。
「准さん…准さん…。目を開けてください…」
大粒の涙を流しながら神条の手を握っている。
その姿をただ綾小路は見ていた。
階段の上の方では荒い息をあげながら両腕で自分を抱きしめながらうずくまり震えている軽井沢恵。
「ハァハァ…こんなはずじゃなかったの…私は…私は…こうするしかなかったの…」
その後、救急車が到着し神条は担架に乗せられ運ばれていく。
病院に着くと医者から彼女の容態について聞かされた。
意識不明の重体で頭を強く打った事が原因のようだ。
軽井沢、綾小路は茶柱先生から取り調べを受けている。結果は監視カメラがなく証言が少ない為この件は事故として処理される事なった。
その後、綾小路は堀北へ事情を説明しに向かった。
堀北に今回あった事を伝える。
「少し、1人にして…」
「わかった。」
綾小路が部屋を出た事を確認すると嗚咽を出しながら泣き崩れる。
「…お姉ちゃん。どうして…」
彼女からもらった髪飾りを胸に抱きしめ1泣き続ける。
少し時間が経ち落ち着くと、何かに吸い寄せられるように携帯へ目がいく。
(そういえば、あの事故があった時、お姉ちゃんからメールが来てた。あの時はお姉ちゃんが倒れたって聞いてみる暇がなかったわね)
メールを開くとそこには
私のかわいいかわいい鈴音ちゃん。
私の期待に応えれるよね。
そのメールを見ると覚悟を決め堀北は立ち上がった。
「私は絶対、お姉ちゃんの期待に応えてみせる!」
そして各クラスの首脳陣に今回の事が知れ渡った。
「神条さんが意識不明の重体?それは本当なんですか?」
「間違いないわ。今日学校に救急車が来ていたのはそれよ。表向きには階段から落ちたって言う事故らしいわ」
「表向き?裏があると言う事ですね。」
「ええ、Dクラスの軽井沢って子が神条を突き飛ばしたらしいの。その結果、神条は意識不明の重体。意識が戻るかは五分五分らしいわ」
「軽井沢さんですか。この結果はどう捉えるべきなのでしょうね。」
「神条のやり方に不満を持つ生徒もいたと思うし、これは必然だったんじゃないの?あれだけ好き勝手してたら」
「しかし、あれでもDクラスはまとまっていました。Aクラスと同じく恐怖という方法ですが。」
「恐怖政治が無くなった、Dクラスはどうなると思うの?」
「どうでしょう。今現在、Dクラスをまとめていらっしゃるのは堀北さんです。彼女は神条さんと敵対し続けていると聞いています。彼女が今後まとめていくと思いますよ。」
「でもほんと事故や事件が多いわね。昨日はサッカー部でも事故があったみたいだし。」
「何かひっかかりますね。真澄さんそのサッカー部の事故について調べてください。」
「いいけど。何かあるの?」
「ええ、少し」
そして歯車は回り出す。
軽井沢恵のファンの皆様、軽井沢さんは救われるのでご安心を。
後日談
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松下千秋
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長谷部波瑠加
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佐藤麻耶
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幸村輝彦
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三宅明人