野球神様に誘われて人生やり直しました ~パワフルプロ野球の世界に転生~   作:駿州山県

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1章 4話 パワフル高校4

 

「パワプロくん、ここ毎日緩みっぱなしでやんす。

 甲子園目指す気あるでやんすか?」

 

「パワプロ先輩、流石にあの練習はないっすわ」

 

「パワプロ、一体なにが君をそうさせてしまったんだ」

 

「パワプロくん……最近練習に身が入っていないと思うの」

 

四面楚歌とはこういうことだろうか。

スバルや矢部くん、チームメイトだけでなく、彼女になった小筆ちゃんにまで言われてしまった。

しかし、そこまでひどかっただろうか。小筆ちゃんと付き合うようになってから、小筆ちゃんを家まで送って玄関でおしゃべりして、帰ったら時間がないからお風呂に入って寝て……あれ、自主練の時間がなくなってるや。

今まで自分だけが気づいてなかっただけで、みんなが言う緩んでるのも当然のことだった。

これからは気を張りなおしてがんばらなければ! 小筆ちゃんとは別れないけどね。

 

その後前回と同じイベントを順調にこなし、合宿に入った。

前回と能力はかなり違っていた。前回は合宿入る際はDが1つにほとんどの能力がEかFくらいだったのだが、Fは1つもなくなり半数以上はDが増えている。

何より、すでにミートがCだ。

なぜこんなにもステータスが違うのかと考えたのだが、やはり小筆ちゃんと付き合えたことが理由ではないかと思う。

彼女がいると強くなれる、守りたい者が……いや別に守るわけじゃないけど強くなれる。そういうことなのかもしれない。

合宿の効果は抜群で、手に入る経験点は普段の1.5倍。おかげで能力はメキメキと上がった。

 

「パワプロくん……相談があるんだけど」

 

彼女になった時でも小筆ちゃんの合宿時のイベントも健在だった。

小筆ちゃんは髪留めを使い、イメチェンに成功。彼女でなかった時も、可愛くなったなと思ったものだが、自分の彼女がこうも可愛くなると思うととても感慨深い。

そしてこれも毎度のことだが、虹谷に会った。

虹谷は今まで一度として違う行動はとったことはなかった。だが、今回は俺の方が違う態度をとった。

 

「お前、人の彼女に手を出すなぁっっ!」

 

「なっ……なんなんだ君はいったいっ」

 

俺の彼女にちょっかいをかけてきた虹谷を俺はバットを持って追いかけまわし、天空中央高校の選手からパワフル高校の狂犬と言う二つ名で呼ばれることで有名になった。

 

甲子園予選開始まで残り一か月。俺たちは順風満帆だった。特に俺は小筆ちゃんと言う彼女がいて、俺を全面的にサポートしてくれる。

小筆ちゃんが練習を見てくれているとき、なんか練習が捗るんだよな。そのことをみんなに話すと、頭や背中を叩かれて痛い目に合うことになった。

そして練習の合間を縫って小筆ちゃんとデートをすること5回目。

 

小筆ちゃんと愛を育んだ結果か、俺はアーティストと言う能力を得た。これは宇渡が持っているパワーヒッターと言う能力の上位能力で、強振したときにホームラン性の当たりが出やすくなる。

この能力で、今度こそ木場を打ち崩す! 俺の熱意も最高潮に達した。

 

今日は甲子園予選の一回戦目、相手はラズベリー高校だ。

前回戦ったバス停高校ではない。俺はこの物語を繰り返しているはずなのに、相手が同じでないことに不信を覚えた。

しかし、戦って勝つことだけは変わりない。

俺たちはラズベリー高校を10対0で勝利した。

ラズベリー高校は良いウォーミングアップになった。おかげで、その後の戦いに弾みをつけることができた。

俺たちは二回戦,三回戦と快進撃を続け、とうとう決勝戦になった。

 

「よう。ここまできたか」

 

「ああ、勝負だ」

 

木場との勝負もこれで二回目。お互いに知り合ってるライバル同士だ。ライバル同士には言葉はいらない。これで十分だった。

またもやなぜ知り合いなんだとスバルに疑問をかけられたが、強い者同士惹かれ合うんだと適当なことを言ったら納得してくれた。

 

俺の打順は3番だ。4番ではなかったにしろ、ホームランで俺がランナーを返してやる! それくらいのつもりでいた。

一回の表、俺たちの攻撃は1番の矢部くんが三振。2番の小田切も変化球を打ち損じて凡打。3番の俺は木場の爆速ストレートを真芯でとらえたはずなのにも関わらず、センターフライに終わってしまった。

ヒット狙いなら高確率で出塁できたと思うのだが、今回の俺はパワーも前回より高くアーチスト持ちだ。甘えは許されない。

そして1回裏。今度は俺たちが守る番だ。

スバルの立ち上がりはとてもよく、1・2・3番と三振、凡打凡打と抑えることができた。

更に2回、3回と続きお互いに0点のまま試合が進んだ。流れが変わったのは4回。矢部君がデッドボールで出塁し、小田切は凡打だったものの俺がヒットで繋ぎランナー1・3塁。

ここで4番の宇渡だ。宇渡のパワーなら木場の爆速ストレートも外野席まで打ち返せる。

だが……宇渡相手に木場は爆速ストレートを使わなかった。なんと変化球でたったの3球で三振に打ち取ってしまった。

続く5番が凡打になり、この回もパワフル高校は0点だった。その反対に返す4回の裏でスバルは失点してしまう。

少し……ボール半個分甘く内側に入ったボールを木場に外野席まで運ばれてしまった。

 

「まだだ! まだ負けたわけじゃない!」

 

俺たちの気持ちはそれだけでは揺るがなかった。

そして5回、6回とまたお互いに0点が続いていく。

バックスクリーンの1対0がかれこれ30分以上変わらず目に焼き付いていた。

 

6回表、俺の三回目の打席。

その回最初が俺の打席だった。前回だと、そろそろ木場は疲れてきてコントロールを崩していた頃だった。

だから……今度こそ爆速ストレートを捉えられる!

そう思った二球目。力強いがコースが甘く入った爆速ストレートを今度こそ真芯で捉えた!

打った感触は、ホームランだった。しかし、打球は途中で失速。外野は外野席に背中を預けるまで後ろに下がったが、外野席に入ることなく外野のグローブにボールが吸い込まれた。

 

「アウト!」

 

前回とは異なり、3打席0安打。チームに全く貢献ができておらず、俺は悔しくて腕を震わせることになった。

俺たちが木場を打ち崩せない間もスバルは奮投し、なんとか8回まで1失点で進めることができた。

とうとう最終回、9回表。ここまで来てしまった。スバルは疲労がにじみ出ていて、頭からタオルをかぶってずっと下を向いていた。

俺たちは……スバルにのみ負担を強いてしまっていた。ここで点を取れなければ、俺たちはただの役立たずになってしまう。

みんなで気合を入れなおし、望んだ9回だったが……木場の球速はここにきて最速をたたき出していた。

だが決して疲労していないわけじゃないはずだ。俺はそう思い、木場の爆速ストレートを打ち返すために打席に向かった。

一球目。木場は爆速ストレートを低めギリギリに投げてきた。

あの球を低めに投げられるととても打ちずらい。そこまでパワーがない俺にすれば、外野フライにさせられてしまう危険があったため、見過ごすしかなかった。

二球目。またしても爆速ストレート。だが、今度はインいっぱいの球だった。俺は若干振り遅れ、外野まで飛ばした者のファウルに切れてしまった。

もうツーアウトだ。

三球目。木場はまたしても爆速ストレート。しかも、力強さが決してなくなっていなかった。

木場の球は高めに外れてボールになったが、俺は木場の実力を考え直させられた。

今のままでは、ホームランは打てない。そう思い、急遽ミートに転換した。

四球目も爆速ストレートだったが、ミートに変えた俺は木場のボールを見事レフトに打ち返し、ヒットになった。

木場からヒットを打ったはずなのに嬉しくない。味方もここにきてのヒットに喜んでいた。だが俺は喜べない。

その理由は……満身創痍気味の宇渡に繋いでしまったからかもしれない。

宇渡はここまで木場の球に一度として触れることができずにいた。その結果、絶望的なまでの弱気になってしまっていた。

その宇渡にこの試合の行く末を任せてしまったことに後悔を感じていた。

 

結局俺たちはまだ覇堂高校に負けてしまった。

結果的に考えてみると木場はスタミナを切らすことなく投げ続け、爆速ストレートの球威は全く変わらず俺はホームランを打つことができなかった。

 

「パワプロ,星井。

 今まで一回戦負けだったパワフル高校をここまで立ち直らせたことと言い、決勝までチームをひっぱってきたことだけはあるぜ。

 だが、勝ったのは俺たちだ。パワプロ、お前はパワフル高校ではなく覇堂高校を選ぶべきだったな。

 一緒に甲子園を戦えないのは残念だぜ」

 

それだけ言うと、木場は去って行った。

俺たちはと言うと出せる言葉がなく、前回同様ただ立ち尽くすだけだった。

なぜ……なぜ勝てない。何度やり直しても勝てない運命なのか。

 

 

 

『君は、なぜ覇堂高校に勝てないか気づいていると思ったんだけど勘違いかな?」

 

俺の心にやつの声が響いた、そう安内なみきだ。

覇堂高校に勝てない理由を俺は気づいている、そう改めて自分でつぶやいた時、胸がズキンと痛んだ。

 

『あくまでも知らない振りをするんだ?

 へえ。じゃあ、ボクが言葉にしてあげるよ。

 君がピッチャーをやればいいんだ」

 

わかっていたけど認めたくない言葉を言われ、何も言えなくなってしまった。

 

「星井くんはとても良いピッチャーだけど、いかんせんスタミナがないよね。

 特に変化球投手だから握力とかもないと最後まで投げきれないだろうし。

 それに、なんとなく決め手に欠けるんだよね。

 木場君の爆速ストレートみたいなものが彼にはないんだよね」

 

スバルがピッチャーで俺が野手、それで甲子園を目指していたんだ。今更ピッチャーになんて鞍替えして……いや、でも俺は元々ピッチャーをしていた。

ピッチャーの知識や技術なら誰よりもあるつもりだ。

なら、それもありなのか。スバルのスタミナがなくなってきた後半に俺に代われば……だがやはりスバルに申し訳が……。

 

『途中でピッチャーを諦めた人や、野手からピッチャーに鞍替えした人はゼロなのかい?

 それとも、君がピッチャーをやらないことは、甲子園に行くことより重いのことなのかな」

 

そこまで言われて気づいた。

俺は一体何を守ってきたのだろうか。一番大事なのは、甲子園に行くことだ。

ポジションなんてどこでもいいじゃないか。

 

「気づかせてくれてありがとう」

 

安内なみきの顔を見ずに言った。正直今回の言葉はありがたかったが、まだ顔をまっすぐに見ながら言える程こいつのことが好きにはなれない。

 

『早く行きなよ。

 みんなが待ってるんだろ。

 ああ、後……これ以上野球以外のことにうつつを抜かしすぎないようにね」

 

安内なみきの声が聞こえると、俺の意識は薄れまたあの時に戻った。

 

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