野球神様に誘われて人生やり直しました ~パワフルプロ野球の世界に転生~   作:駿州山県

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1章 6話 パワフル高校6

 

スバルの新変化球は、スタードライブと名付けられた。星井だからスターと言うのは安直な気がしていたけどスバルはその名前をすごい気に入っていた。

ちなみに、スタードライブは甲子園決勝まで封印することになった。初見で覇堂高校に投げたほうが勝率も上がるからだ。

予選での勝率が下がってしまう可能性があるが、今まではスバルはスタードライブではなくフォークで勝ち抜いてきていたから、問題ないはずだ。

そして甲子園前の最後の仕上げ、瞬鋭高校との練習試合の日。

スバルはスタードライブを封印したまま、8回を投げ切り9回裏で降板。ワンナウトでランナー1・2塁の状態から俺に代わり、俺はなんとか1失点で投げぬいた。

自分の力を確かなものにしたスバルは、甲子園に向けて調子を上げて行った。

 

 

 

甲子園予選前日。

今日は練習は休みだ。俺は練習をせず家で今までのことを思い返していた。

一回目。俺は打者として覇堂高校に立ち向かった。

木場の爆速ストレートに苦戦し、基本ヒット狙いで失投染みた球をホームランにもできたが、打ち崩すことはできなかった。

二回目。打者として前回より強くなった俺だったが、木場の爆速ストレートは強く重かった。

長打狙いに変えたためか、外野フライになることも多く前回より結果は悪かった。

そして三回目。今回の俺は少しでもスバルの負担を軽くするために6回、7回から投げることになる。

その分、スバルは打者としても活躍できるようになるため、打線も楽になる予定だ。ピッチャーへの転向により打者としての実力は低下しているが、ヒット狙いなら俺も活躍できるはずだ。

今度こそ、今回こそ勝てる!

その思いだけを一日中胸に抱き続けた。

 

初戦の相手は前回に引き続きストロベリー高校だった。前回同様なんなく勝つことができた。

宇渡もホームランが打てて、絶好調のようだ。

しかし、バス停前高校は本当にどうしたんだろうか。

 

続く二回戦,三回戦と順調に勝ち進み、とうとう甲子園予選の決勝戦。

グラウンドで向かい合う覇堂高校とパワフル高校。

 

「星井。俺はお前だけには負けねえ。

 負け犬のてめえには、絶対にな!」

 

俺たちも気合が入っていたが、木場も気合が入っていた。

しかも、今まで戦った時以上にだ。なぜ……。

 

「お前、いい加減にしろよ!

 スバルがどれほどすごいやつか知りもしないで!」

 

今回は珍しく、他のチームメイトも木場に反論していた。

 

「うるせえっ!

 星井がすげえヤツってことはオレだって百も承知なんだよ!

 オレと星井が組めば、完全無欠だったんだ!

 あの天空高校にだって……。

 だからこそ許せねえ!

 それだけの力を持っていながら、野球から逃げた

 こいつのことは!」

 

今までにない流れだった。

木場が今までスバルに執着していた理由を初めて知った。

木場はずっと前からスバルを認めていた。それどころか、木場もスバルのことをライバルだと思っていたに違いない。

 

「言い訳はしないよ。

 ボクは、キミから、野球から逃げた。

 でもパワプロがもう一度立ち上がる勇気をくれたんだ。

 もう二度と逃げたりしない!

 甲子園をかけて、勝負だ。木場!」

 

「互いに、礼!」

 

気合が十分に高まった状態で、審判の言葉により試合が始まった。

1回の表。1番の矢部くんは木場のたまになすすべもなかった。先頭打者ホームランでやんす! なんて言っていたが、分不相応と言うやつだ。

2番小田切。バントの構えをしたりして木場に揺さぶりをかけていたが、木場は全く動じずツーストライクからの3球目はなんとかカットしたが、4球目であえなく三振となった。

そして3番、スバル。今までの3番は俺だったが、俺は投手に転向したため3番がスバルに変わった。

今まではスタミナ不足が懸念されていたため、7・8・9番あたりになっていたが後半俺に代わることもできるため、打撃にも重心を置くことができるようになった。

 

「勝負だ、星井!」

 

木場の気合は漲っていて、球の鋭さは矢部くん、小田切に対するものとは段違いだったと思う。

だが打者として立ったスバルは一歩も引かず立ち向かったが外野フライに落ち着いてしまった。

 

「やはり、木場はすごいピッチャーだ」

 

スバルはそんなことを言っていたが、後ろ向きな意味ではなく倒すのに十分。とそういう感じのように見えた。

1回の裏、スバルはまだスタードライブは見せない。だが、三者凡退に打ち取った。一歩も引かない投手戦になることだけはこの時点でわかった。

2回の表、宇渡が先頭打者だ。だが、宇渡のスイングは球をかすることはなかった。5番,6番も凡退だった。

2回の裏、先頭打者は木場。木場はエースと言うだけでなく四番バッターでもある。うちの宇渡と比べてミートも良いらしいし、間違いなくA級ピッチャーだ。

1球目。スバルは臭いところにストレートを投げた。だが木場はこれを見送りボール。

2球目。ストライクゾーンからボールに外れる球を空振り。

3球目。木場の胸元辺りから落ちるフォークでバットの振りを乱されまた空振り。

4球目。外角ギリギリに入ったスバルのストレートを木場が見逃して三振となった。

 

二人の1回目の対決は、どちらも投手の勝利となった。

そしてそのまま回は進む。

スバルはスタードライブと言う隠し球を持っているからか、前回,前々回より余裕をもってこなせていた。

今回はお互い0点のまま進み、4回表。スバルの2回目の打順が回ってきた。

相変わらず矢部くんも小田切も木場を崩せていない。しかし、それでもスバルは打つ気で打席に臨んでいた。

ヒット狙いの小さな構えではなく、あくまで狙いはホームラン。そう言った大きい構えだった。

そのスバルに対して木場は本気だった。3球連続で爆速ストレートだった。これはおそらく、木場の相手に対する礼儀のようなものなのかもしれない。

木場がライバルだと思った相手、脅威だと思った相手。そんな相手にのみ行う行動。それが爆速ストレートなのだ。

2球まではかすりもしなかったスバルだったが、3球目。振り遅れたがなんとか当ててバックネットにボールが飛んだ。

そして4球目。さらになんとか当ててバックネットに飛ぶ。

木場の爆速ストレートは、実際の球速より早く感じる。それが行動にも影響しているのか、実際に振り遅れているのだ。どういうカラクリなのかわからないが、爆速ストレートは簡単に打ち崩せるものではなかった。

実際にスバルも4球目までの打ち損じで手を痺れさせていたせいか、5球目は見事に振り遅れて空振り三振だった。

 

今度は木場の2回目。

スバルは手の痺れを取るために、手を回すなどの普段しない行動をしていた。

そしてその行動の意味を木場は見切ったのか、2球目のスライダーを見事センターに打ち返し、ノーアウト1塁となった。

だが覇堂もその後続かず、結局お互い0点となった。

5番6番に一切容赦せずに抑えたスバル。最強のピッチャーらしく、堂々としている木場。身内びいきならスバルだが、まだこの勝負の結果はどうなるかわからなかった。

 

さらに回は進み3回目の対決。

ワンナウトで矢部くんがなんとかバントを宛て、足を活かして1塁にヘッドスライディングを決めた。

 

「セーフ!」

 

今まで出塁できていない矢部くんの俊足が覇堂のメンバーにはわかっていなかったのだろう。出塁を許してしまった。

そして2番の小田切、まさかの送りバントで矢部君を2塁に送る。

ここでスバルの番だった。

ランナーを2塁に置いた時のスバルは、威圧感があった。

なんと初級を外野に打ち返し、矢部くんをホームに返した。

パワフル高校ベンチは大盛り上がりだ。スバルはみんなに叩かれ、完全にヒーローだった。

俺もスバルの首に腕を回し、よくやった、よくやったと褒めた。

続く宇渡はようやく木場の球にバットを当てられたものの凡打。5番は三振だった。

 

6回裏。覇堂の攻撃。ここで木場の3回目の登場となった。

この回スバルは痛恨のミスをしていた。3番の打者に投げたシンカーが甘く入り、それを外野まで運ばれてしまったのだ。

打球はいいところに飛んでしまい、3番は鈍足だったのに2塁打になった。

次が木場だと言うところもつらい、だがツーアウトだ。

満を持して登場した木場からは、黒いオーラのようなものが見えた。

1球目、フォーク。おそらくスバルはこの回でスタードライブを使う気だろう。

敢えてフォークを見せ球に使うことでスタードライブを使った時の効果が上げようとしているに違いない。

フォークは外角に外れてボールだった。

2球目、シンカーは木場にぶつかるように投げられ、そこからストライクゾーンに入っていった。

見事なコースだったが、それを木場は避けようともしなかった。なぜだろうか。シンカーだと気づいていて、それでもボールだと思ったのだろうか。

3球目、ここでスバルはスタードライブを投げた。

外角高めにストレートと同じ球速のボールがいき、木場はチャンスとばかり渾身の振りをしたがボールはそこから内角の低めまで落ちた。

変化の度合いも今までで最高クラスだった。

バシーン。キャッチャーミットが気持ちよく鳴ると、その変化球の異常さに気づいた観客が騒いだ。

 

「な、なんだ……今の球……」

 

沸く観客だったが、試合は止まらない。

カウントはツーストライクワンボール。

4球目はまたも高め。球速はストレート。だが……また落ちる可能性がある。

よって木場は何がなんでも振らなければならなかった。だが、木場はストレートである可能性にかけてしまっていた。

ボールは無残にも木場の足元に突き刺さり、

 

「ストラック!

 バッターアウト!」

 

審判が空振り三振を告げた。

こうして続く打者もスタードライブで三振に抑えたスバルがベンチに戻ってきた。

 

「やったな、スバル!

 スタードライブ最高のお披露目じゃないか」

 

「ああ……だが……思った以上にスタミナを食ってしまったよ。

 今日のスタードライブはものすごくキレがいい。

 代わりにスタミナが……」

 

帽子を脱いだスバルの髪の毛は汗で濡れていた。暑いからではない。それほどにスタミナを使う変化球だったに違いない。

そして、木場との真剣勝負ということもそれに上乗せされているんだろう。

マネージャーにすぐに氷を持ってきてもらうと、スバルを冷やした。

 

「後少しだ、後少し……頑張ってくれ」

 

「ああ……パワプロ……絶対にキミまで回す」

 

疲労困憊のスバルだったが、目はまだまだ死んではいなかった。

結局スバルは8回まで投げ切った。しかも、あの最強覇堂打線を0点に抑えてだ。

 

「パワプロ、後は頼んだ!」

 

スバルは肩で息をしていて、交代時のハイタッチの弱々しさででどれだけの疲労がつきまとったのかがよくわかった。

9回裏。後スリーアウトで俺たちパワフル高校の勝利が決まる。

しかしこの回は1番バッターからだった。一人でも塁に出れば木場まで回ってしまう。

俺は7・8回とピッチング練習をスバルと一緒に投げているつもりでじっくりと行った。

だから肩は十二分に温まっている。

 

まず1番バッターだ。最強覇堂の1番バッターと言うところだろうが、県内最速とのうわさだ。

だが……俺はもう弱点を知っている。

インにストライクかボールかわかりにくい変化球を投げると、打ち損じることが多い。

俺の今回で三回目となる知識が、そう答えを導き出していた。

ファール、ファール、と二回続き。そしてストライクから大きくボールに外れる球が凡打となり、ワンナウト。

次に2番バッター。こいつは……今回の試合、もっとも投げにくいバッターだった。

スバルからも3回中2回ヒットを打っており、残りの1回もストライクかボールか微妙なラインを審判に拾ってもらったような状態だった。

初球で外角のぎりぎりの球を投げたはずだったのに、それを難なく外野まで打ち返されてしまった。

彼にすればスバルのボールに慣れていたわけだから、能力の劣る俺の球なんか打ち返せて当然だったのかもしれない。

俺はランナーで埋まったファーストを悔しい思いで睨み、3番バッターを迎えることになった。

この3番バッターは打力はあるもの足が遅い。変化球で打ち取らせる投球をすれば抑えられる。スバルもそうやっていた。

だが、変化球にも慣れてきていたのか、二球目のカーブを振りぬかれヒットを許してしまった。

ワンナウト1・3塁。バッターは木場。最悪な状況になってしまった。

ヒットどころか、外野フライでも同点に持ち込ませてしまう。そして、スバルではなく俺では覇堂打線を0点に抑え続けることはできない。

だから、木場を絶対に抑える必要があった。

 

「覇堂相手によくやったと褒めてやるぜ!」

 

木場がバッターボックスに入ると、真っ先にそう言ってきた。

 

「まだ早いぜ。そういうセリフは勝ってからにしてもらおうか!」

 

ピンチなのは間違いないが、これでもスバルと同じ練習をずっと一緒にやってきたんだ。

相手が木場だと言っても、俺は負けるつもりはなかった。

 

初球、イン寄りのストレート! 力のこもったボールだったはずなのに、木場に三塁側に大きく打たれ……結果ファール。

 

「ちっ。

 星井より遅いもんだから早く振っちまったぜ」

 

俺の球がスバルより遅いと言っても、最高144km/hのスバルに対し140km/hだ。

それほど遅いわけではないのに、こんなに簡単に打たれてしまう。木場、やはり恐ろしいやつだ。

二球目はシュートだ。ストライクゾーンギリギリからボールに外れる良い球だったのだが、木場には見過ごされてしまった。

三球目、フォーク。ギリギリストライクになるように投げたのだが、木場は空振り。

 

「くそっ……」

 

空振った木場は荒れていた。それもそのはずだ、先ほどまでは同じようなスバルのスタードライブを見ていたのだ

体がそっちに慣れていても仕方ない。

四球目、今度はストライクゾーンからボールに外れるフォーク。二球続けてのフォークだったが、今回は完全に見切っていたからか、振りもされなかった。

そして五球目。球は俺の手からすっぽ抜けて……その事実に木場が目を見開いた。チャンスを見逃してくれるようなやつではない。的確にボールの軌道に向けて、バットを振りぬこうとしていた。だが、

 

シュルルルルッ。

 

俺の手から離れたボールはすっぽ抜けではなくスバルのスタードライブだ。

変化したことに木場が驚き、空振りだと思えたがなんと球にバットを合わせてきた。

体は完全に流れているのだが、バットだけを残して先の方に当ててきた。

それなのに三遊間に強い打球が飛んだ。

 

「小田切!」

 

俺は打球を目で追いながらショートの小田切の名前を呼んだ。

 

「うっす!」

 

小田切はちゃんと打球に反応していて、抜けたと思われた三遊間の球をダイビングキャッチしていた。

そして、ランナーが飛び出していた一塁に向かって、何とか投げた。

一塁手はダイビングキャッチに上手く反応できず、戻るのが遅れていたこともあって……

 

「アウト!」

 

野手に打者、ランナー、観客。全員が見守る中審判の判定はアウトだった。

この瞬間、俺たちパワフル高校の甲子園出場が決まった。

 

「やっ……たぁーっ!!」

 

俺たちはなりふり構わず優勝を喜んだ。

覇堂高校の選手はみんな俯いているが知ったこっちゃない。

だが、パワフル高校のこのメンバーでさえ三回戦ってやっと一回勝てた相手だ。

むしろ、今回俺たちが勝てたのは運が良かっただけかもしれない。

それくらいの強敵だった。

 

「まさか……俺たちが負けるなんてな……」

 

マウンドの俺の元までスバルがやってきて、二人で抱き合って喜んでいたところ木場がやってきた。

 

「星井。やっぱりてめえはすげえよ。

 あのとき、なんとしてでもてめえを覇堂高校につなぎとめるべきだったな」

 

「いや……きっとボクは覇堂高校にいたらダメになっていた。

 キミの大きな背中の陰でいつまでも小さく丸まっていたに違いない。

 パワフル高校のみんなと、パワプロに会えたからここまで強くなれたんだ」

 

「そうか。パワプロ。お前には感謝しなきゃいけねえ。

 お前のおかげで最高のライバルを相手に最高の試合ができたぜ。

 そしてあの最後の打席。痺れたぜ。

 まさかお前まであの変化球を投げれるなんてな」

 

「ああ、スタードライブのことか」

 

「スタードライブか、いい球だな。

 俺の爆速ストレートにも負けてない」

 

「そう言ってもらえたら、甲子園での活躍は間違いないね」

 

「ああ。俺たちの分まで、甲子園で暴れてきてくれよ!」

 

木場、最初は暴言のひどいやつだと思っていたが……気持ちのいいやつだった。

スバルに対しての暴言も、彼なりのスバルへの励ましだったのだろう。

だから、心から感謝できた。

 

「ああ、そうだ。

 虹谷誠。あいつこそが甲子園最強ピッチャーだ。

 がんばれよ」

 

木場は途中一回だけ振り返るとそう言った。

あの合宿所で会った虹谷誠。自称虹色の変化球。

俺はまだあいつのすごさを知らなかった。

 

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