野球神様に誘われて人生やり直しました ~パワフルプロ野球の世界に転生~   作:駿州山県

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1章 7話 パワフル高校7

 

「いやあ、キミたち!」

 

甲子園球場の前までやってきた俺たちを迎えたのは、あの天空中央高校の虹谷誠だった。

 

「君たちがてここへやってくるとは思ってなかったよ。

 本当に覇堂高校を破るなんて。

 奇跡ってあるものなんだねー」

 

すごい煽ってくるわけだが、虹谷誠の天空中央高校は甲子園予選は苦も無く優勝したらしい。そこからくる自信のなせるものなんだろう。

だが、うちも覇堂高校に勝ってきたんだ。虹谷に引け目を感じることなんてない。

 

「そういえば、あの美しいレディの姿が見えないようだが?」

 

「もしかして小筆ちゃんのことか?

 小筆ちゃんなら、合宿所に向かったぞ」

 

「む、それは残念。

 だが大会に向けての楽しみが一つ増えたな。

 次は試合のグラウンドで会おう。

 それまで負けないようにね。

 アデュ~♪」

 

虹谷は俺たちなんて目じゃないとでも言わんばかりの発言だったが、決勝戦に来れる実力を持っていることを認めるような言い方でもあった気がする。

覇堂高校を破ったことで実力を認めていると言うことだったのだろうか。ただチャラいだけじゃなく実力もある……そう思わせる何かがあった。

 

「あいつ何言ってるでやんす。

 次会うのは開会式でやんすよね?」

 

しかし矢部くんは全く関係ないことを思っていたのか的外れなことを言っていた。

 

 

 

開会式も終わった。

初戦は赤壁高校だ。試合前の練習の時間になると銅鑼を叩く音が聞こえて驚いた。

 

「な、なんでやんすか?」

 

矢部くんだけに限らずチームのメンバーが銅鑼の音で自分自身を見失いそうになっていた。

 

「相手に引きずられちゃダメだ。

 俺たちは俺たちの野球をすればいいんだ」

 

あの覇堂高校相手に行った野球。あれが出来れば間違いなく決勝まで行ける。

俺たちはあの戦いを胸に一回戦の相手、赤壁高校へ挑んだ。

 

赤壁高校は何度も甲子園に出場している高校で俺たちパワフル高校と違って応援団も立派だった。

 

「だが、勝つのは俺たちだ」

 

赤壁高校の練習を見ると、安定しているが……決して強いわけではなかった。

投手の球速は確かに速いが、その外に目立って強い変化球があるわけではない。

しかし……

 

「手ごわそうでやんす……」

 

現代野球を学び甲子園出場投手と同等の力を持つ俺はそうでも、チームメンバーからすれば強敵のようだった。

 

「大丈夫だ。覇堂高校に比べれば、木場に比べれば

 なんてことないさ!」

 

俺がそう言うと、みんなはあの試合を思い出したようで力強く頷いていた。

 

 

先行は俺たちパワフル高校。相手投手は周湯と言う選手だ。

木場には少し劣るものの、MAX150kmのストレートに3種類の変化球を持っている。

だが速球頼りになりがちらしく、ストレートの選択は50%を超えているらしい。

 

「みんな、ストレートだ。

 ストレートに絞って打て!」

 

小筆ちゃんが集めた情報を基にみんなにそう指示を出すと、

 

「おうっ!」

 

みんな完全に意志統一ができているようで、応答の声はズレることもなかった。

 

先頭打者は矢部くんだ。

矢部くんは、練習の時はそこそこ上手いのだが試合になると急にダメになる。

よって心配していたのだが……。

かろうじて当てた打球が絶妙な場所に飛び、内野安打になっていた。

 

二番目は小田切だ。

初球送りバントで、難なく矢部くんを二塁へ進塁させた。

 

「小田切、ナイスバント」

 

ささいなことだが、小田切に声をかけると

 

「あれくらいどうってことないっすよ」

 

普通に笑顔で答えていた。

 

三番目はスバルだ。

宇渡には敵わないが強打者であるスバルなら、矢部くんを返すことだってできるはずだ。

スバルは初球,二球目と見過ごしてカウントはワンストライクワンボール。

三球目のスプリットフィンガーファストボールをカスらせてファール。

 

「おい……今のスプリットフィンガーファストボールだよな……」

 

プロ野球界でもなかなかいない珍しい変化球だ。速球に近い速さで落ちるボールはストレートと見間違い打ちにくい。

しかし、続く四球目。スバルはストレートを三遊間にはじき返し、タイムリーツーベース。

そして四番の宇渡。一回の立ち上がりを気持ちよく攻められた相手投手は、初球のコントロールを乱しそこを宇渡に打ち込まれた。

 

「宇渡! ナイスバッティン!」

 

パワフル高校のベンチ,観客席から歓声が沸いた。

スバルがホームに帰り、なんと一回で2点先取。だが、その後は続かず二者凡退になってしまった。

 

スバルの後に投げる、そう決めた俺だったが現代では甲子園に行ったことがなかったこともあり、うずうずしていた。

俺の出番はどんなに早くても6回から。スバルが相当打ち込まれない限りそれより前に登板することはない。

もちろんスバルに打ち込まれて欲しいわけじゃないが、この目の前の光景を見ると少しでも早くマウンドに登りたくてたまらなかった。

 

一回の裏。

小筆ちゃんの情報に寄ると赤壁高校の3番から5番の三人が木場に近いくらいの強打者だと言うことだった。

1番,2番も大したことないわけではないのだろうが、覇堂を破ったスバルの相手ではなかった。

 

それぞれ4,5球を使ってツーアウトを取ると、赤壁の3番。

バッターボックスに立つと、強打者としての貫禄があった。

キレの増したスバルのスライダーをカットし、渾身のシンカーは振り遅れだったが特大のファールになった。

ただし、続く四球目。ストレートがギリギリに決まり見過ごしの三振になった。

 

俺ではあそこまでのコントロールは出せない。

木場もすごいがスバルも今大会屈指の投手だ。そう改めて確信できた。

 

そのまま点を取り続け……とできたらよかったのだが、どうやら1回で俺たちの目的がストレートであることが完全にバレてしまったようだった。

ストレートは見せ球としてボールに使われることが多くなり、代わりに速度の近いスプリットフィンガーファストボールがストライクゾーンで使われることが多くなった。

結果ファウルや打ち損じ、三振が増えて点を取れなくなった。

 

その反面、相手打線にスバルが少しずつ打ち崩され、途中4回に1点を取り返されてしまった。

だがスバルもそれ以上崩れず7回まで1失点で2対1で俺に交代した。

 

「パワプロ、前みたいに頼むぞ!」

 

8回裏のマウンドに登った俺は、三者三振……とはいかないが、ヒットを打たれたりしたが凡打に抑えたりして8回裏を乗り切った。

そして最終回も同様に乗り切った。

俺とスバルは二人ともスタードライブを見せることなく一回戦を勝ち上がった。

 

「パワフル高校、先発の星井くんと中継ぎ,抑えのパワプロくんの二人で赤壁高校を見事に打ち取りました」

 

後で聞いた話だが、実況からもこのような話があったらしく俺はスバルの後を継ぐ投手としての立ち位置を選んで正解だと思った。

 

二回戦の相手はくろがね商業高校だった。

この高校は、今までメインで投手をやっていたパピヨンと言う名前の白鳥のマスクをつけた投手が体を壊し、抑えに変わったと言うチームだ。

その結果実力は低下しるということだったが、それでも甲子園に出場できるということは全体的なレベルは間違いなく高いはずだ。

 

今回は俺たちは後攻になった。

しかし相手の打者は……赤壁高校と比べて弱かった。

スバルは難なくアウトに打ち取る。四番はかなりの実力者であることは間違いなかったが、調子に乗らせたスバルの敵ではなかった。

しかし1つだけ気になることがあった。

それは、なぜか毎回出塁する選手がいたことだ。

ストライクゾーンギリギリのボールがなぜかその選手の時だけ審判がボールにしたり、内野に転がったボールが突如イレギュラーバウンドしてエラーになったりするのだ。

結果、スバルはその選手相手にだけは100%の出塁を許してしまうと言う屈辱を味わっていた。

ただその選手から打線が続くことはなく、スバルと俺のリレーをもって0点に抑え反対にこちらは4点の得点をあげていた。

8回から投手を変わったパピヨンはすごかった。あの投手が先発として投げていたら……どうなっていたのだろうか。

そう思うが、大事なのはいまだ。俺たちは二回戦を順調に勝つことができて、大いに盛り上がっていた。

 

そして、決勝戦前夜になった。

 

「パワプロさん、おられますかー。

 電話が来てますよー」

 

合宿所の自分に割り当てられた部屋でストレッチをし、体のケアをしていると俺宛てに電話がきた。

誰からだろう、と電話に出ると。

 

「ああ、やっと出たか! 

 オレだよ! オレ」

 

まさかのオレオレ詐欺の電話だった。

甲子園に出て多少有名になったからか?

 

「オレオレ詐欺とかどうでもいいんで。

 切りますね」

 

電話を切ろうとすると、

 

「詐欺じゃねえよ! 俺だよ! 木場だ!」

 

木場からだった。

 

「ああ、木場か。

 最初からそう言えよ」

 

「うるせえ! 詐欺なわけねえだろ!」

 

ここで言い返しても良いが、話が進まないので電話してきた理由を聞くことにする。

 

「で、電話の理由はなんだ?」

 

「まあ……なんだ。

 決勝進出おめでとう」

 

ツンデレかよ! って思うくらいしおらしかった。

 

「……ありがとう」

 

なんかこっちまで恥ずかしくなった。

 

「決勝戦の相手、天空中央高校だってな」

 

どうやらこれが本題のようだ。

 

「ああ、あの虹谷の天空中央高校が相手だ」

 

そう、覇堂が前回の甲子園で負けた相手。本当は4種しか変化球を投げれないくせに虹色の変化球なんて大した二つ名がついている虹谷の高校だ。

 

「わかっていると思うが、虹谷の変化球に気をつけろ。

 あいつの変化球は、本当に虹色なんだ」

 

「なんだそれ?

 虹色に輝いてるってことか?」

 

「なわけねえだろ。

 いいか、変化球って言うのは投げられる球種が多いほど打ちにくくなるのは当然だ。

 そしてあいつが投げる変化球は全てが一級。

 それが組み合わされると、7種類の変化球があると思えてしまうくらいなんだ」

 

「それで、七色の変化球と」

 

「そうだ。油断はしないと思うが、そこまで考えてかかれってことだ」

 

「なるほど。助かったよ。

 

「いや、いい。

 俺たちに勝ったお前たちには優勝してもらわないといけない。

 じゃないと、覇堂高校が弱いと思われるからな!」

 

そして電話が急に切られた。

なんだ? 恥ずかしさが限界に達したのか?

だが、木場からの話はありがたかった。

七色の変化球が打ちずらいのであれば、打ち崩す策が必要だ。

それを練る時間ができた。

 

「パワプロ、電話はなんだったんだい?」

 

部屋に戻るとスバルから話しかけられた。

俺とスバルは二人部屋で一緒だったから、ちょうど作戦を練るのにちょうどよかった。

 

「ああ、実は木場からの電話だったんだ」

 

「木場から?! それで……?」

 

スバルには木場からの電話の内容を一字一句伝えた。

 

「あの木場が言うくらいなんだ、間違いないだろう」

 

木場の実力に対する信頼はとても高い。その木場が実力で負けた相手のことだ。

信じて間違いないはずだった。

しかし俺は気になることがあった。

 

「スバルは天空中央高校のことは知らないのか?」

 

木場が試合で負けたということは、相手のことをスバルも知っているのではないだろうか。

 

「ああ……ちょうど甲子園の前に紅白戦で負けたからな……」

 

しかし、天空中央高校のことはスバルの中で御法度だったらしい。

暗黒スバルが誕生しそうだったので急いで話を変えた。

 

「で、正直言って今の打線でどうだろう?」

 

「木場以上の投手と過程したとして、厳しい……どころか、無理だろうな」

 

俺の中でも今の打線のままでは虹谷を打ち崩すことはできないと思っていた。

スバルも同じ意見だったらしい。

 

「言っては悪いが、宇渡が虹谷から打てることはないだろう。

 何せ変化球との相性も抜群に悪いしな」

 

そう、宇渡は間違いなく強打者なのだがミートが悪くストレートならともかく変化球となると極端に打てなくなってしまう。

 

「そうすると、虹谷から出塁できる可能性があるのは……。

 矢部くんとスバル、ギリギリ小田切ってところか」

 

たった三人しかいない。そうなると勝つ確率が極端に低くなってしまう。

どうしたものかと思っていると、

 

「いや、もう一人いる」

 

「誰だ? そんなやついたか?」

 

「お前だよ、パワプロ」

 

「俺?!」

 

確かに俺はこのパワフルプロ野球の世界に入って、打者としての特殊能力が身に着いた。

それは、相手の投げるボールの具体的な場所がわかると言うことだ。

ストレートなら投げた瞬間位置がわかるし、変化球でもその位置から変化するだけなので、他の選手より圧倒的に打率が高かった。

 

「だが、俺は中継ぎ,抑えだぞ?」

 

「そうだ。だが、外野ならできるだろう?」

 

この世界だと、ピッチャーは総じて肩も強い。

強肩の選手レベルだ。

 

「そういう手もあったか……。

 なら、打順を変えて……」

 

その後スバルとああでもないこうでもないと1時間近く議論した後、監督の部屋に向かった。

 

「ちょうど私も何か策を打とうとしていたところだったんですよ」

 

あのパチンカスの監督がそこまで考えていたはずない、とそう思ったがすんなり受け入れてくれたと好意的に解釈することにした。

 

「これで明日への準備は万端だ。

 やるぞ、スバル!」

 

「おう、パワプロ!」

 

対天空中央高校の策は完璧になった。

 

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