あなたが結月ゆかりになって弦巻マキに食われる話   作:Sfon

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お久しぶりです。
総受けと書いたからにはほかのキャラも出すんですよね? と誰かが言っている気がしたので、琴葉姉妹がログインしました。



温泉旅館撮影with琴葉姉妹

 あなたがAHS芸能事務所に入ってから1年半ほど経った6月の下旬、温泉旅館の紹介番組の収録に来ていたあなたは、夕食後の休憩を楽しんでいました。スタッフたちは既に自室に戻り、寝る前までの自由時間を過ごしています。浴衣を着て旅館然とした大きなローテーブルを囲む4つの座椅子に座っているのはあなたとマキさん、そして最近できた二人の後輩です。

 彼女たちは琴葉姉妹。あなた達と同じ背景を持っています。

 

 琴葉姉妹がAHS事務所にやってくることを初めて知ったのは、五月頭でした。仕事で事務所にやってきていたあなたとマキさんはマネージャーに呼び出され、彼女たちの話を聞きます。そこで伝えられたのは彼女たちの名前と顔写真でした。あなた達二人は、それらが描かれた資料を見るなり嬉しいような、悲しいような、複雑な気分になって互いに顔を見合わせました。一つは仲間が増える安心感。もう一つは、違う世界に違う体で迷い込んでしまった人が増えたつらさ、そしてそれをどこかでうれしく思ってしまった罪悪感でした。

彼女たちと初めて会ったのはそれから1週間ほど経ってからでした。あなたはマキさんと共にどのように対応していくのかを話し合っていましたが、それらは会話を初めて数分で壊れることになりました。飲み物を取りにマネージャーが席を外し、あなた達二人と琴葉姉妹だけで話す機会が訪れるやいなや、琴葉茜がいきなり切り込んできたためです。

「琴葉茜やで。いきなりですけど、ボイスロイドって知ってはります?」

 その質問はかつてあなたがされたもので、背景を共にする者の合言葉でした。

 一瞬間が開いたのち、マキさんはあなた達の住んでいるマンションの応接室を借り、ゆっくり話をする機会をその日の夜に設けることにしました。事務所で話しては、誰に聞かれるか分かったものではないためです。彼女たちもその話に乗り、間もなくマネージャーが帰ってきたため、その場での話はそれきりになりました。

 その日の夜、マンションのロビーの一角にある応接室であなたとマキさん、琴葉姉妹の情報共有会が行われました。6畳程度の広さでワックスがかけられ光沢のあるブラウンの板張りの床に、月明かりと街頭の光が大きなはめ殺しのガラス窓を通って映っています。照明は柔らかく、むやみやたらに照らすことはありません。ガラス張りのローテーブルを挟むようにして二人掛けのソファーが置かれており、あなたの左隣にマキさん、向かいに葵ちゃん、向かって右隣りに茜ちゃんが座ります。布張りのソファーはあなたの体を柔らかく包んでくれて、心なしか気分が落ち着いた気がします。どうやら緊張していたようです。

「改めて、琴葉茜やで。こっちは妹の葵です」

 葵が会釈すると、茜ちゃん先導で話しが進んでいきます。

「とりあえず、うち達のことを軽く説明してから、お話をいろいろ伺いたいと思っとります」

 堂々とあなた達に目を合わせ、はっきりとした口調で話を進める茜ちゃんに対して抱いた第一印象は、まさに『しっかり者の姉』でした。あなたは『抜けている姉としっかり者の妹のコンビ』というイメージをどこかで持っていた節があり、余分な知識を排除し早々に認識を改めて、彼女たちにしっかり向き合う必要性を再確認したのでした。

 茜ちゃんから聞かされた内容は、おおよそ予想の付いたものでした。もともと彼女らはボイスロイドのことを知っており、今の姿になる前から双子の姉妹だそうで、そのこともあってボイスロイドの中では琴葉姉妹が一番好きらしいです。いわゆる「前世」の姉が茜ちゃんに、妹が葵ちゃんになっていたそうで、前の姿でも今の姿でも、関係性は大きく変わっていないそうです。

「でも、お姉ちゃんはたまーに大ポカするんですよ」

「大部分はしゃんとやっとるからええやろ?」

 と、話の途中で楽しそうに会話する彼女たちは、まさに生まれてからの付き合いにふさわしい仲を感じさせるものでした。

 彼女たちの身の上話が終わると、今度はあなた達の番です。マキさんが先に話し始めたため、あなたはマキさんにしばらく説明を任せることとしました。

 マキさんがかれこれ2年以上この姿で過ごし、今の状況に巻き込まれた原因がつかめていないと伝えると、彼女たちはあからさまに落ち込みました。それもそうでしょう。気づけば自分の知っている世界とどこかずれているところに迷い込んだのですから、戻りたい気持ちがあっても不思議ではなく、むしろ当然ですらあります。ただ、そのあとに続けて「でも、今となってはこの世界に愛着があるかな。ゆかりちゃんもいるし」とこぼした途端、葵ちゃんの眼が光ったような気がしました。まるで、獲物を見つけた獣のような雰囲気をまとった気がします。どこか嫌な予感を感じながら様子を伺うと、彼女はマキさんに向かって、こう相槌を打ちました。

「なるほど、弦巻さんは結月さんと付き合ってるんですね」

「そうだねー、もう1年くらいになるかな。葵ちゃんは付き合ってる人いたりするの?」

「お姉ちゃんですかねー」

「へぇー、そうなんだ。それで、今後のことなんだけど」

 唐突にお互いが色々カミングアウトし、そしてそれをまるで当たり前のようにさらっと流す二人の会話に、あなたは思わず待ったをかけました。二人とも、唐突に何を暴露しているんだと。

「でも、たぶん今言わなくてもそのうちばれちゃうだろうし、そもそも同棲している時点でバレバレだっていうか」

 悪びれもしないマキさんの弁にあなたは「ルームシェアですから!」と言及したうえで、それは納得するとして琴葉姉妹の方はどうなんだと聞きます。

「だって、今のうちに言っておかないと事務所でイチャイチャできないじゃないですか」

「葵は甘えんぼさんやからなぁ。せやけど、大勢の前はちょっとはずかしいから控えてな」

 あまりにもオープンな態度をとるマキさんと琴葉姉妹に衝撃を受けているあなたでしたが、それを受けてか茜ちゃんが付け加えます。

「まぁ、この世界は前いた世界よりも寛容みたいやから、同性愛やろが姉妹愛やろが、異性愛と変わらんと扱って大丈夫なのがええところやね」

 あなたはその発言を受けて、今まであなたを周囲の人がどう扱ってきたか思い出します。確かに、あなたとマキさんが付き合っていると噂されても、同性を理由とした偏見や悪意あるコメントは無かったように思います。あなたがそれに気づいて驚いていると、マキさんから「あれ、知らなかったの? 知ってると思ってた」と一言。教えてくれなかったことを不満げにこぼせば、「だって、人前でも割とイチャイチャしてたしさ」と返されてしまいました。記憶をたどってもそんな態度をとったとは思いませんでしたが、マキさんがそう言うならきっとそうなのでしょう。一応納得はしつつも不満げにしていると、マキさんが「例えばこれとかさ」と言って左手を持ち上げます。それにつれられて、あなたの右手も上がりました。一瞬の間を挟み、それがどういう意味なのか理解したあなたは、思わずほほを染めてしまします。あなたは意識していませんでしたが、不安だったり居心地が悪かったりすると、マキさんの手を握る癖がありました。それも、はじめは普通に握るだけだったのが、そのうち指を絡めるようにまでなっていたようです。その仕草はあなたとマキさんの関係を示唆するのに十分なものでした。あなたはそれに反論もできず、うつむいてしまいます。

「なんか、結月さんかわいいですね」

「でしょー? 後ろからちょこちょこついてくる感じがかわいくってさぁ」

「あー、小動物感ってやつですね」

「葵もそんな感じの所あんで?」

「えー、本当?」

「確かに、なんか葵ちゃんも雰囲気あるかも。私たちと琴葉姉妹って意外と似てたりする?」

「そうかもしれまへんね」

 何やら三人で会話が進んでいるようですが、あなたは失言するのを恐れ、視線を窓の外に向けてほかのことを考えました。あなたがこの世界に来た時のこと、事務所にやってきたときのこと、マキさんと会って仲間を得たこと。そして、マキさんがかけがえのない人になったこと。なんだかんだ、満たされた日々を今まで送れてきていたことをうれしく思っていると、頭に柔らかい感触を感じます。あなたは今まで何度もその感触を受けているので、見なくとも、それがマキさんの手であると分かりました。しばらくそうされて、どう反応するか悩みながら三人を横目で見やると、幸せそうに自分のパートナーについて話しているのが視界に映りました。それを見たあなたは、どうにもマキさんが愛おしくなり、彼女の肩に頭をそっと預けたのでした。

 

 その後お披露目会を経て琴葉姉妹は正式にAHS事務所の仲間入りを果たし、今ではすっかりお互いに打ち解けました。特に葵ちゃんはあなたの相談相手として適任で、どう甘えると効果的とか、しつこくなりすぎない秘訣とか、いろいろと話を聞いてもらったり、逆に聞いたりしていました。もっとも、どうやら彼女ら琴葉姉妹の方があなた達よりも、恋人としても長い付き合いのようで、教わる方が多いのでした。

 

 そして、暫くの間あった彼女らの慣らし運転が終わり、いよいよ四人での仕事がやってきました。舞台は温泉旅館。二泊三日の旅が始まります。

 

 撮影初日の12時、あなたとマキさんはタクシーを呼び、自宅から東京駅へと向かいました。運転手さんに温泉撮影に必要なチューブトップの水着などと着替え、そして暇つぶし道具の入ったキャリーカートをトランクに入れてもらって、出発です。

マキさんとこれからの日程を確認しながら車で向かい、駅につくと先にマネージャーさんと合流していた琴葉姉妹が出迎えてくれました。目立たないようにフードをかぶってマスクを付けながらタクシーを降りると、葵ちゃんが元気に挨拶してくれます。

「マキ先輩、ゆかり先輩、お疲れ様です!」

 あなたが挨拶を返すと、続けてマキさんが彼女に挨拶を返します。

「葵ちゃんお疲れ様。今日も笑顔で楽しそうだねー」

「だって、温泉撮影ですよ? すっごくこう、それっぽくて憧れちゃうお仕事じゃないですか」

 まるで遠足中の子供のように楽し気な彼女の出迎えで、今日一日うまくいきそうに思える明るい雰囲気が湧き上がりました。ムードメーカー気質でどことなく後輩感のある彼女は、いつも仕事の雰囲気をよくしてくれるので周りから重宝がられています。彼女と一緒に仕事をするときはいつもこの笑顔があるのですっかり慣れてしまいましたが、やっぱりいい子だなとほほえましく思えます。

 あなたはマネージャーさんに先導されて新幹線のホームに向かう途中、どこか違和感を覚え、しばらく考えた結果、そのマネージャーさんが仕事にいるのが久々なのだと気が付きました。今まではあなたとマキさんを見ていたマネージャーさんですが、琴葉姉妹がやってきてからは人数が倍になり忙しそうにしていました。四人の仕事を一人で見るため、すべての仕事についていくことはできません。特にあなたとマキさんよりは、仕事に慣れていない琴葉姉妹の方に重点的についていくことが最近多かったので、一日の最初から最後までマネージャーと一緒に行動するのは久々です。あなたはねぎらう意味も込めて、マネージャーさんに話しかけ、差し入れのお菓子でも買ってあげようとしましたが、丁重に断られてしまいました。なんでも、仕事中だからそういうのは良くないそうです。あなたは「私たちは別にそういうこと言われたことがない」と言って誘いましたが、まじめな性格のマネージャーさんは微笑みながらやはり丁寧に断りました。それから駅につくまでの間、暫くマネージャーさんと雑談をして、新幹線の入り口で別れました。

 新幹線のグリーン車にとってある指定席につくと、二列シートに予約がとってありました。もちろん、あなたとマキさんで一列、琴葉姉妹で一列に分かれて座ります。窓側にあなたが座り、通路側にマキさんが座りました。

 マネージャーさんと別れたあと、新幹線が出発しても、あなたとマキさんの間で会話はありません。しないというより、できないのです。今やテレビにラジオ、ネットのどれかであなたを見かけない日はなく、すっかり売れっ子の仲間入りを果たしたあなたは、人前でのふるまいに制限がかかっていました。どこで誰が盗撮しているかわからない現代です。プライベートなことは口に出せず、複数人で行動するときにも誰一人しゃべらないことが往々にしてありました。ロケバスなど少人数で移動できるありがたみを実感することもよくあります。

 口に出しての会話はできないため、スマホでお互いにチャットを介しての会話が進みます。席に座ると真っ先にスマホを開いて、グループチャットを開きます。今日は葵ちゃんが会話を切り出しました。

『今日行く温泉、結構有名なところなんですか?』

 それを皮切りにして、みんな一斉に話し始めます。こんなおいしい夕食があるとか、こんな景色がきれいだとか、楽しい会話は目的地の越後湯沢駅につくまでの1時間20分、ずっと続きました。

 

 駅をでると、駐車場の向こうに青々とした山がそびえたち、都心から離れた実感として胸の中に広がってきます。空気も心なしか澄んでいるような気がします。やがてスタッフさんたちが出迎えてくれて、駅の看板を背に、番組の冒頭の撮影が始まります。この1年半でだいぶ撮影になれたあなたとそれより先輩のマキさんは琴葉姉妹を手助けしつつ、撮影を進めていきます。もらった台本通りに進んでいき、無事撮り終わりました。

 次は温泉街での撮影です。足湯やお土産屋さんを背景に、四人で会話をしながら歩きます。時々店先に並んでいるものに目を引かれては少し立ち止まってあれこれ会話するのを20分ほど続け、このカットも撮影終了です。次はようやく旅館での撮影ですが、移動風景も撮影します。マイクロバスにあなた達四人と撮影スタッフが乗り込みます。後部座席はコの字型になっていて、奥一列にあなた、マキさん、茜ちゃん、葵ちゃんの順で座り、移動しながらの撮影が始まりました。

 小一時間の移動の間、休憩を挟みつつ短い撮影が何度か続き、到着したころにはだいぶ疲れてきました。温泉での撮影準備ができるまでは部屋で待機することになっているので、ちょうどよい休み時間になりそうです。マネージャーさんとみんなで向かった部屋は畳に大きな黒いローテーブル、四つの座椅子、部屋の向こうには景色を一望できる窓と広縁と呼ばれるちょっとしたスペースがあります。まさに旅館といった趣で、全員来るのが久々なこともあってテンションは上がり目です。しかし一応まだお仕事中なので、あまりはしゃぎすぎないようにしているのがあなたを含めたみんなの様子から何となく伝わってきます。どことなくムズムズした感じで過ごすことになるかと思いきや、マネージャーさんは一旦部屋を離れるらしく、準備ができたら呼びに来ると言って部屋を出ました。

 監視の外れたあなた達はようやく一息つけると各々伸びをしたり、部屋のものをあれこれ見て回ったり思い思いに過ごし始めました。あなたが座椅子の一つに座ると、マキさんが空いている座椅子を引っ張ってきて、あなたのすぐ横に座ります。

「ゆかりちゃんお疲れー」

 あなたが挨拶を返すと、彼女はあなたの手をとりながら琴葉姉妹の方を見ます。あなたもその視線に誘われて、彼女たちを見やると、外の景色についてあれこれ言っているようでした。あの山は何という山で、あっちに流れている川は何という川でとスマホの地図と見比べながら楽しんでいるようです。それを眺めながら休んでいると、マネージャーさんがやってきました。撮影の再開です。用意されたベンチコートを受け取り、部屋で水着に着替えます。

 室内にはあなた達四人だけがいるのみですが、おのおのベンチコートをはおりながら着替えていきます。あなたはもちろん、ほかの三人もむやみに裸をさらしたくないのは当たり前の話で、番組側の心遣いに感謝しながらありがたく使います。水着に着替えてそのままコートを着ると、温泉に向かいます。

 

浴室内は撮影のために貸切られているようです。脱衣所に入ると、すでにスタッフさんが準備を終えていました。スタッフさんからバスタオルを受け取って体に巻き、ベンチコートを脱いで撮影開始です。湯気や景色など、温泉の魅力を引き出す映像をとるため、気合の入った撮影が行われていきます。体調を崩してはいけないので、あなたとマキさんで1ペア、琴葉姉妹で1ペアと、片方が撮影している間はもう一方が脱衣所で涼み、二交代制で効率よく撮影していきます。その場で映像の確認したのち、メイクを直して撮影をしなおす工程を何度か繰り返し、結局、撮影には2時間ほどかかりました。

 浴室内の撮影が終わるといったん部屋に戻り、浴衣姿に着替えて、大浴場の暖簾をくぐるシーンの撮影です。日帰りのお客さんが帰ってからでないとこの撮影ができないため、順番が前後しての撮影となりました。スタイリストさんにきっちり着付けをしてもらい、さっと撮影して終了です。

 撮影から帰ったあなた達四人は部屋で待機していました。この後は別室で夕食の撮影ですが、準備に時間がかかり、加えて食事だけでの撮影もあるため、約2時間の待機となります。ここでただ2時間待っているとなると時間をつぶすのに大変ですが、あなたには秘密兵器がありました。持ってきたキャリーカートの中からゲーム機を取り出すと、備え付けのテレビに接続します。

「ゆかりちゃん、やっぱり持ってきたんだ」

 マキさんはちょっと呆れながらもコントローラーの準備をして、琴葉姉妹もすぐ横に座ってスタンバイしています。

「さすがゆかり先輩、準備いいですね!」

「仕事うまく進めるコツ知ってはりますよね」

二人からの誉め言葉で得意げになっているあなたをマキさんが小突きます。

「調子乗っちゃだめだからねー?」

 軽くたしなめられながら、ゲーム機を起動して、突発ゲーム大会の開催です。

 

 国民的人気のレースゲームに熱中していると、あっという間に時間は過ぎました。結局あなたは2位で、3位にマキさん、4位は茜ちゃん、今回の優勝は葵ちゃんです。口々に感想を言っているとマネージャーさんがやってきて、出番の呼び出しがかかりました。部屋の前で浴衣にピンマイクを付けてもらいながら、撮影は部屋に入るところから行うと説明を受け、きちんと気持ちを作ってから部屋に入ります。扉は空いているものの、スタッフが部屋の中にいるため、様子はわかりません。

 部屋に入ると、テーブルには四人分の夕食が並べられ、周りには照明機材とカメラが立っています。

「うわぁ、おいしそうですね!」

 部屋に入って早々に声を上げたのは葵ちゃんでした。彼女は思ったことを素直に口に出すタイプながらちゃんとポジティブなものにとどめているので、やはり雰囲気をよくする筆頭です。彼女に続いて各々リアクションを取り、さっそく食事をいただきます。メニューは一人ずつ小さな鍋でいただくすき焼きと地魚のお造りを中心に、本格的な会席料理が並べられています。どれから手を付けるか迷うほどですが、とりあえず近くにあった前菜をいただきます。親指の先ほどの大きさにそろえられた鮭のお寿司、河豚の煮こごり、蒸しエビ等、どれもかわいらしく、味も素晴らしいです。思わずほほが緩んでしまうのが自分でもわかるでしょう。続いて吸い物、お造り、茶わん蒸し、カツオのワイン煮、すき焼き、お米にデザートと楽しく会話しながら一通り食べたころには1時間ほど経っていました。たっぷり食べ、ご飯のシーンの撮影終了です。これで今日の撮影が終わり、スタッフ含め全員でお疲れ様の挨拶をしたのち、解散となりました。

 

 最初に通された部屋に戻り、マネージャーさんとの明日の予定の確認をしていると、布団を敷きに女将さんがやってきました。それを横目に見ながら打ち合わせを終え、おかみさんと一緒にマネージャーさんが出ていくと、ようやくお仕事モードから解放されます。あなたは手早くメイクを落とし、布団に飛び込みました。

「こらー、はしたないぞー」

 マキさんから優しくたしなめられますが、ひんやりしながらも柔らかな布団に頬ずりすると、仕事の緊張感が一気に解けていきます。枕を抱きしめると、体はすっかり休止モードです。食後の満腹感もあって今にも寝てしまいそうですが、マキさんから提案がありました。

「せっかくだし、みんなで温泉入る? 今日は貸し切りみたいだし」

「ええやん、裸の付き合いってやつ?」

「お姉ちゃんが行くなら私もー」

 あなたは思わず起き上がるものの、どう返事しようか悩んで固まってしまいます。マキさんと一緒に温泉に入りたいものの、琴葉姉妹に裸を見られるのはちょっと抵抗があるのです。それを見越してか、マキさんがあなたの手を取ります。

「ほら、ゆかりちゃんも行こうよ。それとも、一緒に入るの嫌?」

 もちろん来てくれるよねと言わんばかりの表情で、あなたを誘います。しかも、マキさんと入るのが嫌かと聞かれてしまえばしょうがありません。あなたは着替えを準備すると、みんなと一緒に大浴場に向かいました。

 大浴場につくと、みんなそれぞれ服を脱ぎ始めます。あなたは脱衣所の隅でできるだけ体を隠しながら脱ぐと、三人の後ろからついていくようにして浴室に入っていきます。マキさんを先頭に茜ちゃん、葵ちゃんと続き、彼女たちの後姿を眺めると、思いのほかみんな体形に差があることに気が付きます。マキさんはもちろんのこと、葵ちゃんも思ったより女性らしい体つきで、後ろから見て一番スレンダーなのは茜ちゃんでしょうか。あなたは自分の体形を思い出し、ほんの少しだけナーバスになります。あなたは最近お尻が大きくなってきたことを気にしていました。マキさんはグラマラスな体形で整っていて、スレンダーという面では茜さんが一番それらしく見えます。葵ちゃんはその中間で、バランスのいい感じです。それに比べると、ちょっと気になるのが正直なところです。

 浴室に入ると、撮影の時には気にならなかった熱気が襲ってきます。どうやら撮影時には換気などをして多少なりとも過ごしやすくしていたようです。入った順に座ると思ったあなたは、入口にほど近い椅子に座りました。すると、あなたの左右を琴葉姉妹に固められてしまいます。右に葵ちゃん、左に茜ちゃんが座り、さらに左にマキさんが座っています。マキさんは座ってからそれに気が付いたようで、「ゆかりちゃん人気者だねぇ」と弄ってきますが、あなたは裸を見せ慣れていない二人に固められてしまい、緊張して返す言葉がぱっと浮かびません。左右を見ては彼女たちの裸が視界に入ってしまうため、真正面を向いてさっさと体を洗うことにしました。暖かいシャワーをかぶると、一日の疲れが解けて洗い流されていく気がします。水であらかた汚れを落としてから、持ち込んだシャンプーで髪を洗います。それを見たのか、葵ちゃんがシャンプー談義を始めます。

「あ、ゆかり先輩はどこのシャンプー使ってるんですか? わたし、ちょっとシャンプー変えてみようかなって思うんですよね」

「ウチもきになるなぁ。ゆかりさんの髪きれいやし」

左右からの声にこたえながら髪を洗います。手でシャンプーを伸ばして、頭頂部から順に泡で包むようにして柔らかく汚れを落としていきます。こめかみあたりから長く垂れた髪もすくようにして洗い、シャワーで流します。続いてコンディショナーで一日のダメージをケアし、しっかりと洗い流してひとまず完了です。そこまでしたところでふと気になり、横目で左を見ると、茜ちゃんがまだ髪をシャンプーで洗っているところでした。

「あれ、ゆかりさんはもうコンディショナーまでおわったん? やっぱ髪短いと洗う手間もかからんでええなぁ」

確かに、琴葉姉妹もマキさんも腰あたりまである長い髪の持ち主で、マキさんが風呂に入るときはいつも髪を洗うのに時間がかかっていました。琴葉姉妹もやはりそのようです。あなたが二人の髪の長い美しさを褒めるとマキさんが「私はー?」と聞いてくるので、「もちろんとってもきれいですよ」と答えます。

このやり取りに何か思うところがあったのか、何やら左側でやり取りが聞こえてきます。あなたは体を洗いながら聞き耳を立てました。

「マキさんはゆかり先輩が大好きなんですねぇ。妬いちゃいました?」

「妬いてなんかないよ? ただ私も話に混ざりたいなーって」

「ちなみに私はお姉ちゃんとおそろいのヘアスタイルにするのが好きなんですけど、マキさんはゆかりさんの髪型どんなのが好きなんですか?」

「私はあのままが好きかなぁ」

「やっぱり、そのままの君がいいってことです?」

「それもあるけど、後ろ髪が短いと首にいたずらしやすいし」

 ちょうど首を洗っていたあなたは思わず肩をすぼめて反応してしまいますが、それがばれては弄られるのが目に見えてるのですぐに戻し、隠そうと努めます。

「あ、ゆかりさん今びくってなりましたね。やっぱり敏感やったりするん?」

 ただ、努めても隠しきれるかは別の話で、茜ちゃんには見られていたようです。あまりその手の話が得意でないあなたは答えに困りますが、マキさんが代わりにこたえてくれました。

「ゆかりちゃん、今ではすっかりいい反応をしてくれるようになってさー」

「ということは、昔は……?」

「ゆかりちゃんの体は私が開発した」

 あんまりな言い方にあなたは抗議しますが、「でもそうでしょー?」とあけすけに言われてしまいます。恨めし気にマキさんを見ても、「はいはい、そういう顔してもかわいいので無駄ですー」と流されてしまいます。あなたは言い返すのをやめ、手早く体を洗いました。1年半もこの体で過ごせば、もう慣れたものです。自分の体に欲情するわけもなく、さっさと風呂につかることにしました。

 あなたがしばらく風呂に浸かっていると、ようやく体を洗い終わった三人がやってきました。みんな髪を頭の上でまとめ、湯船に入ってきます。どことなく嫌な予感がしながら待っていると、また琴葉姉妹があなたの左右にやってきました。しかも今度は肌が触れそうなほどの距離です。右に茜ちゃん、左に葵ちゃんが来ます。せめて距離を取ろうと前に移動しようと腰を上げると、それを阻まれてしまいました。なんとマキさんがあなたの目の前に陣取ったのです。壁際で三方向から追い込まれたあなたはもはや詰みでした。あなたはどうしてこんなに近くにいるのか三人に聞きますが、聞き流されてしまいます。

「それにしてもゆかり先輩って、本当にスタイルいいですよね」

「ほんまにそう。まさにモデルさんって感じでうらやましいわぁ」

「でしょー?」

 いや、マキさんはどんな立場で言っているんだと突っ込みたくなりますが、それを言うとまた弄られる気がするので黙ることにしました。体を見られている気がして、膝を抱えて縮こまります。

「どないしてんゆかりさん。恥ずかしいん?」

 茜ちゃんの質問にも黙っていると、葵ちゃんがどことなく楽し気にして、あなたにより近づきます。

「そんなにゆかり先輩が黙ってるなら私にも考えがありますよ~?」

そういうと、彼女はあなたの左腕をとって胸元に抱きしめます。それを見た茜ちゃんも続き、あなたの右腕をとって抱きしめます。あなたは腕に感じる感触からなるべく意識を逸らしつつ、マキさんに助けを求めました。

「いやぁ、ゆかりちゃんの困ってる顔、かわいくて好きなんだよねぇ」

「わかります! ゆかり先輩って何というか、こう……弄りがいのあるというか」

「わかるわぁ」

 明らかにあなたの意見はこの場において劣勢で、もう諦めるしかありません。あなたはおとなしく受け入れるほかありませんでした。

 

 風呂から上がってしばらくまたゲームで遊び、ちょうど体も冷えてきたのでそろそろ寝ようとなったときです。あなたは今までの流れだとまた琴葉姉妹に挟まれる羽目になるかと心配していましたが、今度はそんなことありませんでした。マキさんが「ゆかりちゃんは私と一緒に寝ようねー」と布団に連れ込んだためです。それには琴葉姉妹も口を出せず、無事に寝ることができたのでした。

 しかし、そう思えたのもはじめのうちだけでした。いつものようにマキさんに後ろから抱きしめられて目を閉じていると足元を誰かに撫でられ、思わず腰を動かしてしまいます。それがマキさんに伝わったのか、彼女から声をかけられます。

「ゆかりちゃん、どうしたのかな?」

 彼女から毎晩かけられた、どこか艶やかなその声はあなたの耳をくすぐり、その刺激は背筋にまで伸びていきます。それを見たのか、マキさんはあなたを抱きしめていた手を胸元とおなかにずらしていきます。あなたは小声で「琴葉姉妹に気づかれては困る」と抵抗しましたが、止まる様子はありません。マキさんはあなたの首筋に唇を落とすと、軽くついばみます。すっかりその気の彼女ですが、あなたは気が気でありません。なにせ、足元をマキさん以外に触られているのです。今あなたは少なくとも3つの手で触られていて、琴葉姉妹のどちらかがあなたにいたずらしているのは明らかです。姉妹が寝ていた布団を見ると、どちらの姿もありませんでした。そして、あなたの隣に敷かれていた布団の足元が膨らんでいるのが、暗いながらもかろうじて見えます。あなたはマキさんに姉妹のことを伝えようと口を開きましたが、マキさんはあなたの口を手で覆い、「声出したらばれちゃうよ?」と囁きます。ばれるも何もすでに参加されているのですが、伝えることはできません。今ここで大きな声を出してしまえば、姉妹のもう片方も参戦してしまうかもしれないのです。あなたは流れに身を任せることにしました。もっとも、あなたはこの後すぐ、両足をなめられ、行くところまで行ったことに気づきます。

 

 翌朝、あなたが目覚めると、マキさんはまだ寝ているようでした。そっと腕から抜け出すとまだ足元の布団が膨らんだままだったので、ゆっくりとのぞき込んでみます。

 そこには琴葉姉妹両名が抱き合って寝ていました。思えば、途中からはマキさんの感触しかしなかった気がします。なんだか、盛大に遊ばれたような気がするのでした。

 

 その日の撮影はこれといった問題も起きず、また夜がやってきました。照明は既に消され、あとは寝るだけです。恐ろしい狼が三匹放たれた檻の中にウサギが一匹迷い込んだら、きっとこんな気持ちになるのでしょう。あなたはマキさんに、二人を背にして眠ってもらおうとしました。しかし、彼女は一手にそれを切り捨て、布団に寝転がったあなたの頭の両側に手をついて、覆いかぶさります。それはまるで自宅で過ごす夜のようでした。まさか琴葉姉妹がいる中でするとは思えず、あなたはその意図が分からなくて混乱します。その様子を見ていたマキさんは満足げに笑った後、いつもの意地悪な顔を見せました。

「ゆかりちゃん、ゆかりちゃんは罪な女だね。みんなから愛されてしょうがないの」

 彼女の発言の意図をくみ取ろうと頭をひねっていると、あなたの両側に琴葉姉妹が座りました。視界の右には茜ちゃんが、左には葵ちゃんがいて、二人からも見下ろされます。自分を見下ろす三人の顔に、あなたの思考回路は追い付かずリミッターをかけました。首筋から頬、耳と熱が伝わっていくのが自分でもわかるでしょう。

「ゆかり先輩。私達、マキさんと話し合ったんです」

「ゆかりちゃんが可愛すぎるからあかんのやで」

「ということで、今日はいつもの三倍、ゆかりちゃんを可愛がってあげるから……たっぷり楽しんでね」

 マキさんの顔は、いつもよりもさらに恍惚としていて、意地悪で、あなたの目を離しませんでした。

 

 二日連続で襲われたあなたは最終日の撮影を疲れた体で何とか終え、新幹線に乗り込んで帰宅します。なんだか、琴葉姉妹との距離が近くなって仲良くなったのは良かったのですが、さすがになりすぎた気もします。しかし、相変わらずあなたはマキさんを独占できていたので、マキさんがいいならこの関係もこれはこれでいいかもしれないと思えてきているのも本音でした。

家に帰り、流れでマキさんと一緒にお風呂に入ったあなたは彼女に聞いてみます。琴葉姉妹にちょっかいを出されているのを受け入れるのはどうしてなのかと。すると、彼女はこう答えました。

「私が独占しているゆかりちゃんの顔も、いろんなところから攻められていっぱいいっぱいになっているゆかりちゃんの顔も、どっちも大好きだからなぁ……。でも、二人に渡したつもりはないから。ゆかりちゃんは私のもの」

 そんな都合のいいセリフも、惚れた弱みの前にあっては受け入れてしまうのでした。

 




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