あなたが結月ゆかりになって弦巻マキに食われる話   作:Sfon

6 / 11
豚はおだてりゃ空も飛べるはず。

話数が5話を超えたので、短編から連載に移行しました。
短編のころは年間短編ランキング2位をいただくことができ、非常に光栄でした。
この作品を読み、評価し、お気に入りに登録してくださった方々のおかげです。
本当にありがとうございました。

これからもよろしくお願いします。


琴葉姉妹から見た結月ゆかり

 琴葉葵は前世より可愛い女が大好物である。幼い頃から人に好かれる行動を学び、媚び、懐に入って相手を自分に惚れさせる過程を学んだ。自分の思い通りに相手が態度を変えるのを見るのは何度繰り返しても心地よい。小学生の頃には同学年の可愛い子たちを一人除いて上から順に取り込み、巨大なグループを作ったこともある。その一人とは彼女の姉、現在の琴葉茜である。

 琴葉茜は前世より可愛い女が大好物である。幼い頃から人を惹きつけるリーダーシップを磨き、その背を追うものを増やしていった。中学生の頃には生徒会長も務め、同学年のみならず学校全体から一目置かれる存在となっていた。その威光を持って可愛い女を生徒会に引き寄せ、自らの理想のグループを作っていった。しかし、一番可愛い女だけは取り込むことができなかった。現在の琴葉葵である。

 この姉妹は互いに女好きを極め、なおも成長していくポテンシャルを秘めていた。自分の興味が身内に向くことも不思議だと思ってはおらず、事実一時期は向いたこともあった。しかし、それでもそれぞれが最も可愛いと信じている自らの姉、妹はその手に収まらなかった。理由は各々の作ったグループが示していた。あけすけに言えば、彼女らは両名とも生粋のタチだったのである。

 

 彼女らはそれぞれお互いの性格を理解していた。彼女らは一度自分のグループに入れた女に対して平等に接し、決して誰かを雑に扱ったり特別扱いしたりすることはなかった。それはつまり、手中に収められる人数も限りがあるということである。そして、彼女らの嗜好にはズレもあった。妹は見目の可愛さを、姉は仕草の可愛さをより重く見ていたのである。それらを使い、各々が満足できる環境を構築したのが高校生の頃だ。

彼女らは全寮制の女子校に入学した。

 

 しかし、正直言って、女子校での生活は彼女らにとって生温いものだった。端的に言えばどの女もチョロすぎたのである。彼女らは見目もよく、生まれてから今まで磨いてきた自分の武器は鉄をも貫き、向かう所敵なしであった。そして得るものを得てしまえばより高望みをするのが人の性であり、それを満足する人が周りにいなくてはどうなったか。

彼女らは2次元にまで手を伸ばした。

 

 彼女らがボイスロイドに出会うまで、そう長くはかからなかった。動画サイトをあさり、小説サイトをあさり、そして『琴葉姉妹』を見つけた。それは自らと姉妹という共通点を持ち、ボイスロイドに興味を持つには十分な理由だった。

動画を見ていくうちに、一際興味を惹かれるキャラクターに出会った。結月ゆかりである。動画によってブレはあるものの、彼女は妙に強気に出るくせに、その割には諸々によく負け、そしてまた懲りずに強気に出てくるキャラクター性だった。初めて彼女を見たとき、彼女らは今までに感じたことがないほどの欲望を感じ、それがキャラクターであることがひどく残念だった。万人に開かれた二次元の存在では、手中に収めることは不可能である。

 

 そんな彼女らにとって、その身に降りかかった異変はむしろ天恵であった。ある日起きると、容姿が変わっていたのである。姉は琴葉茜のものに、妹は琴葉葵のものになっていた。それは一目瞭然で、なにせ髪の色も瞳の色も見たことがないほど、不自然に『自然』だったのだ。染めてはいない、カラコンでもない、生まれつきのものである存在感による圧倒的な説得力で、その現状は速やかに受け入れられた。さらに、部屋の様子は変わらないものの、壁に貼ってあった写真の中の姿も、学生証も、何もかもが琴葉両名としてのものに置き換わっており、もはや否定材料はなかった。そもそも、否定しようとも思っていなかった。

 

 それからの行動は早かった。自分たちが琴葉姉妹になったのであれば、結月ゆかりも同じく存在しているのではないだろうか。そう考えた彼女らは検索サイトで結月ゆかりと検索し、そして確証を得た。テレビ番組に、ラジオ番組に、雑誌に、幅広い媒体に出演している薄い紫髪の女は求めていたその人に違いなかった。すぐさま今後どうするべきか話し合い、AHS事務所に直接話を付けることにした。今まで鍛え上げた対人技能と見目の良さを売りに自らを売り込み、彼女に接近し、そして二人の力を合わせてでも彼女を堕とすために。

 

 事務所に入るのは、思いのほか簡単だった。すでに所属している結月ゆかりと弦巻マキがもし自分たちと同じ境遇であったのならば、彼女からの口添えがあったのかもしれない。もしそうだった場合、つまりそれぞれの中身が彼女たちのイメージしている結月ゆかりのものと違っていて、琴線に触れるものから変わってしまっている若干の不安であったが、よくよく調べていくうちにそれは解消された。ネット上に上がっている彼女の実況動画を見たためである。そこにいたのは、確かに求めていた強気な割にすぐ負ける、しかし負けず嫌いで諦めない結月ゆかりだった。もともと存在していたのか、それとも似た性格の人が容姿を変えてこの世界に迷い込んだのか。どちらにせよ、満足できそうな相手だった。

 

 事務所に入って初めて結月ゆかりと会ったときは、それはもう感極まるものがあった。絶対に叶えられるはずのなかった望みが、現実味を帯びてきたのである。しかし、それを感づかせては今後堕とすのに支障があり、そしてそれを見せない上手さは持ち合わせていた。

彼女たちは、落ち着いた様子で二人と対面し悪印象を受けないようにうまく立ち振る舞えたと自分たちを評価していた。そして、それだけ冷静に状況を見ることができていると考えていた。しかし、結月ゆかりと弦巻マキ両名とボイスロイドについて聞くと案の定食いついてきたのを見て同じ境遇なのだろうと感じ、妙に安心したとき、姿も世界も変わったことが思った以上に自分たちの負担になっていたことを知った。

 

 その日の晩、弦巻マキのマンションで詳しく話を聞いた時、目の前に結月ゆかりがいることはもちろん素晴らしく幸せな光景だった。だが、気になるのは弦巻マキの存在である。彼女は横に座っている弦巻マキに、妙に懐いているのである。日中あったときはそれほど長い時間対面しなかったので気が付かなかったが、マキが横に座るとゆかりはマキの手を取るし、マキの発言にゆかりは信頼を置いているようだった。長年連れ添った夫婦のようにもみえ、ただの事務所仲間にしては仲が良すぎる。この時点で、彼女らは嫌な予感がしていた。そしてマキがゆかりと付き合っていると明言され、彼女らはまさに生まれて初めて、自分たちより先に手を付けられた獲物を見つけることになった。その気持ちたるや簡単には言い表せないが、自分の見る目に間違いがなかった自信が現れるとともに、その強者に媚びをうる腹をくくったのである。彼女たちは捕食者であるがゆえに、上位のものへの立ち振る舞いはわきまえていた。何とかして結月ゆかりの端くれだけでも自分のものにすべく、きっかけを模索し始め、今までは互いに関わらなかった自分の姉、妹と力を合わせることもいとわないと決めた。

 

 事務所に所属してからしばらくは我慢を強いられる時期だった。事務所に行けばゆかりがいる。しかし、たいていの場合マキもセットになってそこにいるのだ。いくら彼女らがやり手だとはいえ、パートナーの目の前では手が出せない。それどころか、近くに立とうとしたりボディタッチをしようとしたり、ちょっとでも気を引くそぶりを見せるとマキから牽制が入るのだ。さすがに分が悪かった。せいぜいできたのは一緒に食事に行ったり、遊びに行ったりするくらいだった。もちろん保護者のマキ同伴である。そして、いろいろ方法を考えた結果ただ一つの方法のみが残った。最後の手段だ。本丸に乗り込み、直談判するのである。

 

 マキに話を付けだしたのは、事務所に入ってから二週間ほど経ってからのことだった。最初はチャットで、そして仕事の合間を縫って直接話を伝えた。マキの仲間に入れてもらい、マキがゆかりから離れるわずかな時間だけでもゆかりを可愛がらせてもらいたいと、ゆかりのすばらしさを交えながら語ると、チャンスをもらうことができた。月末に予定されている温泉旅館の取材では四人全員が一緒に泊まることになる。そこでゆかりが彼女らを受け入れればある程度は許す。そういう話になった。

 

 温泉旅館の取材当日。ゆかりにはできるだけ仲のいい姉妹という印象を与えつつ、徐々に距離を詰めていった。夜に一緒に風呂に入り、裸でゆかりの腕に抱き着くと、ゆかりは嫌がらず、恥ずかしがっていた。その様子を見て、彼女らはゆかりが自分たちを受け入れるだろうと予想した。この女は根っからのネコで、しかも複数人からの手を全て受け止めることができる器であると示されたようなものだった。

 

 そして一日目の就寝時にはあらかじめマキと話を付けていた通りに事を進めた。先にマキが手を出し、その上で彼女たちがちょっかいをかけた。急にゆかりに迫っては、驚きよりも嫌悪感が強く出てしまうという彼女らの弁をマキが受け入れたのだった。結果、ゆかりはその流れに身を任せ、一部分とはいえ彼女らを受け入れたのだった。翌日昼間にはマキからフィードバックを受け、実際に弄るときのためにゆかりの反応する場所を勉強し、ゆかりが琴葉姉妹を受け入れつつあるお墨付きをもらって二日目の夜を迎えた。マキ先導とはいえ面と向かってゆかりに近づき、襲い、弄び、啼かせ、懇願させた。ゆかりは彼女らの想像していた数倍の、今まで経験したことのない、非常にいい反応を返し、彼女らはますますゆかりに魅かれていったのであった。

 

 温泉旅館の一件が終わり、ゆかりが彼女らを受け入れた後はなかなか面白い状況になった。彼女らからのアプローチが認められ、なおかつゆかりもそれを嫌がっていないため、マキも口を挟みかねているのだ。これはいい機会と彼女らはアプローチを激化させ、それに張り合うようにマキも今まで以上の頻度でゆかりに関わろうとした。その結果、彼女らとマキが別々にアプローチできる機会が無くなってしまったのである。これを打開するために日替わり制が提案されたが、それはマキがゆかりと同棲しているためフェアではないと彼女らが反発した。

 そもそものパートナーはマキであり、パートナーの方がそれ以外よりも長く触れ合えるのは、別におかしいことではないはずだった。しかし、彼女らがマキに対して『時間が多くないと取られちゃうって思ってます?』と煽ったため、売り言葉に買い言葉でマキは時間的にも平等にしてやろうと心が動いた。妙に方々への対応がうまい彼女らへマウントがとれる絶好の機会だとマキは考えたのである。そしてそこにゆかりが四人で一緒に住む案をこぼし、これ幸いと彼女らが乗っかり、プライドをかけてマキもその案を受け入れたのだった。

 

 結果として、やはり一年分の差はそう簡単に覆るものではなかった。一週間はそれぞれが単独でゆかりと遊べる日を一日、みんなで遊ぶ日を二日、そしてゆかりに任せる自由な日を二日取ってある。そのため、その週のゆかりの気分は最後の二日分に現れるわけだが、大抵は片方がマキ、もう片方が琴葉姉妹二人になった。バランスを考えるとそれが妥当にも思われるが、次の日が休みの方がマキ、次の日仕事がある方が姉妹二人になるのが普通で、その差は明らかだった。そうなってしまっては彼女らのプライドが許さず、ゆかりの開発と研究は激しさを増し、指数関数的にゆかりの堕落度は上がっていったのだった。しかしそこは流石なもので、ゆかりは普段の気丈な態度を崩すことがなかった。それどころか、甘んじて受け入れる以上に誘ってくる素振りすらしたのである。その割には行為の際すぐにいっぱいいっぱいになって涙目で許しを請うのは、まさにプロフェッショナルのネコであった。もちろん、やめる者はいなかった。

 

 引っ越してから一月経ち、彼女らがゆかりに対して抱いた感想は「この世のネコの真理がここにいる」というものだった。タチのポテンシャルを最大限まで引き出し、双方ともに最高の経験ができる、類まれな存在であった。体、表情、声、態度、すべてを使って表現するゆかりは、タチにとってこの上ないほどの快楽を与えるのであった。




もしお気に召しましたら、お気に入り登録や評価などよろしくお願いいたします。
とても大きなモチベーション向上源となっております。
また、感想はどれもうれしく読ませていただいております。
指摘なども喜んでお受けしたく思いますので、気兼ねなさらずお書きくださいませ。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。