あなたが結月ゆかりになって弦巻マキに食われる話   作:Sfon

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20万PVありがとうございます。
しばらく続いた連日の更新も今日で一区切りです。
元はと言えばこの話を投稿しようと思っていたのですが、その間に挟みたい話がどんどん増えた結果のこの連続投稿でした。


イアがボイロハウスに来た日

 11月。新しいメンバーが事務所にやってきました。彼女の名前はイア。ピンクがかった銀髪の少女です。琴葉姉妹が事務所に来て以来、事務所がホームページに掲載している応募フォームから届いたメールは、名前と志望理由をあなたを含むメンバー四人にも共有するようになっていました。これはマキさんのアイデアで、今まであなたや琴葉姉妹を発掘した実績が裏付けとなって採用されたのでした。もっとも、実際見ているのはほぼ名前だけで、ボイスロイドの名前が載っているかどうかが気になっていました。これで問題なのはメンバーの誰もが自分と同じ境遇の人の名前を知らなかったとき、例えばメンバーがこの世界にやってきた後に発表されたボイスロイドがこの世界に来た場合ですが、その場合はファンレターの方にメッセージが来ると踏んでいます。

 そんな中、その応募フォームのリストで見つけたのがイアの名前でした。もちろん、あなた達はその名前を見た瞬間にマネージャーさんに連絡し、彼女と会ってみることにしました。

 

 事務所にやってきたイアはあなたよりもこぶし半分ほど低い背をしていて、高校生だといいます。あなた達四人にとっては当然のように見覚えがあり、親近感を持って接しようとしましたが、彼女自身はまさしく借りてきた猫のように縮こまり、あなた達との距離を保とうとしていました。マキさんはあなたにもしたように「ボイスロイドって知ってる?」と聞きましたが、どうやら知らないようでした。

 この返事には少し困ってしまいました。当然のように彼女も前世の記憶を持っていて、いつの間にかこの世界に紛れ込んでしまったクチだろうと、あなた達の誰もが考えていたからです。あなた達はもとの世界に帰りたい気持ちがほとんどなくなったものの、自分の身に何が起こったのかを知りたいという気持ちは消えたわけではありませんでした。そしてなにより、ボイスロイドを知っていることがあなた達の結びつきを強めているのです。その中に一人だけボイスロイドを知らない、そしておそらくは前世の記憶も持っていない彼女を仲間に迎えて、彼女自身がこの事務所に居づらくなってしまうのではないかと危惧しました。

 

 しかし、いろいろ話し合った結果、イアをメンバーに迎えるべきであると結論が出ました。容姿も、声も、あなた達の知っているイアと相違なく、何かあなた達とつながりがあるに違いないと踏んだのでした。正直言って博打に近いものもありましたが、仲間は少しでも多い方がいいと考えたのです。

 

 イアが事務所の一員になり、改めて顔合わせが事務所で行われました。あなたは早く仲良くなろうとイアに声を掛けて話題を振りますが、彼女は明らかに緊張で体が硬くなっていました。返事もおぼつかなく、完璧に上がってしまっているようです。考えてみれば、今やアイドルに配信者、司会者などいくつもの顔を持つメンバーがそろったこの事務所に突然放り込まれているのです。無理もありませんが、いつまでもこれでは困ってしまいます。

 これでは先が思いやられるとあなたが気をもんでいると、マキさんが彼女に声をかけました。スマホを取り出し、アプリを開いて、まずは連絡先の交換をすることにしたようです。彼女のアカウントがあなた達のグループチャットに追加され、メンバーが五人に増えました。

『イアです。これからよろしくお願いします』

 歳がそれほど離れているわけでもないのにちょっとかしこまりすぎている気はしますが、それが今の彼女のスタンスなのでしょう。あなたは気負わせないようにラフな返事をして、ついでにかわいいスタンプも送っておきました。

彼女の様子をうかがうと、微笑みをこぼしている気がしました。

 

 続いて、あなた達は彼女と仲良くなるために事務所で歓迎パーティーを催しました。前日の夜からあなたとマキさんで仕込んだ料理を振る舞い、みんなで一緒にパーティゲームで遊び、たっぷり話しました。

そうやってあなたたちの方から彼女に積極的にかかわると次第に打ち解け、一週間もすれば事務所にすっかりなじみました。敬語は外れないものの、事務所で何人か集まった日には昼食を一緒に食べたり、仕事で一緒になれば打ち上げと称して外食に行ったりしました。

 

イアちゃんがやってきてから一月ほど経ったある日、あなたは彼女から相談を受けます。それも、彼女の家に呼び出されてのものでした。どうやらイアちゃんはあなたにずいぶんと懐いていて、マキさんを苦手にしているようです。振り返ってみれば、確かにマキさんは彼女特有の勢いがあるため、慣れていなければ少し困惑してしまうかもしれません。琴葉姉妹はいつもずっと二人でくっついているので、間に入るのを躊躇する気持ちもわかります。あなたに相談事をするのはある意味適任なのかもしれません。

 

 彼女はあなたに「マキさんには内緒で来てほしい」と頼みました。マキさんに隠し事をするのは忍びなく思ったあなたですが、隠さずに言ってもそれはそれでマキさんを傷つけるかもしれないとも思いました。結局あなたは彼女のお願いを受け入れ、マキさんには仕事で外泊すると説明しました。

 加えて言えば、彼女があなたの目の前で、少し上目づかい気味に言ったその雰囲気にも飲まれた部分もありました。あなたがマキさんを愛していて、大好きであるのは疑いようのないものでしたが、かわいい女の子のしぐさはどうしても心に響くものがありました。いつもマキさんを見上げるのに慣れていて琴葉姉妹もあなたとほぼ同じ身長のあなたは、近くで自分が見上げられることに慣れていなかったのです。わずか数センチの差ではありましたが、あなたはイアちゃんに対して庇護欲のようなものを感じていたのでした。

 

 寒さが一層厳しくなってきた12月、金曜日の夜7時。あなたはマキさんに嘘をついたことを引きずりつつ、イアちゃんの自宅へとやってきました。白い吐息とともにあらかじめ伝えられていた住所に向かうと、そこは都心から少し離れた郊外との境目あたりで、4階建てのマンションが建っていました。

 外廊下を歩きながら、何処となくその雰囲気に懐かしさを覚えます。マンションの雰囲気が一人暮らしをしていたころと似ていて、イアちゃんは事務所に来てからまだそれほど経っておらず、お金がそれほど溜まっていないのかもしれないと感じたのです。

 イアちゃんも活動が波に乗ればもっといい家に住めるだろうに……と考えが進んだところで、自分が調子づいていることに気づき、反省するのでした。そして、むしろイアちゃんもみんなと同じ家に住めばいいのではと考え、あなたは帰ったらみんなに相談してみようと決めたのでした。

 

 ベージュに塗られた鉄製の玄関にたどりつき、インターホンを鳴らしてしばらくするとドアが開きました。半分ほど開けられたドアの向こうに見えるイアちゃんはだいぶ着崩した格好で、起毛のホットパンツにオーバーサイズのTシャツを着ています。襟元はサイズのせいでだいぶ余裕があり、鎖骨がすべて見えるほどの勢いです。思わず視線がその奥へと向かってしまいます。この2年で女の子の体にだいぶ慣れたとはいえ、新しい子はまた別の話でした。

「どうかしました? どうぞ中に入ってください」

 彼女から声をかけられ、あなたは視線を彼女の顔に戻しました。頬をほんのり染めながら笑っている彼女は、どこかあなたの考えを見透かしている気がします。あなたは先輩としての威厳を壊してはいけないと思い、彼女をじっと見ていたのは私服らしい私服が珍しいと思っただけでやましい気持ちがないことを強調しましたが、聞き流されたような気がしました。

 

 部屋に入ると、暖かな空気があなたを迎え入れてくれます。冬とは思えない室温で、外の気温に合わせて着こんでいたあなたは上着とパーカーを脱ぎ、いつも来ている紫色のワンピース一枚になりました。

 彼女の家の内装はシンプルで、ワンルームの部屋がモノトーンで統一された家具でコーディネートされていました。黒を基調とした木製の作業机の上にはラップトップとスピーカー、フォトフレームが置かれ、白いデスクチェアが添えられています。白く塗られた金属の棒で組まれたフレームのシングルベッドが隅に置かれ、同じく白いラグマットが床に敷かれています。その上には黒い木製のローテーブルが置かれ、さっきまで読んでいたのだろう雑誌とマグカップが置かれています。脇には丸いクッションが二つ敷かれ、そこに座っているように言われました。ちょうど、ベッドとローテーブルの間です。

 正座を崩し、足の間にお尻を落として座ったクッションは厚くない割にしっかりとしていて、床の硬さはそれほど感じません。何となくあたりを見回していると彼女が「紅茶かコーヒー、どっちがいいですか」と聞くので、あなたは気分にあった方を選びました。返事を聞いた彼女は電気ケトルでお湯を沸かし、飲み物の準備をしてくれています。しゅうしゅう、こぽこぽ、とお湯の沸く音だけが部屋に響きます。

 

 彼女はスリッパを履いてキッチンに立ったまま、電気ケトルを眺めていました。手持ち無沙汰なのか両手をすり合わせたり、つま先でリズムをとったりしています。そして、思い出したかのようにマグカップを持ってきたり、あれこれちょっとした作業をしたりするたび、その音が普通より大きく響いている気がしました。

 

 あなたは彼女から視線を外し、ローテーブルの上に置かれた雑誌の表紙に移しました。月刊のティーン誌で、マキさんが読んでいるのを何度か見たことのあるものでした。今月の目玉は『5000円以下でできる大人っぽいメイク特集』のようです。人の雑誌を勝手に読むのも、彼女に声をかけるのもはばかられたので、視線を壁へと移しました。

 A3サイズのコルクボードには、いくつかのメモと写真が貼られています。メモの内容は文字が小さくてわかりませんが、写真の内容は何となく見えました。何人かの友人と一緒に撮った写真、年頃は中学生ほどでしょうか。黒を基調として白と赤の差し色が入ったセーラー服を着ています。ほかにはスキーに行った写真、お祭りに行った写真、たくさんのイベントごとで撮った写真が並べられています。

 

 しばらくそうしていると、白と黒のマグカップを二つ持った彼女がやってきて、白い方をあなたの目の前に置くと、対面に座りました。あなたは暖かい飲み物でほっと一息つくと、彼女が会話を切り出すのを待ちました。彼女も黒いマグカップを傾けてしばらくしてから、「その、いきなり相談事から始めちゃっても大丈夫ですか」と、あなたに問いかける形で、視線を手元のマグカップに向けたまま、口を開きました。

 

「私は、ずっとゆかりさんを探していたんです。小さいころ……小学5年生の時に見た夢が最初でした。その時はゆかりさんの顔はぼんやりとしていて、ただ私を優しく抱きしめてくれていました。体格差もあって、私を包み込んでくれました。その夢をきっかけに、一月に一度くらい、ゆかりさんを夢で見るようになったんです。最初は、まさか実在する人だなんて思っていませんでした。それで、中学生になってしばらくしてから、ゆかりさんを夢に見る頻度が上がってきて、たぶん週に一回は見ていました。そのころはゆかりさんと街に遊びに行ったり、お家でのんびりする内容だったと思います」

 

 彼女はマグカップを両手で握りしめ、少し呼吸を落ち着けるとまた話を続けます。あなたは彼女の言っていることがすぐに頭に入ってきませんでしたが、ただ、何か彼女の様子が怪しいのはわかりました。話している内容は見ず知らずの人が聞けば妄想にしか思えないような内容ですが、会ったこともないあなたが出てくる夢ときいて、なにか人知を超えた力が介在しているのではないかと気になり、話に聞き入ります。今までにない切り口の神秘体験を垣間見たのです。

 

「そのころまでは、単なるお友達くらいの感覚だったんです。でも……その、ゆかりさんならきっと理解してもらえると思うんですけど……。あ、その、確認なんですけど、ゆかりさんとマキさんは付き合ってるんですよね?」

 

 唐突に投げかけられた質問に、あなたは思わず素直にうなづいてしまいます。なぜか、はぐらかせないと感じたのです。

 

「わたし、高校生になってから毎晩ゆかりさんのことを夢に見るんです。それで、ようやく気付いたんです。私、ゆかりさんのことが好きなんだなって。いつの間にか年も近くなっていて、扱われ方も対等になって、子供っていう、フィルターを通した見方をしないでくれるようになっていたんです」

 

 唐突に告白され、あなたは目の前で起きている事態を追うので精一杯になっていました。あなたがマキさんと付き合っていると知っているうえで、彼女は告白してきたのです。琴葉姉妹はマキさんに話を付けて外堀を埋める手を使いましたが、直接告白されてはどう反応すればいいのかわからず、あなたは彼女の顔を見つめることしかできませんでした。だんだんと空気が張り詰め、息が浅くなり、自分の心臓の音がうるさく感じるようになってきています。完全に、彼女の雰囲気に飲み込まれていました。

 

「そして、そのころになると、よくわからない……男か女かもわからない声で、私に語り掛けてくるんです。『彼女はあなたにとってどうしても必要な人だから、絶対に手に入れなさい』って」

 

 彼女はそういうと、あなたと目を合わせました。その目は少し潤んでいて、若干焦点があっていないようにも思えました。あなたは彼女に何か声をかけようと思うのですが、まるでのどが張り付いてしまったように、かすれた声すら出ず、ただ吐息が漏れるだけです。そんなあなたの様子を見ながら、彼女はあなたの背後に回って腰を下ろします。

 あなたは彼女の方を振り向こうとしましたが、体は答えてくれません。テーブルの上で組んだ手はそこから動かず、足の指先すら反応しません。

 あなたが困惑していると、彼女がそっと、あなたの腰に手を回して、ぎゅっと抱きしめました。体全体を密着させ、頭をあなたのうなじあたりに当てているようです。柔らかな感触が薄いTシャツ越しに当たります。あなたもワンピース一枚と下着しか着ていないため、ほぼダイレクトに、その感覚がやってきます。彼女の浅く暖かい息づかいが首筋を撫で、彼女の呼吸が胸の動きを通じて背中に伝わります。マキさんが抱きしめる時とは違う、体をいっぱいいっぱいにくっつけた感触は、今まで経験したことがありませんでした。……いや、思い返せば葵ちゃんと茜ちゃんに抱き着かれたことはありましたが、ここまでぴったりくっつくことはなかったように思います。

そして、しばらくそうしてあなたを抱きしめていた彼女ですが、やがて手の位置をだんだんと胸元や足元に向けて動かし始めます。その焦らすような動きは、あなたの呼吸のペースを少しずつ、確実に速めていきました。

「ゆかりさん、私、マキさんからあなたを奪えるだなんて思ってないです。でも、どうしても欲しいんです。ゆかりさん……私のものになってください」

 さすがに抵抗しようとしたあなたですが、やはり体に力が入りません。彼女が少し力を加えただけで、あなたの体は彼女の方に倒れこみます。彼女は背後のベッドに体を預けると、あなたの耳元でこう囁きました。

「さっきの飲み物、体の力を抜くお薬が入っているんです。だから、抵抗しても無駄ですよ。ゆかりさん。わたし、ゆかりさんがどうしても欲しいので……私を忘れられなくしてあげます」

 あなたは彼女の言葉をきいて、背筋になにか刺激の走る感覚を覚えます。それは、ベッドの上でマキさんに掛けられる、甘い誘惑の言葉を聞いた時の感覚と似ていました。

 あなたの反応に気をよくしたのか、彼女は息をこぼします。それがあなたの耳にかかり、また軽い刺激が走ります。後ろから抱きしめられ、片手は太ももをさすり、もう片方は胸元を抱きかかえています。マキさんや琴葉姉妹にほぼ毎日触られ続けたあなたの体は、望んでいようがいまいが、彼女の思い通りの反応をしてしまいます。

 今思えば、妙に暖かい部屋も服を脱がすために仕組んでいたのかもしれません。彼女はあなたの肩に手をかけると、肩ひもを下ろして下着をあらわにします。そして、あなたの肩にそっと口を付けると、少し吸い、そのまま首元まで口を移していきます。

「はぁ……ゆかりさん、大好きです。愛してます」

 そう呟くと、今度はあなたの耳を口ではさみ、舌でそっと舐めあげます。耳から伝わる刺激があなたの背中を通り腰まで伝わっていきます。もう彼女に食べられてしまうのはほぼ確定しました。あなたは諦め、目を閉じて受け入れようとします。せめて痛くされないことを願って、彼女に体をゆだねるのでした。

 

 まさにその時でした。玄関の開く音とともに、いくつかの足音がどたどたと聞こえます。目を開けてそちらを見れば、マキさんと琴葉姉妹がいました。イアちゃんはそれを見て、あなたを後ろからぎゅっと抱きしめると、あなたの後ろに隠れようとします。この状況に焦っているのか、あなたのうなじに彼女の荒い息がかかります。熱く感じるほどです。

「やーっぱりここにいたね、ゆかりちゃん。私に黙ってたことはとりあえず置いといて……イアちゃん、ちょっとお話しようか」

「マキ先輩はともかく、なんで茜さんと葵さんまで……」

 どうやら、玄関のカギをかけ忘れていたようです。あなたを盾にイアちゃんは部屋の奥へと逃げようとしますが、当然逃げ切れるはずもありません。琴葉姉妹によってイアの腕はあなたから外され、家の外へと連行されていきました。マキさんもあなたにパーカーを着せるとおんぶして、一緒に外に行こうとします。背負おうとしているマキさんをあなたがじっと見つめると、彼女はあきれた様子であなたにこう言いました。

「大丈夫。悪いようにはしないから安心して」

 

 マンションの外にはタクシーが二台停まっていて、前の一台に琴葉姉妹とその間に挟まれたイアちゃん、後ろの一台にあなたとマキさんが乗り込みました。行き先はあなた達の自宅のようです。マキさんに肩を抱かれながらしばらく車で揺られているうちに、だんだんと体に力が入るようになってきました。首を回し、手を握ったり開いたりすると、少しずつ感覚を取り戻してきます。それを見たマキさんは安心した様子で微笑むと、あなたにスマホを手渡します。あなたのものです。チャットアプリを開くと、同居組、全四人のグループチャットにあなた宛てのメッセージが届いていました。

『ゆかりちゃんはイアちゃんのことどう思う?』

 あなたはイアちゃんが喋っていた内容をかいつまんで話します。この世界にもともとは存在しないあなたを夢で見ていたことが本当なら、この状況に巻き込まれた背景が違うとはいえ何か関係している可能性があるのです。それなら、イアちゃんは自分に対して悪くはしないだろうと考え、あなたは彼女を仲間に入れても大丈夫ではないかと考えました。みんなからは襲われかけたことを心配されますが、あなたはイアちゃんの手綱をみんなに握ってもらえば何とかなると丸投げしたのでした。

 

 自宅に戻り、マキさんたちによるイアちゃんの入居面接が始まりました。面接と言っても、イアちゃんがあなたに害を与えるつもりがあるのかどうか、あなたをどう思っているのかを聞くだけで、すぐに終わりました。イアちゃんは害を与えるつもりが無いと前置きしたうえであなたがどれほど可愛いかについて延々と語り、その熱意はマキさんたちにも伝わったようです。暫く一緒に住んで様子を見ることになりました。目の前で自分が褒めちぎられるのを聞くのはあなたにとって羞恥プレイ以外の何物でもありませんでしたが、その恥ずかしがっている様子までもイアちゃんは褒め、素晴らしいと語り続けたのでした。

 

 そして、この日はこれだけで終わりませんでした。イアちゃんがあなたを襲ったと知っているマキさんたちは、『あなたがどれだけマキさん、琴葉姉妹に順応しているか』を見せるべく、イアちゃんに研修を受けさせることになりました。あなたはベッドの上に寝かされ、あなたを囲むようにマキさんと琴葉姉妹が座っています。そしてベッドの脇に置かれた椅子にイアが座り、あなた達を眺めています。

 一時間後、いつも通り三人に弄ばれるあなたの一部始終を見たイアは、自分のテクニックがまだまだ及ばず、あなたをマキさんから引きはがせないことを悟ったようでした。

「ゆかりさん、もうとっくに堕とされていたんですね……」

 イアちゃんはそういいながらなんだか達観した目であなたを見つめます。あなたは息が落ち着かないまま彼女をぼんやりと眺めていると、何やら決心した面持ちでイアちゃんがマキさんに歩み寄ります。

「マキさん、私を弟子にしてください! ゆかりさんをもっと堕として見せます!」

「いい心意気だねぇ、イアちゃん。それじゃあさっそく基本のテクニックから……」

 ただでさえ三人同時に責められていっぱいいっぱいのあなたですが、今後はもう一人増えるようです。イアちゃんとマキさんは話している内容を除けば仲のいい先輩後輩ですが、内容が内容でした。あなたの敏感な部位やら指の使い方やら、身に覚えのある弱点が伝授されていく光景を間近で見るのは末恐ろしいものがありましたが、どこかで期待している気持ちがあるのは否定できないようです。

「ゆかりさん、私、いっぱい勉強してたくさんご奉仕しますね!」

 無邪気に笑うイアちゃんと口から出る言葉とのギャップの倒錯的な魅力が、あなたの視線を釘付けにしたのでした。

 


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