ついでに色々と悪ふざけを増やした並行世界(ぉ
「そうして茨木童子殿の首を乗せた小生こと猫の翁、そして酒吞童子殿を斬り殺した源頼光殿が駆け付けた先は、大江山のとある隠里にございます。
その隠里は茨木童子殿と小生が直々に呪術や結界・お祓いなどを人間に伝授し、妖怪変化の恐ろしさと対策を後の世に伝える役目を与えたのです。
茨木童子殿を慕い崇め解呪を学んだ人間達は、都の為に祓う手助けをして欲しいと頭を下げた頼光殿の頼みもあって快諾、都へと向かい給うた。
頼光四天王の奮闘と安部晴明の陰陽術を以ってしても止められぬ大呪怪を、茨木童子殿と隠里の祓い師らが一丸となって、多くの人間の恨み辛みを祓ってみせたのです。
源頼光が茨木殿の首を掲げ『呪怪よ、其方らの恨み辛みを忘れぬよう社を建て奉る事を、源氏の名の下に約束致す! どうか鎮まり給え!』と声を揃えて叫んだ様は、新たな人の世の始まりを告げるのだろうと小生は感動いたしました。
祓い師の術、頼光殿と茨木殿の意志、そして都の『明日を懸命に生きる者達』の願いが届いたが故に、大呪怪は呪いを鎮め、骨だけが羅生門に散らばったのです。
こうして羅生門の呪怪は消え去り、残った骨を丁寧に埋葬し社を建て、亡くなった者達を丁寧に祭るようになったそうな」
世界に色が取り戻され、俺の知るいつもの光景が眼前に広がる。
これにて終い、と広げていた巻物が独りでに巻き取られ、甚平を羽織った二本足の猫の背に収まる。それを見届けた俺こと藤丸立香はキャスター、真名『猫座衛門虎之進』こと猫の翁に拍手を送った。
「大江山の鬼退治と羅生門の呪怪は絵本で知ったけど、そんな事があったんだなぁ」
「事実は小説より奇なり、という奴ですね先輩」
俺と一緒に拍手を送ってるのは、俺が初めて契約したデミサーヴァントであり大事な後輩であるマシュ。感極まってるのか俺よりワンテンポ早い拍手を送っている。
「いやはや、宝具による演出とはいえ興味深かったです! 弁慶もそう思うだろう?」
「うむ解りました、解りましたから頭をバシバシ叩かないでくだされ義経様」
「いやマジで怖いわー、生首を細切れにした頼光とか超怖いわー。つうわけで茶と羊羹のお代わりヨロシノビ」
「首切りなんざいつの世も常套手段じゃないですかノッブ。あ、お茶のお代わり私にも下さい小太郎さん」
「ではお淹れしましょう。主殿とマシュ殿は?」
「安珍様のお茶は私がお注ぎいたします♡」
「うわビックリした」
背後でワイワイ騒いでると思えば、日本出身サーヴァントがこんなに。お話に夢中で気づかなかったみたいだ。清姫に至ってはいつの間にか俺に寄り添ってるし……。
特に牛若丸……源氏の子孫としては聞けて良かったのかもね。この二つが原因で源頼光は相当苦労したみたいだし、京都と源氏に多大な影響を受けたらしい。これらについても後で翁さんから聞いてみよう。
「おや、お客様が大勢ですな。やれ嬉しや、小生の宝具が役に立ちましたな」
手綱煙管と呼ばれる煙管で煙を吸いながらカラカラ笑う猫の翁さん。サーヴァント大集合に驚きもしないとは肝が据わってる。
先の光景は、猫の翁さんのキャスターとしての宝具【
まるでアニメ映画を見ているかのような、墨絵とは思えない臨場感溢れる光景が次々と流れてきて凄かった。宝具ってこんなことにも使えるんだなぁ。
「いや芸術家として興味深い墨絵だったよ。ジャポニズムでも有名になっただけのことはあるよ」
「おうふ」
いつの間にかダ・ヴィンチちゃんも混ざってた。話からして宝具演出の最中に居たんだろうけど。
「猫の翁さんって海外でも有名なの?」
妖怪絵巻の一種として、日本史の教科書とかに記載されてるのは知ってたけど。墨で書かれてたのに妙にリアルで印象深かった。
「猫の翁さん……猫座衛門虎之進が書いたとされる書物『猫又珍道中』ですね。江戸時代の最中に見つかった妖怪絵巻の一種です」
「藤丸君も見て解ると思うが、彼の墨絵は写真かと思える程にリアルで、当時の平安時代や江戸時代にはなかった描写だったから発見時はそれなりに注目を集めたんだ。
彼の巻物は幾つもあって、その内の何本かがジャポニズムのブーム中に流れ着いた際には、そのリアリティ溢れる墨絵に多くの画家に衝撃を走らせたほどだよ。
けど著者に関する情報は一切なくて、その余りにも人間離れした描き方から、実は茨木童子に仕えていたとされる猫又そのものではないかと推測されるようになり、英霊に至ったんだろうね。因みに猫座衛門虎之進ってのは当時で言うペンネームだよ」
確かにあのリアリティは真似できないわ。他の英霊も然りと言わんばかりに頷いていて、猫の翁は照れ臭そうに毛づくろいする。
因みに源頼光(すっげーボインボインだった……)と金時の記憶はどうしたのかといえば。
「ゴールデンも色々あったんだね」
「まぁな。しっかし性質の悪ぃ宝具を持ちやがってよぉ猫爺」
「ほっほっほ、文句は座にどうぞ」
猫の翁を睨んでいるのは、ゴールデンこと坂田金時。彼も平安時代の特異点「羅生門」で出会ったバーサーカーで、猫の翁と同じく召喚に応じてくれたサーヴァントだ。
記憶の内容がある程度一致していれば複数の記憶を掛け合わせることが可能らしく、ゴールデンにも協力して記憶を覗かせてもらった。ごめんねゴールデン、無理言っちゃって。
「一説では酒吞童子とゴールデンは恋人ではないかって聞いたことあったけど、本当だったなぁ」
「おい待てマスター、ゴールデン初耳なんだが?」
何驚いてるのさゴールデン。白黒でも解るほどにストロベリーな雰囲気だった癖に。
「先輩の出身国である日本では、酒吞童子と坂田金時の切ない恋愛譚が密かにリメイクとして流行っているらしいんです」
「儂の時代にも演劇であったぞ? 決戦前の短くも悲しき恋物語がオツじゃったなぁワロスワロスw」
「ほほぉ、詳しくお聞かせ願えますかな?」
「止めろ耳年増! おめぇらも興味本位で聞くんじゃねぇ!」
ノッブの時代でも題材にされるほどの悲恋の物語らしいね。猫の翁も興味津々みたいで、巻物と筆と硯箱を用意している。書くの?
恋物語と聞いて清姫を始めとした日本英霊が身を乗り出して騒ぎ出したからか、ゴールデンがゴールデンキレた。電撃撒き散らしてまで照れちゃってさ。
『あのー、そろそろいいかな? 次の召喚準備が整ったよー』
あ、ロマニのアナウンス。ごめんね割り込みにくかったでしょう軽くチキンで空気の読めないドクターだから。
『なんか悪口言われた気がするから、ちゃっちゃと来ないと片付けちゃうよー』
ごめんて。
▼▲▼▲
まず召喚されたのは、これまた先日の特異点で出会ったサーヴァント……それも今話題に出たあの鬼だ。
鍔の無い長刀を片手に持ち、紫の女袴を着込んだ二本の角を持つ美少女。
「大江山が首魁・酒吞童子。なんでかセイバーのクラスで召喚されてもうたけど、まぁええわ。好きに勝手に斬ったり殺したり呑んだりするやろうけど……構へんね?」
凛とした佇まいに反した蕩けるような色気と口調。存在そのものが刃物のような鋭さを感じさせ、恐怖と緊張感を保たなければ斬り殺されると錯覚させられる。
護衛として侍らせている弁慶が俺とマシュの盾になるように立ち塞がるけど、先に前に出たのは……やはりというか金時と猫の翁さんだ。
「やっぱ手前がきやがったか酒吞……んだよその袴、ゴールデン似合わねぇでやんの」
「これはこれは酒吞童子殿、このような縁で再会いたすとは、小生嬉しゅうございます」
複雑な気持ちなのか頭を掻くゴールデンと、小躍りしながら歩みを進める猫の翁さん。
すると酒吞童子は「あは」と笑って猫の翁の脇を通り過ぎ、気が付けばゴールデンの背後に回って抱き着いていた。
「金髪の小僧ぉやないの、会えて嬉しいわぁ♡」
「どわぁぁ抱き着くんじゃね、こら厭らしい手つきで引っ付くな大胸筋を押し付けるなスーパーゴールデンじゃねぇ!」
「当ててんのや♡」
「いちゃつくのは良いですが、小生の事も忘れなきよう」
やっぱり恋人じゃん。しかしエロいしがみつき方だ……マシュには刺激が強いので目隠ししてます。弁慶の背で遮ってるけど、念のためね。
「けど羅生門で会った時と格好が違うよね? あんな長い刀持ってたっけ?」
羅生門で会った時は、もっと際どい恰好してて、デカい瓢箪みたいな物持ってたような。
「これは生前に義経様からお聞きしたのですが、祖先である源頼光の手記には懺悔と共に『酒吞童子ほど心身ともに鋭い妖魔の剣士は、この先現れることはないだろう』と綴られていたそうです。セイバークラスでの召喚はこれが要因かと」
弁慶はそういうけど、じゃあなんで女袴なんて着込んでるの?って聞いたら目を背けられた。まぁ解らないよね。
「うひー、これまた凄い英霊が出たなぁ……これはもしかしたら、もしかするかもよ~」
ロマニ、それフラグ。
ゴールデン・猫の翁・酒吞童子と出た時点でフラグだけど、
けど石投げちゃえ。えーい。
召喚サークルより溢れ出るは、色々な特異点を渡って少しは鍛えられた俺の直感と図太さを刺激する、強烈な殺気と覇気。
弁慶が槍を構え、金時が斧を持ち、酒吞童子と猫の翁さんは目を丸くし、俺は咄嗟にマシュの前に立ち塞がった―――それだけ恐ろしい気配が、眼前に居た。
羅生門の最後の最後に姿を現し、そして姿を消した鬼――アルトリア・オルタのように堂々と、ジャンヌダルク・オルタのように猛々しく、クーフーリン・オルタのように禍々しい反英霊。
蒼い炎を髪と両手から吹かし、ギラリと光る鋭い牙で笑みを浮かべ、呪い殺すと言わんばかりに目を見開くその鬼の名。
「大江山の
霊基パターン・
藤丸立香がぐだ男の並行世界でした。
茨木童子が出るイベント「羅生門」を改造しております。
続くかどうかは置いといて、読者の妄想を広げて楽しめればという思いもあって書きました。