【秩序/悪】な茨木童子(猫又付き)   作:ヤトラ

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茨木童子オルタは下総国という並行世界に存在する。

ここでも色々と悪ふざけを増やしてます(ぇ


そして縁は繋がる・吽

 昔、大江山に酒吞童子と茨木童子という鬼が住んでおった。

 

 二匹の鬼はとても強く、多くの鬼を自分の子分にして、それはもう沢山の悪さをしてきたそうじゃ。

 大江山の鬼の親分・酒吞童子は大層麗しい女子の鬼じゃが、人を攫い、宝を奪い、好き勝手に人を殺す、悪逆非道の限りを尽くす恐ろしい鬼じゃった。

 そんな酒吞童子が頼りにしとった鬼が茨木童子じゃ。気に入らん奴は青い鬼火で忽ち燃やして呪い殺す、これまた恐ろしい鬼じゃった。

 

 これを何とかしようとしたのは、源氏の棟梁・源頼光と、その四天王じゃった。

 じゃが変幻自在の酒吞童子と神出鬼没な茨木童子を退治することは叶わず、京都は鬼に怯える日々を送るようになってもうた。

 そこで源頼光は鬼を確実に殺す為に毒酒を用いて、大江山の酒吞童子と茨木童子を煽てて騙し殺す事にしたのじゃ。

 

 そして鬼が住まう城にて毒酒は振舞われ、鬼達はたちまち弱っていたのじゃが、茨木童子だけは嗤い続けておった。

 源頼光は嗤い続ける茨木童子の首を斬ったが、首だけになっても茨木童子は嗤っておった。それどころか、体から悍ましい呪いが溢れ出たのじゃ。

 

 たちどころに茨木童子の身体は巨大な骨の化け物となり、呪いをまき散らしながら京都へ襲い掛かりに行ってもうた。

 

 源頼光は首だけとなった酒吞童子と茨木童子に問うた。

 

「鬼共よ、あの巨大な骸骨をどうやったら止められるのだ」

 

 二匹の鬼はこう答えた。

 

「吾らを連れてある村に立ち寄れ。そこの者達ならあの呪いを祓えよう」

 

 源頼光は呪いの怪物を四天王に任せ、茨木童子の首を抱えて大江山を降った。

 大江山の麓にある村には、大勢の陰陽師や巫女がおった。全員が、茨木童子が情けで拾った捨て子で、茨木童子自らが邪悪を祓う術を授けたそうじゃ。

 

「大江山の村よ、京都を救うため、呪いの化け物を祓う手助けをしてくだされ」

 

 源頼光は茨木童子の首を授け、村の皆々に深く頭を下げて頼み込んだ。京都から捨てられた者達は首を横に振ろうとしたが、茨木童子はこう言ったそうな。

 

「村の者よ。京都は確かにお前たちを捨てたが、あそこには明日を生き抜く善良な者もおるのだ。どうか助けてやってはくれぬか」

 

 茨木童子様の頼みなら致し方ない。村の者達は、源頼光と共に京都へ駆け出した。

 

 京都の羅生門を乗っ取った大江山の呪怪は、人間達を苦しめ、頼光四天王らも歯が立たぬ程に強い呪いを持って暴れておった。

 やがて大勢の巫女を連れた源頼光が駆け付け、茨木童子の生首を掲げ、大江山の呪怪物に向けてこう叫んだのじゃ。

 

「大江山の呪怪よ、鎮まり給えー!」

 

 源頼光と茨木童子が叫ぶと、大江山の呪怪は「ぐぎゃー」と叫んで苦しみだした。

 その隙に巫女達がお祓いし、大江山の呪怪は忽ち小さくなり、やがて綺麗さっぱり消えてもうた。

 

 こうして呪いの怪物は退治られ、京都は救われたのじゃった。

 

 源頼光は己の所業を悔やみ、呪怪の恨み辛みを清める為の社を建て、人を騙し欺く事の愚かしさを説いたそうな。

 大江山の村々は茨木童子と酒吞童子の為に社を建て、人々の恨み辛みを受け止め清めてくださる鬼神として大事に奉り、夜は如何に恐ろしい世界かと日本に知らしめたのじゃ。

 

 夜を恐れなさい。妖怪変化を恐れなさい。奴らには奴らの掟がある。茨木様の掟があるのじゃ。

 

 

 

▼▲▼▲

 

「———これが茨木様(・・・)の伝説だよ!」

 

 「爺様の爺様から受け継がれたお話」を語り終えた少女……おぬいちゃんはそう言った。

 話し終えて喉が渇いたおぬいちゃんは、丁度すぐそこを流れている小さな川に駆け寄る。すぐそこだから大丈夫だろうと思い、私こと藤丸立香は二人に聞く。

 

「二人とも知ってる(・・・・)?」

 

 茨木様なんて言う(・・・・・・・・)平安時代から続いている御話(・・・・・・・・・・・・・)を。

 

「知らないわ」

 

「拙僧もだ」

 

 二刀流の女剣士・宮本武蔵は首を振り、この世界で初めて出会った槍兵のサーヴァント・宝蔵院胤舜さんは肩を竦める。勿論私も知りません。

 

 人理継続保証機関カルデアのレイシフトを用いることなく、唐突かつ強烈な眠気に襲われたと同時に、この江戸時代の日本に迷い込んでしまった。

 迷い込んで早々、単独で世界と時代を巡れる謎の体質を持った(無理やり捻り込む説明口調)武蔵ちゃんと出会えたのは幸運だったが、その後は色々あったよ。おぬいちゃんとその弟の田助と出会い、急に曇ったかと思えば化け物が出てきて、英霊が呼べなくて困ってた所を胤舜さんが助太刀に来てくれて。

 

「しっかし、話を聞くにこの時代はまっこと奇怪な出来事が増えておる様子」

 

 流石の拙僧も混乱してきたぞ、と禿頭を掻く胤舜さん。私だって掻き毟りたいよ、こんな現状。

 

「とりあえず化け物が出る云々は置いとくにしても、一筋縄じゃいかないわねぇ。そもそも―――」

 

 胤舜さんの真似をするように反対側の手で頭を掻く武蔵ちゃん。いや化け物が出る云々は置いといたらいけないだろうけど、カルデアでは普通なので……。

 それよりも気になることがあるのは三人とも思っているらしく、顔を見合わせて言葉を紡ぐ。

 

「「「茨木様って何?」」」

 

 そう、それが一番の謎だ。

 

 少し前……おぬいちゃんと田助の姉弟と出会って直に辺りが暗くなり、魑魅魍魎が現れた時。

 

『茨木様、茨木様、どうかお祓いくださいませ……!』

 

 おぬいちゃんはそう唱えて札のような紙を取り出すと、亡霊程度のエネミーを退ける結界が私達を包んだ。玉藻の前やメディアさんと言った本格的キャスターには大きく劣る粗末な物だけど、確かにあれは対魔の結界だった。

 けど大きな武者みたいな化け物相手には効かないだろうと、武蔵ちゃんが刀を構えたんだけど―――横から大武者をも超える大鬼が現れ、金棒を振り下ろしてぶっ飛ばしたのだ。

 他にも大小様々な「鬼」と言える化け物達が次々と現れ、唖然としている私達を他所に亡霊系エネミーへ殴り込んだ。そういえば奴らはこう叫んでいた。

 

『おのれ、おのれ! 余所者の魑魅魍魎どもが!』

 

『勝手に昼を夜にしやがって! 化物の掟を無視するんじゃねぇ!』

 

『構うこたぁねぇ! 茨木様の掟を叩き込んでやれぇ!』

 

 鬼達は何やら凄い剣幕で怒っていた。そんな亡霊VS鬼の大乱闘に巻き込まれそうになった私達に助力してくれたのが胤舜さんだ。

 鬼達は決して私達の味方ってわけじゃなさそうだけど、おぬいちゃんが「鎮まり給え、鎮まり給え」と数珠を鳴らしながら唱えている間、鬼は私達を襲うことはなかった。亡霊は襲ってきたから武蔵ちゃんと胤舜さんが戦ったけど。

 

 やがて亡霊を全て退治し、何事もなかったかのように昼間に戻ると、鬼達は煙のように消えていき。

 

『人間共、夜に気ぃつけろ』

 

『人間共、強ぇからって侮るんじゃねぇ』

 

『何かが起こってやがる。茨木様が動こうとしている』

 

 そう言い残していった。おぬいちゃんは「茨木様が。茨木様が出る」と怯えっぱなしで、私達で宥めてようやく収まった程だ。田助くんは寝てた……図太い奴。

 収まったといっても、私達が茨木様を知らないと聞いて驚いたからだ。だから茨木様の伝説を延々と話していたんだけど、あれって話の内容的に……。

 

「茨木様って、茨木童子の事?」

 

 傲慢そうでチキンな、洋菓子と酒吞ちゃん大好きな鬼っ娘の姿が脳裏に映る。

 

「でしょうねぇ。話の内容も、私が知る源頼光の話に似ているし」

 

「拙僧も幾ばくか知っておるが、あのような話では決してなかったはずだが?」

 

 話し出したら切りがないし、そろそろおぬいちゃんが戻ってくるだろうから要点を纏めると。

 

壱.この時代には鬼や妖怪が当たり前におり、おぬいちゃんでも手作りできる呪符や御経を人々が扱える。

 

弐.茨木童子が「茨木様」と呼ばれる大妖怪だと伝えられている事(しかも今も尚実在しているらしい)。

 

参.さっきの亡霊は、この時代とは全く関係のない所から現れている。

 

「……私も色々な時代を巡ってきたし、並行世界な日本に迷い込んだ事あるけど、ここ程の魔境は他にないかもねー」

 

 お手上げ侍でござる、と万歳する武蔵ちゃん。カルデアにとって魔境は御馴染みだけど、これは酷いなぁ……。

 少なくとも鬼は無闇に私達を攻撃するつもりはないし、おぬいちゃんは簡素とはいえ結界で身を守れるってのが解っただけでも上等かな。

 

「なんにしても気を引き締めんとならんな。拙僧が召喚早々に感じた嫌な予感もある」

 

 忘れがちだけど、いつの間にか香取神宮って敷地に召喚された胤舜さんの事も、そんな彼が感じたっていう嫌な気配の事もある。

 謎が謎を呼ぶって奴だ。英霊が召喚できない現状や物の怪の事もあるけど、武蔵ちゃんと胤舜さんが居てくれれば少しは頑張れそうだ。

 

 

▼▲▼▲

 

 そう思っていた時期が私にもありました。

 

「どうぞ、お見知り置き戴きたい。我ら六騎、この世を地獄に変えんがために現界せし六騎にあります」

 

 本物の夜が突然訪れ、赤い月と共に私達の前に現れた恐るべき者が六騎。その内の肉食獣じみた男———キャスター・リンボがそう名乗った。

 誰も彼も血を被ったかのような強烈な臭いを放ち、悍ましいまでの悪意と殺意を抱き、中には私が知る英霊までも居るが面影が全くない。

 

 酒吞童子ちゃんはいつも通りに見えてより強烈な殺意を見せ、優しかった頼光母さん(つい呼んじゃったけど、喜んでたしそのまま母さんと呼んでる)がいつも以上の狂気を醸し出している。

 胤舜さんと同じサーヴァントだとしても、これ程までに悪意に染まり、強大な力を宿しているなんて。カルデアのサーヴァントも満足に呼び出せない以上、これは絶体絶命と言ってもいいだろう。

 

 そんな時だ。

 

 

『気に食わぬ、気に入らぬ!』

 

 

 蒼い炎が突如として英霊剣豪なる悪鬼を取り囲み、下手をすれば玉藻の前以上の呪術を持って彼らの動きを封じ、苦しめた。

 それだけじゃない。いつの間にか周囲を、先程よりも大勢の鬼達が取り囲み、六騎に襲い掛かる。戦闘力では英霊に劣るが、切っても切っても切りがない数の多さだ。そしてやはりというか、鬼は私達など眼中に収まっていない。

 おぬいちゃんは田助を抱きかかえて決死の覚悟でお経を唱え、武蔵ちゃんと胤舜さんは鬼の集団をすり抜けて襲い掛かる英霊剣豪を食い止める。私もどうにか英霊を呼び出せれば……!

 

「おのれおのれオノレェェ! 茨木様(・・・)などという(・・・・・)異分子風情が(・・・・・・)! なぜ我らの邪魔をするかァァ!」

 

 キャスター・リンボの絶叫が轟く。それを埋め尽くす鬼の雪崩が怒号と共に襲い掛かり、蒼い炎のような呪いが降り注ぐ。

 

「なんか知らないけど好都合! 乱戦に混じって手傷を負わせ、逃げる時間を作ってみせる!」

 

「立香、おぬいと田助を守ってやってくれ! 拙僧らは汝らの道を切り開いてみせようぞ!」

 

 流石と言うか、武蔵ちゃんと胤舜さんが発破をかけようと乱戦に入り混じる。いや、果敢に挑む気力が無ければ、あの英霊剣豪って連中に勝とうなど到底無理だと判断したのだろう。

 何にしても、おぬいちゃんと田助を放っておけなくて下手に動けない。そう思ってたら目の前を何かが横切った―――紺の甚平を羽織った、二本足の猫?

 

「斯様な悍ましき悪霊と凛々しき武人が争う中、迷わず子を抱き身を挺して守るとは、貴殿も中々豪胆な女子の様子」

 

 虎猫が喋った。それだけじゃなく、おぬいちゃんの手作り呪符とは桁違いの呪符が虎猫の袖から乱舞し、英霊剣豪の余波を遮断する。

 

 この猫はサーヴァント……じゃないよね。それに、さっきの声……。

 

「この執拗具合からして、彼奴等の狙いは貴女様の命のようですな。であるならば小生らの敵は汝らの敵、お互い敵対する理由がありませぬな」

 

 いくら強力な結界が貼られて一安心とはいえ、武蔵ちゃん達と英霊剣豪の余波が次々襲ってくるんだから怖いんだけど。なんでそんな余裕なん?

 

「なんでそんな余裕なのか、と言わんばかりの顔をしてますな。故に応えよう」

 

 見抜かれた。虎猫は手綱煙管を持って何かを差す。そこは青い炎に混じって酒吞童子……忌み名・衆合地獄へ執拗に攻撃する……鬼?

 見覚えがある。赤い龍の模様が綺麗な黒い着物に見慣れない棍棒みたいなのを振り回しているし、蒼白い髪をしているが間違いない。あの子は―――。

 

 

 

「大江山の呪怪(しゅかい)がおられる。全てはこの世の物ならざぬ悪を滅する為に」

 

 

 

 これが藤丸立香と武蔵ちゃんの奇妙な縁……仮称『化け猫のキャスター』及び『下総のアヴェンジャー』との出会いだった。

 

 

 




藤丸立香がぐだ子の本当の世界でした。
「下総国は異聞帯説」を採用し、異聞帯の英霊として召喚可能になるよう仕向けました。

基本的にはこの話から更新を考えております。
後は筆休めにマイルームボイスやイベント小話などを織り交ぜたり。
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