川越シニアは今日も全国大会に向けて練習中だ。
「あの、朱里先輩……」
柔軟を終わらせて走り込みに行こうと思っていたら、初野に声を掛けられた。何か用事だろうか?
「どうしたの?」
「ちょっと相談したい事があるんですけど……」
「私に?」
どうやら私に相談事があるみたいだ。金原や二宮じゃなくて、私を頼ってくれているみたいだし、無下には出来ないね。
「私で良かったら聞くよ」
「ありがとうございます!ここじゃなんですので、ちょっと場所を変えましょう」
「了解。じゃあ監督に外周に行ってくる事を伝えるから、走りながらでも良いかな?」
「あっ、はい!私事で些細な内容なのに、練習を休止する程の事でもないですし、それでお願いします!!」
私に話し掛ける前は落ち込んでいるような雰囲気だったのに、今ではもうすっかりいつも通りの元気印女子に戻ったね。
外周する事を監督に伝えて、私はランニングしながら初野の相談に乗る。
「……それで?相談って何かな?」
「最近ちょっと視線を感じるんですよね……」
し、視線……?
「そ、それってかなり危なくない?大丈夫?」
初野って人当たりが良いし愛嬌もあるから、男子からかなり人気があるみたいなんだよね。だからそれに関連する視線だとちょっと大事になりそうなんだけど……。
「い、いえ!そういうのじゃないのはわかるんですよ」
「そうなの?」
「はい。視線を感じるタイミングはいつも一定で、決まって私が守備練で打球を捕った時なんです」
なんか凄くピンポイントなタイミングだね……。しかも一定なんでしょ?
「……それに視線の正体もわかるんです」
「えっ……。そこまでわかるの?」
「私を見ているのは翠ちゃんと茶来先輩なんです……」
赤松と茶来かぁ……。初野が視線を感じるのが捕球するタイミングで、その2人が視線の主となると……。
「同じポジションの2人で捕球方面が初野より劣るから、それ故の嫉妬……なのかな?」
「私の自惚れじゃなかったら、そうだと思うんですよね……」
「成程ね」
「しかも2人共打撃練習になると、私の方を勝ち誇った顔して見てくるんですよ。打撃方面が苦手だってわかっているから……」
「成程ね……」
ライバル意識を持たれてるって事なのかな?初野を含めた3人はメインのポジションがセカンドだし、その3人なら初野が打撃方面で1番劣っているから……。
「でもライバル意識を持たれてるっていうのは決して悪い事じゃないし、私がそれを監督とかに伝えて大事になっちゃうと、あの2人が今後球団に居辛くなるでしょうし……」
あの2人の被害にあってる初野の方があの2人よりも大人なのは何なの?初野を見習った方が良いんじゃないの?
「翠ちゃんの方は私が月ちゃん達にそれとなく言ってみます。それで多分何かしら解決するかもですけど……」
「問題は茶来の方か……」
彼女、何故か私の事を凄く凄くライバル視してくるんだよね。同じチームだし、ポジションも違うし……。というか茶来はもう引退するんだから、後輩に迷惑を掛けるんじゃないよ!
「でも吐き出したらなんかスッキリしました。こういうのって聞いてもらえるだけで、気分が楽になるんですね!」
「……えっ?それって解決って事で良いの?私はただ話を聞いてただけだよ?視線の事はどうするの?」
「それだけでかなり救われた感じがします!視線はなるべく気にしないようにします!翠ちゃんとは仲良くやっていきたいですし!」
何気に茶来の事をスルーしたね。もう引退だから、大して気にする必要はないんだろうけど……。まぁ初野自身が既に大丈夫そうだし、余計な事をするのは野暮ってやつかな。
「それじゃあサクッと走り込みを終わらせようか」
「はいっ!!」
こうして初野の視線問題は解決……したのかは疑問だけど、幕を閉じた。
後日、初野と赤松が仲睦まじそうにしている光景が見えた。これは初野のコミュニケーション能力の高さがそうさせてるね……。
金原いずみの藤和生活……(藤和高校野球部の登場人物は全てオリキャラ及び他作品キャラになります)見たい?
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