最強のスラッガーを目指して!【本編完結】   作:銅英雄

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雷轟遥の実力

私達は着替えを終えて、グラウンドに戻る。

 

「朱里のそれ、何処の練習着なんだ?」

 

「そういえばまだ朱里ちゃんの出身中学を聞いてなかったね。何処の中学?」

 

あの、なんでいきなり質問責め……?やっぱりシニアの練習着を持ってきたのは不味かったかな。次からはこの学校の練習着を貰えるし、もう2度と着ない……。

 

「えっと……。中学は仙波中学です。野球部には所属しておらず、川越リトル、川越シニアで合計6年間やってました」

 

『か、川越リトルシニア!?』

 

ああ……。やっぱり知ってる人はそんな反応になるよね。この場で反応していないのは武田さんと息吹さん、大村さん位かな?中村さんもポカンとしてるけど……。あと雷轟は例外。

 

「川越リトルシニアって埼玉県で1、2を争う強豪リトルシニアじゃないか!」

 

「うぅ……!なんでわからなかったんだろ私。一生の不覚!」

 

「そんな強い所からどうしてここに……?」

 

「まぁそれは色々ありまして……」

 

私が言いにくそうにしていると主将が何かを察したのか、皆を落ち着かせる。

 

「ねぇタマちゃん、その川越シニアって強いの?」

 

「強いなんてものじゃないよ!去年のシニアで全国優勝しているチームで、主力メンバーは軒並み県外の強豪校からスカウトが来る人達ばかりで……。もしかして朱里ちゃんもその中の1人なんじゃ……?」

 

な、なんか私に注目が集まっている!?中村さんも全国優勝と聞いてこっち見てるし!

 

「わ、私の話は後にしましょう!今はとりあえず中村さん、大村さん、雷轟のバッティングを見ましょう!」

 

まさか新越谷に来てまでシニアの話を聞くとは思わなかった。川越と新越谷は名前が似てるような気がするだけの別チームです!

 

 

~そして~

 

中村さんが左打席でバットを構える。

 

「お願いします……」

 

「じゃあお手並み拝見といくかぁ!」

 

マシンの球速設定は県内最速と言われている久保田投手に合わせてあるらしい。これは川崎さんが中村さんに度肝を抜かせる為にしたんだとか。しかし結果は……。

 

「すっ、凄いじゃない中村さん!」

 

「別に……。バッセンで慣れとーけん」

 

十数球全て芯で捉えていた。確かにこれは凄い。かなり高いミートを持っている。雷轟にも見習ってほしいくらい……。

 

「中村さん!中学は何処のチームだったの!?」

 

「箱崎松陽。福岡……」

 

は、箱崎松陽だって!?全国常連のチームじゃん!本当に色んな所から選手が来てるんだなぁ……。

 

「道理でチェックリストにいない訳だよ!」

 

「驚いたな……。朱里と言い、うちがまた越境組を取っていたとは……」

 

「いや、私は別にスカウトでこの学校に来た訳じゃないです……」

 

私の否定は誰の耳にも届かず、中村さんがポツポツと話す。

 

「本当は全国目指せるとこで野球したかったっちゃけど、ここの野球部の事をよく調べんで入ったけん入部する気は……」

 

私達も特に調べずに入ったけどね。野球が出来れば最悪クラブチームか草野球でも良かった訳だし……。まぁそれからは誰と野球するかわからないって事で色々調べた。皆の事がわかるのもそれのお陰。

 

「中学の皆と約束したのに……全国大会で会おうって」

 

「全国……」

 

(このチームじゃ現実感ないわね)

 

全国か。埼玉は女子野球の強豪が滅茶苦茶集まっているからなぁ……。果たして私達がそこに届くのか。

 

「ガールズで全国経験のある珠姫はどう思う?」

 

「私に振らないでくださいよ……」

 

(全国!?この子が?)

 

「ここは参謀の芳乃ちゃんが」

 

「う~ん。このチームのレベルは2人が入ってくれたとして……」

 

芳乃さんが考える素振りを見せると私の方を向く。えっ?何?

 

「やっぱりここは全国優勝経験がある朱里ちゃんに答えてもらおうかな?」

 

なんで……?今完全に芳乃さんが答える流れだったよね?中村さんが全国優勝経験と聞いて目を輝かせながら私の方を見ているし……。

 

「……正直に言って良いの?」

 

「うん!」

 

「お願い!」

 

うおぅ……!中村さんと芳乃さんが同時に私の目の前に。

 

「……対戦相手やシード校の配置、私達がトーナメントでどの山に当たるかによって変わってくるけど、ベスト8はいけると思うよ」

 

「ベスト8……!」

 

(えっ……。そんなに!?)

 

「またまたぁ」

 

「それは相手を舐めすぎじゃないかしら?」

 

「ううん、これは私の素直な意見。全国経験のある美南ガールズ出身の山崎さん、走攻守三拍子揃っている荻島ガールズ出身の岡田主将、全国常連箱崎松陽出身の中村さん、地区内5強の南相模出身の藤田さんと川崎さん……。これだけ強力な面子が揃っていればこれから私達が得られる経験値次第で全国出場もいけると私は思っているよ」

 

私が長々と語ると皆は目を見開いて私を見ていた。あれ?私何かやっちゃいましたか?

 

「……朱里、凄く詳しいんだな」

 

「……どのような環境で野球をするかわからなかったので、ある程度の情報を握っていないといけないと思い色々調べただけですよ」

 

「いや、それがスゲーんだって!」

 

「朱里ちゃんの言う通り!3ヶ月みっちりと練習して、運も良かったらの話だけどね」

 

(なんでかいな。この子達は信用出来る気がする……)

 

「じゃ、じゃあ1年後はどうなるかいな!?優勝出来るっちゃないと!?」

 

「そ、そんな先の事まではわからないかな……」

 

「その辺りは他校の事情も変わるだろうしね」

 

中村さんが私と芳乃さんに来年の事を聞いている間に大村さんの順番が回ってくる。

 

「大村さんは初心者だったわよね。スイングとかは大丈夫?」

 

「はい、一応。お願いします……」

 

大村さんの初球はフェンスに直撃。球場によってはホームランの当たりだった。

 

「バットに当たりました!凄く良い感触……」

 

「嘘……」

 

「当たったってもんじゃないわよ!」

 

「白菊ちゃん凄ーい!」

 

(今の感触を忘れない内に……!)

 

「次、お願いします!」

 

しかし続けてみると空振りしか取れず、さっきのは完全なマグレだった。

 

(あの光景、初めて雷轟をバッセンに連れて行った時の事を思い出すね……)

 

「思い出した!大村白菊さん!道場の娘で、剣道の全国優勝とかでテレビで見たわ!」

 

そうか……。どこかで見たと思ったら剣道の全中で全国優勝したんだった。まぁその番組を見たのは偶然だけど、そんな子まで入っていたとは……。

 

そして大村さんは元々野球をしてみたかったらしく、厳しい家の条件である剣道で1位を取ったらという約束を勝ち取り高校から野球をするみたいだ。

 

「白菊ちゃん、希ちゃん!私は投手なんだ!」

 

武田さんは例の魔球を投げて、中村さんと大村さんに打撃で援護してほしいと告げた。そして……。

 

「あああああっ!思い出した!!」

 

突然雷轟が私の耳元で叫ぶ。煩いな……。

 

「ヨミちゃん、私としょ……」

 

「はいはい。マシン打撃、次は雷轟の番でしょ。皆に見せ付けてやりな」

 

「むぅ~!」

 

「むくれても駄目」

 

不貞腐れている雷轟を打席に立たせる。この感じだと明日になったら忘れてそうだけど……。

 

「遥ちゃんも左打ちなんだ!?」

 

「私、実は両打ちなのです。えへん!」

 

「雷轟には左投手相手に右打ちにするように教えてあるよ」

 

「朱里ちゃんが遥ちゃんにバッティングを教えていたの?」

 

「基本的な構えだけね」

 

「凄く様になっているな……」

 

(でも前に見た時と構えが変わっている……?また何かに影響されたな?)

 

マシンが球を投げると雷轟は片足を上げる。

 

『一本足打法!?』

 

「はぁっ!!」

 

雷轟のスイングでボールは大村さんが飛ばした飛距離とは比べ物にならず、空の彼方に飛んでいった。というか……。

 

「雷轟。あれ程飛ばしすぎるなと言っていたのに、なんで場外まで飛ばすかな?ボールは有限なんだから勿体無いって前に言ったよね?」

 

「そ、それは張り切り過ぎちゃって……」

 

「じゃあ次、なんで一本足打法?今度はどっちに影響された?」

 

「22世紀の……」

 

「よりによってそれか!?せめてパライソの方にしなさい!」

 

私は雷轟に説教をかまして、次からの数十球は大村さんと同じくらいの飛距離で抑えてくれた。

 

その光景を見て固まっている皆を代表して主将と芳乃さんが私達に話し掛ける。

 

「は、遥も凄いな……」

 

「これは文句なしの4番でレギュラーだよ~!」

 

「本当!?」

 

主将と芳乃さんに褒められて雷轟が嬉しそうにしている。というかあれは有頂天になってるな?はぁ……。

 

「主将、芳乃さん、その判断は雷轟の守備を見てからにしてください」

 

「えっ?どうしたんだ?」

 

「見てればわかります。雷轟、ノックするから構えて!」

 

「よっしゃこーい!」

 

何処からその自信が出てくるのやら……。

 

「まずは簡単なゴロからね」

 

比較的優しいゴロを打つ。あの時の雷轟はこれの処理にもたついていたけど、身体が出来ているから楽に処理出来る筈……。

 

「見えたっ。はいっ!」

 

しかし雷轟は綺麗なトンネルを晒す。

 

「今何が見えたの?雷轟がトンネルする未来?……じゃあ次は弱いフライね」

 

続けてフライを打つ。これも簡単に取れる筈なんだけど……。

 

「見えたっ。はいっ!」

 

これを雷轟はバンザイして球はそのまま落下。

 

「今度は何が見えたの?雷轟がバンザイする未来?」

 

「あはは……。あの時と一緒だね!」

 

「いやいや、身体が出来ている分あの時よりも酷いからね?」

 

これを見て全員苦笑い。そりゃそうだ。

 

「こ、これは流石に守備を鍛えないとな……」

 

「だ、代打なら大活躍だよ!」

 

「うう……。2人のフォローが辛い」

 

「いや、フォロー貰えるだけマシだからね?これがもしも強豪校だったら雑用要員だからね?」

 

雷轟の茶番が一通り終わり、中村さんと大村さんが入部して、部員は芳乃さんを含めて12人になった。そしてこのメンバーで全国を目指す決意をした。

 

「白菊ちゃんと遥ちゃんには絶対に負けんけんね!!」

 

「えっ!?」

 

「私も負けないよ!」

 

あと中村さんが大村さんと雷轟を物凄くライバル視していた。バッティングスタイルが真逆だからなのかな?あと雷轟は大会までに守備を徹底させる。




雷轟遥の守備面をパワプロ風に表すと守備がF、捕球がGといった感じ。

その代わり弾道4のパワーS。走力と肩はそこそこに、ミートは並よりも少し低い程度。でもバットコントロールは抜群。

……これは凄い矛盾。

金原いずみの藤和生活……(藤和高校野球部の登場人物は全てオリキャラ及び他作品キャラになります)見たい?

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