時は遡り前日の練習終了後……。
「う~ん……」
「芳乃さん、どうかした?」
芳乃さんが唸っていたので、声を掛ける。
「あっ、朱里ちゃん。明日の試合の打順を考えてるんだよ」
「ふむふむ。それなら私も手伝うし、主将と藤原先輩も呼んで4人で考えようか。先輩達の意見も聞きたいし」
「良いの!?」
「芳乃さんの邪魔にならなければ……だけどね」
「邪魔なんかじゃないよ!ありがとう!」
ツインテールをぴこぴこさせている……。最早あれに慣れてしまった私がいる。
~そして~
先輩達と合流して、打順を決める。
「1番はミートがあって、パンチ力がある希ちゃん!」
「まぁ妥当だな」
「バットコントロールはうちで1番だしね」
うちのチームで現状1番が出来るのは他には主将と山崎さんくらいかな?
「2番は安定したプレイが出来る藤田さんかな?」
「意義なし!それで3番は……」
「1番が中村さんなら3番は山崎さん、4番に主将ですね」
「4番ね。怜、頑張って!」
「ああ」
4番まではサクサクと決まっていく。しかし……。
「順当なのは正直ここまでかな……」
「どうしたの?」
「5番からどうするか……。いや、5番と6番は川崎さんか藤原先輩のどちらかで良いんだけど……」
「普段の練習でのバッティングの成績を考えると5番稜、6番理沙だな」
「あらあら、クリーンアップ取られちゃったわね」
私としては逆でも全然問題ないとは思っているけど……。
「じゃあ5番と6番はそれで…………」
「芳乃さん?どうしたの?」
「朱里ちゃん、遥ちゃんってスタメンに入れるなら何処を守らせるのが良いと思う?」
えっ?何故そのような……。そういうのは芳乃さん既にわかっているものばかりだと。
「私の見立てだと雷轟の適性ポジションは外野と、あとはサードかな……?今の段階で雷轟にサードを守らせる場合はショートとレフトには雷轟のカバーが必要になるけど」
「う~ん……。それならレフトとかはどうかな?」
「まぁサードよりかは可能性あるけど、私としては初心者組の中で守備が上手い息吹さんを置きたいかな……」
だって今日の練習でも雷轟は要所でポロポロしてたし……。あんなだと1度ボロを見せたら狙い打ちされる事確定だし。
「でもあの打撃は使わなきゃ勿体無いよな……」
「そうね。長打力は白菊ちゃんをも上回り、白菊ちゃんが5球に1球ホームランなのに対して、遥ちゃんは5球中5球ホームランだもの」
確かに私も使わなきゃ勿体無いとは思っている。けど柳大川越は夏に当たる可能性があるから、雷轟の打力は隠したいという気持ちもある。どうしたものか……。
「とりあえず7番は武田さん。本来なら彼女にはピッチングに専念してほしいから9番にしたいけど、この練習試合では初心者3人をメインに使っていきたいからね」
「ちょっ、ちょっと待って!その言い方だと朱里ちゃんはベンチスタートだけど良いの!?」
「さっきも言いましたが、練習試合では初心者3人をどんどん使っていきたいと思っています。練習試合の目的は何よりも彼女達のレベルアップだと私は思っていますので……」
「朱里ちゃん……」
実際先生は全体のレベルアップが目的で組んできてくれていると思っているけど、私としては初心者を経験者レベルまでに仕上げていきたいという思惑もある。
「う~ん……!よし!8番と9番は明日発表する!」
芳乃さんは今日中に結論は出ないと踏んで明日に発表する事を決めた。
(芳乃さんをここまで悩ませるとは……。雷轟、君は私が思っているよりも皆に認められているんだね)
「決まったら3人に送りますね!」
「わかった。じゃあ今日は解散!」
主将の一声で私達はそれぞれ帰路についた。
そして現在。
(芳乃さんが考えたオーダーなんだ。決して間違いはないだろうけど……)
なんか不安というか嫌な予感がするというか……。
「よーし!頑張るぞーっ!!」
雷轟の気合いも空回りしないと良いけど。
「キャプテン、何か掛け声を」
「ああ」
武田さんが主将に掛け声をお願いしている。主将もこういうノリには乗るタイプのようだ。
「コホン……。新越、絶対勝つぞ!!」
『おーっ!!』
うちの先攻で試合が始まる。
『1番 ファースト 中村さん』
おお、ウグイス付きなのか……。
大野さんは左投げで、右から放たれるクロスファイヤーが特徴的。だけど……。
カンッ!
「なにーっ!?」
中村さんはこれを初級打ち。外野がやや浅めに守っていた為、三塁打。
「ないばっち!」
『2番 セカンド 藤田さん』
ノーアウト三塁。セオリーだとスクイズを狙いにいく場面。
(スクイズでもやる?)
藤田さんがこちらを見ている。スクイズをやるかを確認しているのだろう。
(内野はほぼ定位置……。1点はくれる感じだけど、点どうする芳乃さん?)
(施しを受けるつもりはないよ!)
(つまり強行だね?)
(その通り!浅いフライと三振以外でお願い!)
(わかったわ)
大野さんはこっちがスクイズをする可能性があるにも関わらず、外す様子はない。
(それなら藤田さんには次で決めてもらおう)
2球目、藤田さんは打ち上げてしまったが、犠牲フライには十分。まずはこっちが1点先制!
「希ちゃん、ナイスバッティング!」
「菫ちゃんはナイス最低限!」
「それは褒めているのかしら……?」
『3番 キャッチャー 山崎さん』
(こんな訳のわからないチームにたった3球で1点取られた……)
山崎さんへの1球は……!
「タマちゃん!?」
死球。大野さんは帽子を取って謝罪する。
「大丈夫」
山崎さんはなんともないようだ。良かった……。
『4番 センター 岡田さん』
(……そういえばこの学校、暴力沙汰で停部になってたんだっけか。怖い怖い)
続く主将も初球で捉えて二塁打。
「やった!流石キャプテン!」
「これで二・三塁ね!」
『5番 ショート 川崎さん』
「よっしゃ!私も続くぜ!」
更に川崎さんも初球打ち。浅いフライだったけど、外野が追い付いておらず、ポテンヒットで2点追加。
「稜ちゃん、ナイスポテン!」
「うっせー!」
その後川崎さんが盗塁を仕掛けるも、浅井さんの強肩の前に刺される。
「しまった!浅井さんの肩を忘れてた……」
「ちょっと不用意だったかな?」
「それにしてもなんて肩……」
二盗阻止で大野さんは立ち直り、藤原先輩を三振に切って取った。
(とはいえ3点リード……。まだ下位には大村さん、雷轟とパワーだけなら4番を任せられるバッターがいる)
朝倉さんが出てくる前に1点でも多く取っておきたい。うちの守りは主にレフトに難ありなんだから。
グラウンドの後ろで試合を見ている2人の少女……。
「浅井の肩は流石だな。生半可な盗塁を許さない」
「それに大野さんを上手く立ち直らせましたね」
「柳大でも4番を打っているし、良い選手だよ浅井は。……それよりも、おまえの目的の選手はスタメンにいないみたいだな」
「……彼女がスタメンにいないという事は指揮官を担当しているのでしょう。シニアでも彼女が投げない時は監督に変わって選手達を動かしていましたから」
「それは凄いな……。そんな凄い奴がこの試合投げる可能性はあるのか?」
「それは新越谷の投手次第でしょう。武田さんという投手、見た事がないので無名で間違いありませんが、何かありますね」
「シニア最強の投手と言われた彼女よりも上だとは考えにくいが……」
「それはこの回でわかるでしょう」
(武田詠深……。マウンドにいるという事は朱里さんの目に敵った実力を持っている筈)
「見せてもらいますよ。朱里さんが認めた投手の実力を……」
2人の内の1人は早川朱里の元チームメイト。この試合で武田詠深の実力を計るようだ。
金原いずみの藤和生活……(藤和高校野球部の登場人物は全てオリキャラ及び他作品キャラになります)見たい?
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