『いただきまーす!』
「いっぱいあるからゆっくり食べてね」
今日の練習が一通り終わって食事の時間。芳乃ちゃんの作ったご飯美味しいよ~!これはお箸が止まらない!
「ヨミ!後で夜の学校を探検しようぜ」
「良いね~!」
「あっ、私も行く~!」
「わ、私もお供させていただきます!」
稜ちゃん主導で私、ヨミちゃん、白菊ちゃんと夜の学校を探検する事に。こういうのってなんかワクワクするね!
「寮が隣にあるから静かにね。それと明日もあるし、自主トレする人は程々にね」
『はーい!』
「あれ?先輩達は?」
「先刻出て行かれましたよ」
「そういえば朱里もいないわね。先輩達と一緒かしら?」
本当だ。食べるのに夢中で気付かなかったよ……。
「……こんな感じかしら?」
「そうですね。あとは足をもう少し上げて……」
「こう?」
「大分良い感じになりましたね。これを安定させたら投球も自ずと良くなります」
「ありがとうね朱里ちゃん。私の自主トレに付き合ってくれて」
「気にしないでください。私も投手の練習メニューがありますし、藤原先輩に教える事で自分の投球フォームの見直しも出来ますし」
食事を程々に取っていると藤原先輩に投手の練習に付き合ってほしいとお願いされたので、断る理由もないし受ける事に。
「それにしても朱里ちゃんって珠姫ちゃんよりも凄い環境で野球してたのね」
「まぁ私が川越リトルシニアに入ったのは偶然ですけどね。……お陰で今の私がありますし、良かったと言えば良かったのかもしれません」
「こんな所にいたのか2人共……」
主将が私達に声を掛けてきた。私達を探していたのかな?
「怜……。よくわかったわね。ここなら誰も来ないと思ったんだけど」
確かにここって余り人が通らなさそう……。しかも夜だからなんか霊的な何かが出そうな雰囲気もあるし。
「ここってアレだろ?出るって噂が……」
「あんなの信じてるの?可愛いとこあるじゃないの」
「し、信じるかそんなもの!」
冗談で思ったつもりだけど、本当にそんなのあるんだ……。
「それよりも2人で何をやってたんだ?」
「朱里ちゃんにフォームのチェックをしてもらってたの」
「ああ、朱里は本職の投手だもんな」
「しかもエースだったんですって?」
「……一応ですけど」
な、なんか持ち上げられると恥ずかしい……。
「でもどうして自己紹介の時に外野って言ってたんだ?」
「……芳乃さんにも同じ事を聞かれました。私が外野をやっているのは足腰と肩を強くする為です。あとは課題でもあるスタミナを付けるのも目的としています」
だから私のポジションが外野って言ったのも別に嘘は吐いてないんだよね。
「……それにしても今の状況は去年を思えば考えられないな」
「ふふっ、自主トレをしてたら先輩達に怒られてたものね……」
「それって例の……」
「……ああ。でも諦めないで良かったよ。ありがとう、一緒に残ってくれて」
「どういたしまして」
イイハナシダナー。あとそれ私が聞いても良かったんですか?
「……でも私はちょっと違うかな。もちろん新チームで野球が出来て嬉しいけど、私が残ったのはもっと自分勝手な理由から」
「……というと?」
藤原先輩がこの野球部に残ったのは主将がいたから……という理由で、最終目標は主将を越える事だった。藤原先輩って案外野心家だな……。
「しっかし藤井先生は只者じゃないな。苦手な打球ばっかり寄越しやがって……」
「私なんてエース陥落の危機だよ。朱里ちゃんが私の事をエースって言ってくれてたのに……」
「その朱里さんが凄い球を投げますからね」
「うんうん、朱里ちゃんの球は誰にも打てなかったもんね!」
「流石元シニアのエースって感じだったぜ。希もキャプテンもバットに当てられなかったもんな……」
私達は今夜の学校を探検しています!こういうのって楽しいよね!
「しっ……。何か聞こえます」
「白菊ちゃんって悪霊退散とか出来そうだよね」
「確かに出来そう……」
「出たら頼むぞ……」
おおっ!白菊ちゃん頼もしい!
「怜先輩ですね」
「「ひっ!霊!?」」
「そっちじゃねぇよ!岡田の方だよ!」
「なーんだ……」
「一瞬本当に出たのかと思っちゃった……」
べ、別に怖い訳じゃないよ?本当だよ?
「理沙先輩と朱里さんもおられますね」
えっ?朱里ちゃんも?
「藤原先輩は投手、やれそうですか?」
「選ばれたからにはやるしかないわ。一試合でも多く勝つ為にはエースを温存しないといけない時も必ずある……。ヨミちゃんはきっと凄い投手になるから大切にしたいといけないもの」
「……そうですね。武田さんはうちのエースですから」
「言っておくがエースというのは朱里もだぞ?うちはWエースで構成されているからな」
「何故そんな皮肉めいた……さては空振りした事を根に持ってますね?」
「ははっ!どうだろうな?」
「それにしても朱里ちゃんって本当に凄いわね。シニアでも全国トップクラスのチームでエースをしてたんだから」
「……そんな大したものではありませんよ」
「謙遜か?」
「……実は私、野球を辞めようとしていた時期があったんですよ」
朱里ちゃん……?
「朱里がか?」
「はい。……既に何人かには話しましたが、私はリトル時代に右肩を炎症したんです」
「えっ!?」
「朱里は元々右投げだったのか……」
この話って確か……。
「ねぇ遥ちゃん、朱里ちゃんが今話してるのって……」
ヨミちゃんと珠姫ちゃん、芳乃ちゃん、息吹ちゃんには朱里ちゃん話したって言ってたっけ?
「お、おい。朱里は何の話をしてるんだ?」
「シリアスな話……でしょうか?」
稜ちゃんと白菊ちゃんは何が何だかわからない様子……。
「……黙って聞いておこう」
「私は元々両利きだったので、当時バッテリーを組んでた子と色々と試行錯誤してたんです。それでも右肩が壊れて、2度と野球が出来ないって医者に言われて……。心が折れそうになったんです」
「……でも今ここにいるって事は野球を続けられたのよね?」
「はい……。シニアで練習をしていた時にある人間に出会いました」
「それって……」
「……雷轟です。雷轟と出会えたから今の私がいる、雷轟がいたからあの時諦めない事が出来た、雷轟との練習を続けていたから右肩を壊してからの辛い日々を乗り越える事が出来た……。全部雷轟と一緒に野球をしようと思ったからですよ」
「……良い話ね」
「朱里も色々大変だったんだな……」
「……それは先輩達にも言える事でしょう」
朱里ちゃん……。私の事をそんな風に思ってたなんて……!
「あっ、おい!」
「遥さん!?」
私は稜ちゃんと白菊ちゃんの制止を振り切って朱里ちゃんの元へ走った。
「あ、あがりぢゃ~ん!」
「うわっ!雷轟!?涙と鼻水が混じって凄い顔してるよ?」
「だっで!だっで~!」
「はいはい。何があったか知らないけど、胸貸してあげるから存分に泣きな」
「うぇぇぇ~っ!!」
朱里ちゃんが苦笑いしながら泣きじゃくる私の頭を撫でてくれた。私はそれが嬉しくって涙がもっと止まらなくなる。
「……武田さん、川崎さん、大村さん、そこにいるのはわかってるよ。今ならまだ許してあげるから出て来て」
はぁ……。まさか私がうっかり洩らしてしまった話を雷轟達が盗み聞きしてたとは……。
「うっ、うっ……!」
「良い話です~!」
あとなんか武田さんと大村さんは貰い泣きしてるし……。
「……ちなみにどこから聞いてた?」
そんな中で唯一気まずそうにしている川崎さんに問い詰める。
「え、えっと……。理沙先輩が投手をやれそうかってところからかな……?」
……という事は私がポツポツと話し始めたところ全部聞かれてるじゃないか!
「……川崎さんには明日から藤井先生に練習メニューを倍に増やすように伝えておこうかな?」
「ちょっ!なんで私だけ!?」
「なんとなく」
「ひでぇ!」
そんなこんなで私達の合宿はどんどん進んでいった……。あと今日の就寝前に藤井先生が新越谷が4強時代のOGだと知って土下座をしていた。
金原いずみの藤和生活……(藤和高校野球部の登場人物は全てオリキャラ及び他作品キャラになります)見たい?
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