最強のスラッガーを目指して!【本編完結】   作:銅英雄

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番外編 二宮瑞希の白糸台生活 夏大会編 1年目 69

ズバンッ!

 

 

『ストライク!バッターアウト!!』

 

5回から投手を新井さんから神童さんに交代。それに伴い新越谷の打線を三者三振に抑えます。流石は神童さんですね。

 

「ナイスピッチです」

 

「ありがとう二宮。しかし展開としては良くないな……」

 

「そうですね……」

 

ここ4、5年の間の白糸台がここまで苦戦を強いているのは初めての事で、特に神童さんは入部以来のチーム敗北に繋がる危機に直面しています。

 

(なんとか流れを手繰り寄せようとしますが、朱里さんが……新越谷が粘り続けているのが問題ですね)

 

4回に取れた1点以降、決定打が出ない事が拍車を掛けてチーム全体にプレッシャーが乗っかっています。

 

『…………』

 

そのプレッシャーが乗っかった結果が、このチームの暗い雰囲気ですが……。こんなチームのムードは野球人生で初めてな気がします。

 

「まるでお通夜ムードだな……」

 

「それ程追い詰められているみたいですね」

 

「そんな中でも顔色1つ変えず冷静に振る舞っている二宮が1番頼もしい。この6回表はおまえの打順からだが、行けそうか?」

 

神童さんも平静を保っていますね。流石はチームのエースと言ったところでしょうか?そんな人に期待を寄せられている……。応えたいですね。

 

「……なるようにしかなりませんが、この雰囲気を少しでも和らげる事が出来るように頑張ってきます」

 

ビハインドの状況から一矢報いる為にも、頑張っていきましょうか。

 

「…………」

 

(朱里さんのスタミナ切れも近そうですね)

 

元チームメイトとしてはやや複雑ではありますが、勝負の世界は非常……。容赦はしませんよ?

 

(出来ればこの打席も3球勝負でいきたいな……)

 

(大星さんに投げたチェンジUPを5回表では1球も投げなかった……。となるとあのチェンジUPはスタミナ消費が激しい球種となりますね。他にもフォークやSFFもキチンと変化させてくればその分握力を使う筈……。上手くいけばこの打席で朱里さんに引導を渡す事が出来ますね)

 

果たして朱里さんを降ろす事によって流れが良い方向に行くかは未定ですが、朱里さんは既に疲れを見せています。粘って球数を稼ぎたいところですね。

 

 

ガッ……!

 

 

『ファール!』

 

初球はストレート……。恐らく今日1番の球威でしょう。

 

(……なんとか着いていけましたね。朱里さんの雰囲気から察するにこのイニングで限界の筈なのに、まだここまでの球威が出せるなんて……!)

 

(はぁ……。もう握力がヤバい事になってるよ。二宮に対する球数次第ではこの打席で降板だね……)

 

やはり朱里さんは油断なりません。疲れてきているとは思えない球威です。

 

 

ガッ……!

 

 

『ファール!』

 

これでツーナッシング……。簡単に終わらせる訳にはいきません。川越リトルシニアの中でも、多分白糸台内でも……非力な部類に入る私を1年生にしてレギュラーを置いてくれた白糸台野球部の為に……!

 

(……私には和奈さんや雷轟さんのようなスラッガーではありません。いずみさんや亮子さんや神童さんのようにアベレージにも長けている訳でもありません。私がここまで登り詰めたのは持ち前の情報力と情報量……。これくらいしか私が誇れるものはありません)

 

 

カンッ!

 

 

『ファール!』

 

「ミズキってばあんなに凄い打者だったんだね~!」

 

「なんだ大星、知らなかったのか?」

 

「てっきり裕菜センパイの球が捕れるだけの壁だと思ってたよ。あとちょっと生意気な後輩」

 

「……それだけじゃないさ。二宮はチームの為に持ち前の情報力と情報量を活かして他校の選手の弱点や癖、得意球や苦手球なんかを1人で調べて監督に伝えたんだ。それは決して監督に気に入られる為じゃなく、あくまでもチームの勝利の為に……!」

 

「……うん、それは私でもなんとなく伝わったよ」

 

「だが本人はそれだけじゃ足りないらしく、夜遅くまで二宮が課題とする打撃面を自分なりに工面してこの全国大会の舞台まで、ただ1人の1年生レギュラーとして……な」

 

「凄いね……」

 

「大星も1年生からレギュラーだったが、二宮は大星とは違って才能とは縁遠い野球生活を過ごしていた。普通の人間なら根を上げるであろう環境でも二宮は頑張ってきた。そんな二宮を私は努力の天才と呼んでいるよ。そして……憧れに近い感情を抱いている」

 

 

カンッ!

 

 

『ファール!』

 

「良いぞーっ!」

 

「当たる!当たるよーっ!」

 

チームメイトから応援の声が聞こえます。普段の試合では圧倒している事が多かったので、こういう状況になる事はありませんでした。

 

この試合を切欠に白糸台はもっと強くなるでしょう。ですがその前に白糸台が逆境にも強い……というところを見せねばなりません。

 

(これで8球目……。しつこい人間は嫌われるよ全く)

 

(……私は、朱里さんと並べたでしょうか?朱里さんだけじゃなく、和奈さん、いずみさん、亮子さん、神童さん、新井さん、大星さん、亦野さん、渋谷さんのような凄い選手達に少しでも近付けたでしょうか?王者白糸台と呼ばれている高校に入って凡人の域から抜け出せたでしょうか?)

 

私がここまで頑張ってこれたのは、リトル時代に見た朱里さんの圧倒的なピッチング……。それを見てからはこの人に並びたいと思いました。それが切欠でした。

 

しかし今は……この白糸台高校野球部で二宮瑞希という爪跡を残す為に日々精進しています。凡人脱却を目指しています。

 

「…………!」

 

(朱里さんのあの表情……まだ何か隠している球種がありますね?ギリギリまで温存するその気概は朱里さんらしいです)

 

本当に手数が多過ぎて1度の打席では把握し切れませんね。

 

(恐らく次の9球目で朱里さんは新しい球を投げてくるでしょう)

 

私はそれを打ちます……!

 

(これは……揺れて曲がっている……?)

 

(さぁ、初見で対応出来るかな?)

 

(球の軌道や揺れ方……更にコースを考えるとここを振ればバットに当たる筈です)

 

投げられたのはナックルカーブ……。揺れて曲がるこの変化球を捉えるのは困難ですが、臆する訳にはいきません。

 

 

ズバンッ!

 

 

『ストライク!バッターアウト!!』

 

私が三振した事を告げるコールと同時に……。

 

 

ドサッ!

 

 

『朱里ちゃん!!』

 

『朱里!!』

 

朱里さんが倒れてしまったようです。完全にスタミナ切れのようですね。

 

(しかし自分が燃え尽きる覚悟で投げ抜いたナックルカーブ……。朱里さんも新越谷に入って変わりましたね)

 

ですがスタミナ管理が杜撰ですね。これは試合終了後に朱里さんとお話をする必要があるみたいです。

金原いずみの藤和生活……(藤和高校野球部の登場人物は全てオリキャラ及び他作品キャラになります)見たい?

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