1回の裏の私達の攻撃は1番の中村さんが出塁、2番の藤田さんがバントで得点圏にランナーを進めて、3番の山崎さんがタイムリー。うちは最早これがパターン化しつつあるね。
しかし向こうも流れを渡す真似はしない。
主将も続いてワンアウトでランナーが一塁に主将、二塁には山崎さんがいる状況で打席には5番の川崎さん。
藤和の先発の球を上手く当てる……んだけど。
「よっ……と!」
『アウト!』
「げっ!あれを捕るのかよ!?」
レフトにいる金原がファインプレーを見せる。しかも山崎さんはまだ二塁に戻れておらず、ゲッツーという形になった。
「ドンマイドンマイ!切り替えていこう!!」
「あれは向こうレフトが上手かったね。守備で挽回しよう!」
私と芳乃さんで皆を励まして次の守りに付いた。
(しかしシニアまでの金原だったら今の打球は捕れなかった筈。高校に入ってまだ1ヶ月くらいなのに、あそこまで成長しているとはね……。これはシニアの時のデータは宛にしない方が良いのかも)
でも弱点は克服出来ていても、癖まではそう簡単に治っていない。さっきの打席でも金原の癖は見えていたから、少なくともこの試合はなんとかなるね。
~そして~
時は進んで3回の表。ツーアウトながらもランナー二塁三塁のピンチで金原の2打席目。
「今度は打っちゃうぞ~?」
正直一塁が空いてるから、金原を歩かせて次の4番と勝負する方が安全なんだけど……。
(ここは勝負でいこう。打たれたら私の責任にしてくれて構わないよ)
(了解……)
ちなみに金原の打席の時は私が、それ以外の時は芳乃さんがサインを出している。
(一塁空いてるから、最悪歩かされると思ったけど、勝負してくれるならアタシとしては嬉しいね。さっきの打席の借りもあるし、ここはタイムリー狙いでいきますか!)
1打席目はフルカウントまで持ち込んだけど、この打席は速攻で攻める。初球の際どいコースを金原は見送ってワンストライク、次のインコースをカットしてツーストライク。
(じゃあここであれを投げてもらおうかな?)
(うん!)
ここで話は合宿2日目に遡る……。
「ねぇ朱里ちゃん」
「武田さん?どうしたの?」
「ちょっと朱里ちゃんにお願いがあるんだけど……」
武田さんのお願い?なんだろう……。
「前に朱里ちゃんが投げたやつを私に教えてほしいんだ」
前に私が……ってもしかして。
「ストレートに見せ掛けた変化球の事……?別に構わないけど、一朝一夕で出来るものじゃないよ?」
「……それでも私は覚えたい。このままだと朱里ちゃん、息吹ちゃん、理沙先輩に置いていかれそうな……そんな気がして……」
泣きそうになっている武田さん。別にそんな事はないと思うんだけどなぁ……。
「……じゃあ早速取り掛かろうか。まずは山崎さんを呼んで3人でやってみよう」
「うん!ありがとう……」
「気にしないで」
(実は息吹さんにそれを教えようと思ったけど、息吹さんには別のやつを教えておこうかな……)
山崎さんを呼んで練習開始。
「まずは握りを……どの球で使う?スライダー?カーブ?」
「そうだねぇ……。カーブでいこうかな?あの球を意識してもらった後にそれを散らすと打者は簡単に打てないと思うから……」
「成程ね」
確かにあの魔球をちらつかせて、ストレートに見せ掛けたカーブを織り混ぜる事で打者は間違いなく混乱する。謂わばあの魔球の別バージョンと言った感じなかな?
「じゃあその方向で……。私がバッターボックスに立つから、早速投げてみて」
「うん!」
武田さんがカーブの握りで私の球を投げようとする……が。
「普通のカーブだね……」
「もう1回!」
「良いよ。武田さんの気がすむまで付き合う。山崎さんは?」
「……当然。私はヨミちゃんの相棒なんだよ?」
「タマちゃ~ん!」
あの、だからイチャイチャするの止めてね?
(……といった感じで100、200と投げてみたけど、結局1球も成功しなかった)
だけどこの打席に限り、可能性はかなり高くなる。武田さんのアドレナリンや強打者に対するモチベーション、そして武田さんは……。
(いくよ……。あの球と朱里ちゃんの球の合作!)
(うん!)
(3球目のコースは真ん中……。ここから落ちる?)
武田さんが投げた球は……。
(ストレート……?それなら打つ!)
ストレート……に見せ掛けた……。
(なっ!?しかも今のは……)
カーブだった。金原は武田さんに対して2打席連続で三振をしてしまったのだ。
(これまでどれだけ投げ込んでも成功しなかった球をこの局面で投げてくるとは……。本番に強いというか尻上がりが過ぎるというか……)
まぁここで決めてこそのエースだという事だ。これは私も良い勉強になった。
(やられた……。今の球は朱里がよく投げていたストレート。まさか武田さんまで投げてくるとは。でも……!)
「やったやった!抑えた~!」
「うん、上手くいって良かったよ!」
(あの様子だとさっき投げた球は偶然朱里のそれに近付いただけって事か……。5回からは朱里が投げるし、それまでに似た球を見られて良かった。あんな球を投げられるのは朱里以外にいないからね♪)
何はともあれピンチは凌いだ。あとはうちがリードを守るだけ……。
……だと思ったんだけど、金原以外は基本的に打たせて捕る戦術の為に小刻みに点を取られ続けて、気が付いたら4点も離されてしまった。
攻撃の方も代打で雷轟がホームランを打ったけど、藤和の投手が崩れる事がなく、後続を抑えられて3対5で負けてしまった……。私の投球?カットだよ。
オリジナルの話って難しい。ハッキリわかんだね。
金原いずみの藤和生活……(藤和高校野球部の登場人物は全てオリキャラ及び他作品キャラになります)見たい?
-
見たい
-
見たくない