川口芳乃です!今日は息吹ちゃんと影森高校の偵察に来たよ!
「初戦で当たる影森高校はデータが殆んどないから、直接見るしかないよね」
「私達は偵察部隊……という訳ね」
「うん」
それに抽選会にはマネージャーしか来てなかった……。何でなんだろう?
(わかっている範囲ではここ3年間だと3回戦が最高……。公式戦で柳大や椿峰に敗退してるとはいえ、全てはロースコアの接戦)
偵察でその実態がわかれば良いんだけど……。
「ここから見るのね?」
「うん、ここからなら盗み見しなくても丸見えだよ。ありがたい!」
早速ノックを受けている場面だ!選手達の線は細いけど、ちゃんと練習してるなぁ。
「守備上手いわね」
見た感じ守備型のチームだね。これがロースコアの正体かな?
「あっ、あの子がエースの中山さんだね。息吹ちゃん、よく見ておいて」
「えっ?」
中山さんが投球練習を始めた。アンダースローだ!
「おおっ、アンダースロー!」
投球練習を続けて見ていると中山さんが振り返る。
「……っ!」
「芳乃?」
プレッシャーみたいなのを感じて身を伏せた。
「ま、まさか気付かれたの……?」
「この距離だし、大丈夫だとは思うけど……。何?今のプレッシャーは……?」
と、とりあえず引き上げよう!
~そして~
「ちょっと不気味なチームだったわね……」
「個々は強いようには見えなかった。中山さんの球もそこまで……」
「特殊な戦術でも使うのかしら?」
「……なんか嫌な予感がする」
なんだろう?取り返しの付かない……とまではいかないけど、それに近いこの予感は……?
「あれ……?」
「どうしたの息吹ちゃん?」
「彼処にいるのって朱里じゃないかしら?」
「えっ……?」
「…………」
本当だ。何をしてるんだろう?
「朱里ちゃーん!」
折角見掛けたんだから、声を掛けよっと!
(影森の投手の中山さん。球はそこまでだけど、あのピッチングはちょっと厄介だ……。これは芳乃さんと相談して……)
「朱里ちゃーん!」
この声は芳乃さん?よく見たら息吹さんもいるし。もしかして目的被った?
「芳乃さんに息吹さん。こんなところで奇遇だね」
「うん、影森高校の偵察にね!」
「……考える事は同じだったって事か」
「じゃあ朱里も?」
「無名のチーム程怖いところはないからね。投手の球だけでも見ておきたいと思って……」
同じ投手として何か参考になるかと思ったんだけど、あれは私には真似出来ないね。
「でも何処で見てたの?私達も見てたんだけど、辺りに人はいなかったわよ」
「私は真後ろで見てたよ」
「あ、朱里ちゃんはあのプレッシャーを感じなかったの!?」
プレッシャー?ああ、あの『この空間は私達だけの場所だ!』的な視線の事かな?
「そんなの気にしてられないよ。勝つ為の偵察なんだし」
「朱里ってやっぱり大物よね……」
「何を言ってるのさ。投手は度胸だよ?息吹さんもこれくらいはやっておかないと」
「え、遠慮しておくわ……」
ちぇっ!
「朱里ちゃんはエースの球を見た?」
「中山さんの?見たよ。アンダースローでしょ?バックの守備も上手いし、簡単に勝てる相手じゃないね」
「やっぱり守備であのロースコアなのかな?」
「……いや、単純にそれだけでもなさそうだよ」
「どういう事?」
ここで説明するのも良いけど、それだと二度手間になるし……。
「詳しい事は明日説明するね」
「わかった。朱里ちゃんの偵察結果、楽しみにしてるね!」
な、なんかプレッシャー……!
「……そういえば今日私が着いてきた意味あったのかしら?」
「それはね……!」
~そして~
「昨日偵察に行った結果、初戦の影森高校は守備型のチームだと思われるよ。エースはアンダースロー」
「おおっ!」
「今から息吹ちゃんが再現してくれるよ」
息吹さんは中山さんのアンダースローを再現する。このコピー能力は凄いな……。これは私の技術も教えたら上手くいきそう。
(成程……。私は中山さんを模したピッチングをすれば良い訳ね)
「じゃあこれに加えて追加事項があるから報告するね」
私が言うと皆が一斉にこっちを向く。
「まずはこのデータを見てほしい」
タブレットを取り出して過去の影森高校の戦績を移した。
「柳大や椿峰と接戦じゃないか……!」
「これは侮れないわね」
「今言った通り柳大と椿峰みたいな格上との試合は勿論、格下との試合も同じようにロースコアで試合を決めている。更にそれぞれの試合の平均時間が1時間前後と凄く短い。この結果が気になって私は偵察に行って確かめた。その正体はバッテリーによるハイテンポピッチングだとわかったよ」
「ハイテンポピッチング?」
「うん、中山さんは常にクイックモーションで投げていて、ランナーが出た時は更にモーションが速くなる。影森と対戦した学校はテンポに惑わされて思うように試合が出来ていない」
「これは厳しい戦いになりそうだな……」
「序盤はキツいかもですが、慣れてくると打てるようになると思います。対策としては相手のテンポを崩すか、相手に合わせてプレーするか……。それに関しては当日に判断しても遅くはないでしょう」
「うんうん!朱里ちゃん最高だよ。じゃあそれぞれ練習を始めましょう!」
芳乃さんの一声で私達は大会に向けて練習を開始した。
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