雨の日。設備が一流のこの学校には室内練習場があり、一部のメンバーを除いて私達はそこで練習している。
「いくぞ白菊。右中間!」
「はいっ!」
「大分打ち分けられるようになったな」
「ありがとうございます!」
こちらは主将と大村さんがバッティング練習を。
「藤原先輩、次投げてください」
「わかったわ!」
私と武田さんで藤原先輩のピッチングを見ている。山崎さんが捕手を、息吹さんが打者役をしている。
「段々フォームが安定してきましたよ!」
「ええ!この感じを忘れない内にジャンジャンいくわよ」
藤原先輩も良い感じに仕上がってきた。これなら先発を任せても問題なさそうだ。
~そして~
「集合~!」
室内練習を進めていると主将から集合が掛かった。
「少し早いが、公式戦用のユニフォームを配布するぞ」
「待ってました!」
ユニフォーム配布と聞いて川崎さんを始めとする皆が喜んでいる。
「それでは順番にユニフォームを取りに来てくださいね」
「先ずは1番……ヨミ!」
「は、はいっ!」
(1番……!)
「頼んだよエース」
「朱里ちゃん……」
「まぁ来年……いや、秋季大会でその背番号を私達に奪われないように頑張ってね」
「うっ……!負けないもん!」
それにまだ見ぬエース候補がいるかも知れないから、私も油断しないようにしなくちゃね。
その後9番まで背番号の発表が終わり、次はベンチである私達の番だ。
「15番……遥!」
「はいっ!」
「雷轟さんには主に代打の切り札として出て貰う事になります」
「まぁ対戦相手によってはスタメンで出すかもだから、頑張ってね」
「うんっ!」
雷轟をスタメンで出すなら梁幽館と戦った後の3回戦からになりそうだね。まぁその前に大きい山がある訳だけど……。
「18番……朱里!」
「はい!」
私は今回2番手として、そして外野で出場する可能性を考慮しての18番。いつの日か武田さんからエースナンバーを奪取したいものだ。
「最後に10番……芳乃!」
「ええ!?良いんですか?」
「勿論だ」
「芳乃さんも新越谷野球部の一員だからね」
「ベンチには20人まで入れるからな」
「開会式一緒に出れるやん!!」
「試合には出しませんが、コーチャーに立ってもらう事はあるかも知れませんね」
……という事で主将からユニフォームを受け取る芳乃さん。肌触りを確認した後にぴこぴこさせてユニフォーム生地が練習試合用とは違う事を力説していた。あっ、本当だ。これは確かにメッシュ生地。
~そして~
ザーザーと降っていた雨も暗くなるとすっかり止んでいた。
「暗くなってから雨が止みやがるなぁ……」
「でも明日は晴れるみたいで良かった」
明日は傘が必要なさそうで良かった……。
「私達上がるわね」
「うん、お疲れ~」
「朱里ちゃん、ユニフォーム着よう!」
いきなりどうした……。
「さっき芳乃ちゃんがユニフォーム着てたんだ!もう可愛くて可愛くて……。私も早く着たい!朱里ちゃんも着よう?」
「いやいや、試合中いくらでも見れるじゃん……」
「試合中はユニフォームが可愛いとか考える余裕がないよ!」
「はいはい。着れば良いんでしょ?着れば……」
隣を見ると武田さんが雷轟と同様に山崎さんにユニフォームを着させようとしていた。山崎さんも大変だな……。
~そして~
「着たよ~!」
武田さんと雷轟が私と山崎さんを引っ張る形で芳乃さんの前まで来た。
「4人共凄く似合ってるよぉ~。強そう!」
このユニフォームは可愛さと強さを兼ねているらしい。私には全然わからない……。
そしてその流れで武田さんと芳乃さんと雷轟がキャッチボールをする事に。
「ちょっと濡れてるけど、やれそうだね」
「いくよ~!」
「来い!」
まずは芳乃さんが武田さんに投げる。
(スピンのかかった良い球だ。芳乃さんは芳乃さんでセンスがあるね)
「ナイスボール。良い球投げるじゃん!」
「息吹ちゃんの相手になれるくらいにはね」
この時点で雷轟よりも上手そうに見えるよ。
「……入学式の時はキャッチボールするだけの部でも良いって思ってたんだよね」
「それってキャッチボール部って事?」
それって部活なのかな……?
「う~ん……。半ば帰宅部みたいな感じかな?放課後に好きな人と適当に身体動かして、甘いものでも食べながらお喋りして、遊んで帰る……。それはそれで楽しかったかもね」
「確か入学式の日は武田さん達4人しかいなかったんだっけ?」
「うん。……それがまさか人数が揃って大会に出られるなんて想像もしてなかったよ」
もしもあの時主将達がいなかったら……っていうifかな?
「もしもそうなっていたら私と雷轟はクラブチームか草野球チームで野球をしてただろうね」
「そうなの?」
「雷轟がどんな環境でも良いから、高校では野球したいって言っていてね。私達2人が来た時は中村さんと大村さん以外の人数が既に集まっていたけど、この野球部がその時も停部してたら私達はここにはいなかったよ」
私がそう言うと雷轟がこっちに飛びかかってきた。キャッチボールに集中しなさい。
「……そう考えるとこのチームで良かったよ。今までの公式戦で1番ワクワクしてるし!」
「3ヶ月頑張ったもんね。最早白菊ちゃんと遥ちゃんと息吹ちゃんも超素人級だし」
「どうかな?雷轟は確かにエラーをしなくなったけど、守備の動きがまだまだ甘いから、実戦で使うには厳しいかもよ?」
「朱里ちゃん酷い~!」
私の横で雷轟が何か言ってるけど、スルーで。
(新越谷で最初の夏……。私達はどこまでいけるだろうか?)
全国出場までは無理でも、県ベスト8くらいはいきたいものだ。
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