大会当日。私達は試合前のノックを受けている。
「ライト!」
「はいっ!」
内野陣は勿論、外野の守備も良くなってきている。この試合は大村さんがライトを守る事に。
「お嬢、ナイスです~!」
「道場の皆さん……。お母様も!」
あの一角は大村さんの応援か……。これは大村さんも良いところ見せなきゃね。
「先生、さぁこーい!」
「ヨミちゃん、頑張れ~!」
武田さんも雷轟もすっかり吹っ切れてるみたいで良かった。まぁ何があったか。それは昨日のオーダーを決める時の事……。
「ええっ!先発私じゃないの~!?」
「私、ベンチなの~!?」
えー……。芳乃さんと相談した結果、1番が中村さん、2番が藤田さん、3番が山崎さん、4番が主将、5番が川崎さん、6番が『先発投手で藤原先輩』、7番が大村さん、8番が息吹さん、9番が『サードで』武田さん、ベンチが私と雷轟になってるんだけど……。
「う、うん……。影森戦の先発は理沙先輩でいくよ。ヨミちゃんはサードをお願い」
「雷轟は私とベンチだね」
「「なんでなんで~!?」」
このように駄々っ子が2人誕生した。
「やっぱりこうなると思ったんだよね……。ヨミちゃん、わがまま言わないの」
「雷轟も出たがりになったからね。はぁ……。雷轟、藤井先生も言ってたでしょ?主に代打の切り札として使うって」
私と山崎さんは溜め息を吐きつつも、なんとか2人を宥めようとする。
「……ヨミちゃん、これを見て」
芳乃さんが出したのは以前に私が取った影森の統計だ。
「前に朱里ちゃんが説明したけど、影森は相手の強弱に関わらず時間が異常に短くてロースコアなの」
「……だから尻上がりの武田さんとは相性が悪い。それに大会の過密日程を考えると初戦の内に藤原先輩や息吹さんを試しておきたいんだ」
「ヨミちゃんと朱里ちゃんだけに頼る訳にもいかないもんね。私達の目標は優勝なんだから」
山崎さんの言う通り。……実は私もあのテンポの早さは若干やり辛いところもあるから、先発を辞退したんだよね。
梁幽館相手になるべく私と武田さんのピッチングを見せたくないっていうのもあるけど……。
「それにエースは温存したいしな」
「エースは温存……?そうだよね。エースは温存しなきゃだもんね!それなら仕方ないかぁ!」
主将が武田さんを持ち上げる。すると武田さんは上機嫌になった。主将……。武田さんの扱いが上手いですね。それなら私は雷轟を丸め込もう。
「雷轟は私達の切り札だし、なるべく切り札は隠しておきたいんだ」
嘘は言ってない。
「朱里ちゃん……」
な、なんで涙目なんだ……。
「それに雷轟を出すタイミングは私の方で既に決めてある。その時に思いっきり暴れてもらうよ」
「……うん、わかった。その時を楽しみにしてるね!」
((ナイス。キャプテン、朱里ちゃん……))
「えへへ~♪」
「よーし、その時がきたら思いっきり暴れるよ~!」
な、なんか不安だけど、大丈夫だよね?
……そんな事を思いながら相手の守備を見る。
「随分静かなノックだな……」
「声を出さないチームなんてあるのね」
「まぁこっちは声出して圧かけていこうぜ!」
「そうだね。うちはうちの野球をすれば良い」
さて、影森の先発は……。
「予想通りのアンダースロー!」
「球速以外は息吹ちゃんのバッピ通りやん!」
「よくやったぞ!」
当の本人は緊張でそれどころじゃなさそうだけど……。
球場の外では……。
「お~い、こっちこっち!」
「お待たせしてすみません」
「ま、迷っちゃった……」
私服の女子が3人。
「アタシが誘っといてなんだけど、2人共よく来れたね?」
「私は今日は試合ではありませんので、学校の方を休んで来ました」
「わ、私も……!」
「やっぱ考える事は一緒か~」
「朱里さん率いる新越谷高校の試合はなんとしても抑えなくてはいけません。自分の試合をブッチしてでも見に行きます」
「それはやり過ぎだと思うな~……」
「と、とりあえず入ろう?」
「そうですね」
彼女達……朱里の元チームメイトはわざわざ県外から新越谷の応援に来たようだ。
(さて……。影森は早打ちを仕掛けてくるチームだから、様子見のボール球を振ってくれる筈だけど……)
藤原先輩の初球のボール球を期待通り打ってくる。
「ライト任せたわよ。前!」
「はいっ!」
でも結構面倒な上がり方だな……。そう思っていると大村さんはエラーをしてしまう。
「ああっ!お嬢~!」
あの一角は凄いリアクションしてくるなぁ……。
「白菊ちゃん、ナイス!後ろに逸らすよりもマシやけん、気にせんで良いよ!」
「はい……」
(声の掛け合い等のフォローもバッチリだね)
ランナーのリードが小さい……。盗塁はしないのかな?でもここはウエストの方が……って!
(ここはバントをさせてアウトを貰おう……)
あっ、そんなストライクに投げたら……って遅かった。影森のランナーが走った。
「走った!」
「バスターエンドラン!?」
打者の当たりはボテボテのショートゴロ。
「オーライ!」
「ボール1つ!」
「オッケー!」
『アウト!』
「ワンアウト!」
とりあえずワンアウトは取れた。けど……。
(なんか違和感を感じるな……。気のせいかな?)
続く3番バッターも初球で打って、当たりはセカンドの頭を越えて、二塁ランナーがホームイン。たった3球で先制点を取られてしまった……。
(影森の守備力を考えたらこの先制は痛いな。うちが影森のハイテンポピッチに慣れるかが問題だけど……)
私としてはなんとか向こうのペースを崩していきたいところだ。
「あちゃー、新越谷が先制されちゃったか……」
「新越谷が先制されるのは今年度に入って初めてですね」
「それにしても影森ってところはこれまで全部初球打ちだね」
「なんか急いでるようにも見えるね~」
「ですが今の3番はよく打ったと思います。あのコースの球はそう簡単には手が出ませんから」
「う~ん……」
「いずみちゃん、どうしたの?」
「なんか違和感あるんだよね~」
「影森ですか?」
「何て言うか……。もったいないって言うか……」
「もったいない?」
その後2点目を取られそうになるが、武田さんのカバーによって阻止する事が出来た。
「1点は勿論想定内だよ。早めに追い付こう!」
『おおっ!』
「希ちゃん、第1打席は出来るだけ見ていってくれない?」
「任せて!」
『1番 ファースト 中村さん』
(中山さんか……。どんな球を投げるとかいな)
「お願いしま……」
中村さんが礼をする前に中山さんが投げてくる。
(投げ始めが速い……!)
(それだけじゃない。捕手の返球も早いし、返球が終わった瞬間に次を投げてくる……。前に見た時よりもテンポが速くなっているぞ)
(面白いやん……!)
「やっぱり中山さんは常にクイックモーションで投げているみたいだね」
「朱里ちゃんの偵察通りって事だね。じゃあ今のは?さっきよりも速かったけど……」
「う~ん、スーパークイックモーションってところかな?」
その球を打った中村さんはサードゴロに倒れた。
「ごめん……」
「ドンマイ!どうだった?」
「多分全部ストレート。大した球やないけど、なんか気持ち悪かった……」
2番の藤田さんもショートゴロに倒れてしまう。
「構えた瞬間に投げ込んでくる上に、1球毎にタイミングが微妙に違ったわ……」
「それってボークじゃね……?」
「恐らくギリギリのところを中山さんもわかって投げているだろう。ランナーが出ればリズムが変わるかもしれないから、それまでは辛抱かな?」
「それに9人いれば何人かはタイミングが合うかも!」
3番の山崎さんがタイミングを合わせて打つが、ライトフライ。うちが三者凡退ってもしかして初めてなんじゃ?
「…………」
「大村さん、チェンジだよ?」
「あっ、はい!」
「どうしたの?」
「いえ、大丈夫です」
「そう?ならいいけど……」
その後大村さんは中村さんに何かを聞いていた。
(ひょっとしたら中山さんの攻略方法がわかったとか……?)
そうだとしたら大村さんの打席は期待出来そうだね。
~オマケ~
打順の理由①
影森戦当日……。
詠深「むぅ……!」
理沙「詠深ちゃん……。やっぱり投げたかったわよね」
朱里「藤原先輩、多分あれは……」
どっちかって言うと打順に不満がありそうな感じだけど……。
詠深「なんで私が9番……?練習試合通りで良いじゃん……」
武田さんはやはりというか打順が9番に落ちている事に不満を持っていた。
打順の理由②
打順が9番に落ちている事を不満に思っている武田さん。
芳乃「ヨミちゃん、練習試合の打率はいくつ?」
詠深「うっ……!」
わかりやすく動揺してるね……。
詠深「……こぶ」
稜「えっ?何割って?」
詠深「.050(ごぶ)です!!」
そう、武田さんは練習試合の戦績がチームの中で1番低かったのだ……。
稜「なら打順を下げられても仕方ないな。ドンマイ!」
芳乃「今日打ったらまた戻すかもだから頑張ろ!」
詠深「うう……!」
なお戻すと確定した訳じゃない……。
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