最強のスラッガーを目指して!【本編完結】   作:銅英雄

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県大会1回戦!新越谷高校VS影森高校②

2回表。守備に付く前に私、芳乃さん、山崎さん、藤井先生でこの試合の方針を決める。

 

「徹底して高速な試合作りをしてくるチームに対して間を取りつつリズムを崩していくか……」

 

「敢えて被せていくかだね。どうしようか……」

 

「高校野球の審判はテキパキした動きが好きですからね……。時間を使うと相対的にダラダラしているように映るかもしれません」

 

成程、こうしている間にも向こうの打者と審判の準備は終わっているから、私達がダラダラしているように見えるって訳か……。

 

「被せていこう!」

 

「決まりだね」

 

私個人としてはリズムを崩していきたいけど、藤原先輩のスタミナ消費を抑える為にも向こうの早打ちを利用した方が良さそうだね。

 

(これなら藤原先輩が四死球による自滅を考えずに済む……か。早打ちの確率の表を引けば初回の先制劇だけど、その裏を引けばそれは淡白な攻撃になる……)

 

影森のこれまでのデータでは殆んどの試合が先制で点を取っている。つまり早打ちによる奇襲が上手くいっているという事。2回表はこちらの守備が影森の早打ちに上手く対応して三者凡退に収めた。

 

この回の藤原先輩の投球数は僅か5球。これなら5、6回までいけそうだね。

 

しかし2回の裏の攻撃では……。

 

『ストライク!バッターアウト!』

 

(えっ!?)

 

「ストライクゾーンが広い……。球審の方も速い展開につられているのでしょうか……」

 

「影森の打者は必ず振ってくるコースですからね……」

 

1度取ったからには今日はずっとストライクと考えた方が良い。

 

(こうなると投手戦。ロースコアの原因は影森のバッティングによってストライクゾーンが広くなるのもあったって事か……)

 

2回裏は私達も三者凡退で終わってしまった。早いところ同点にしたいな……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「これはやりにくい相手ですね……」

 

「影森の投手のテンポに着いていけてないもんね~。ストライクゾーンがいつもよりも広くなってるし……」

 

「影森の過去のデータを調べてみましたが……」

 

「なんで……?」

 

「昨年の秋頃から中山さんはアンダースローのクイックを身に付けて、その上影森の打者は早打ちを仕掛けてくるようになったみたいです。それで格上相手にも成果を出しています」

 

「加えて守備レベルは高い……と。これはてこずるかもね~」

 

「そうかな?私はいけそうだと思うけど……」

 

「貴女はそうでしょうね……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

3回の表は負けじと三者凡退で抑えて、3回の裏。この回は大村さんの打順からだ。

 

「白菊、なんとか希の前に出てくれ!」

 

「頼むよ!」

 

「はい!理論は完璧です!」

 

「理論……?」

 

理論ってなんだろう……?

 

「そういえば中村さん、2回の守備に付く前大村さんに何を聞かれたの?」

 

「えっ……?中山さんの球速がマシンの最高設定が100%だとしたらどれくらいかって……」

 

「それで?」

 

「私はそれに80って答えたよ」

 

つまり大村さんは……あっ!

 

「そういう事か……!それならたしかにいけるかもしれない」

 

「どうした朱里?」

 

「何かわかったん?」

 

「大村さんは剣道を用いて大村さんなりの理論を考えたんだ。それが完璧って事はこの打席、やってくれるかも……」

 

私の言った事の要領を得ない主将と中村さんに改めて説明する。

 

「剣道は間合いの攻防とも呼ばれる競技です。大村さんは自分と中山さんの間合いを測ったと思われます。中村さんに球速を聞いたのは恐らく普段打ち慣れているマシンと同じタイミングを取る為でしょう」

 

「な、成程……」

 

「つまり中山さんのクイックやタイミングを見るのではなく、ボールだけをよく見て合わせれば……」

 

 

カキーンッ!!

 

 

「打った!」

 

「大きいぞ!」

 

大村さんの打球はレフトスタンドに入ってホームラン。これで振り出しだ。

 

「やっと出たな!」

 

「はい!」

 

(芯に当たったのはマグレですが、タイミングは完璧でした!)

 

大村さんがベンチに戻るとメンバーがそれぞれ祝福していた。

 

「ナイバッチ白菊ちゃん~!」

 

「エラー取り返したな!」

 

「手荒い祝福です~!」

 

「むぅ……!」

 

「痛っ!誰か本気で叩いてます!」

 

それ多分中村さん。叩いてるっていうか蹴ってるし……。

 

その後息吹さんがヒットで続くも、武田さんのバント失敗によってダブルプレーを取ってしまう。さて……。

 

「武田さん、息吹さん。今から私と一緒に肩を作るよ」

 

(肩を作る……。という事は登板!?)

 

「念の為に息吹さんにはアンダーを隠しておくように言っておいて」

 

「わかった!」

 

(朱里ちゃんナイス!)

 

(気にしない気にしない。一応私も肩を作っておくよ)

 

(了解!……という事で希ちゃん、粘って出塁がベストだよ)

 

(うん!任せて!!)

 

中村さんには粘って出塁してほしいところだね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あっ、朱里ちゃんが肩を作り始めてる」

 

「本当だ。登板するのかな?」

 

「どうでしょう?梁幽館の偵察が見ている事を考えると肩を作っているだけ……という可能性もあります。エースナンバーを付けている武田さんも温存かもしれませんね」

 

「となると次に投げるのはあの7番の子か~。瑞希、あの子がどんなピッチングをするか知ってる?」

 

「いえ……。ですが彼女のセンスはかなりのものだと思います。柳大川越との練習試合を見ていましたが、少なくとも選球眼は一級品でしたよ」

 

「おお……。それは楽しみだね~☆」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

中村さんは出塁こそしたけど、牽制に引っ掛かりアウトとなった。

 

「ごめん……」

 

「ドンマイ!」

 

切り替えて守備。そう思い球場を見上げるとそこには……。

 

(なんか二宮と金原がいるし。しかもあの子まで一緒じゃん。わざわざ県外から来て……。自分達の試合とか良いのかな……?それとも偶然日程が空いているだけ?)

 

更に反対側には……。

 

(梁幽館の偵察もいるし……。しかも橘と高橋さん。お願いだから、高橋さんにはあの大きい一眼レフを構えている橘を止めてほしい……)

 

とりあえず芳乃さん達に梁幽館の偵察がいる事を報告。

 

「梁幽館の偵察ですか……。そうなると出来るだけ藤原さんを引っ張りたいところですが……」

 

「そうですね……。練習では70球くらいまでは球威を保てますが、公式戦のプレッシャーを考えると50球くらい……この回か次の回で限界かも……」

 

「一応それを見越して私達3人が肩を作っている訳だけど……」

 

「……出来ればヨミちゃんと朱里ちゃんは隠しておきたいかな。朱里ちゃん、肩はもう良いの?」

 

「私はこれくらいでもいけるよ。武田さんも大丈夫そう……。あとは息吹さんの肩を暖める為に武田さんが付き添ってる」

 

「そっか!」

 

「そうなると次に登板するのは息吹さんか……。だとしたらそろそろだね」

 

「何が?」

 

「この試合の分岐点。息吹さんにはコピーの方で投げてもらうんでしょ?」

 

「あっ……。うん!」

 

芳乃さんも私の言いたい事がわかったようだ。流石だね。

 

4回の守備もランナーを出しつつも無失点で抑える。段々守備のリズムが良くなってきたね。

 

チェンジになった瞬間、影森のメンバーがそそくさとベンチに戻っていくのが見えた。

 

「影森って野球が嫌いなのかな?」

 

それを見た川崎さんが疑問に思ったのか私達に聞いてきた。

 

「それはないと思うよ。好みの展開に持ち込める戦略に戦術。こんなにレベルの高いプレーをしてるのに、野球が嫌いな訳ないよ」

 

「それにそこから身に付いた高いレベルの守備力もあるしね」

 

先頭の藤田さんもその高いレベルの守備によって打ち取られているし……。

 

「想像だけど、試合よりも身内だけでやる練習の方が好きなのかも……。チームは仲が良さそうだし」

 

「そんな事ってあるのか?」

 

それはあるかもね。すると藤井先生が例を挙げる。

 

「そうですね……。例えば私は野球ゲームが好きなんですが、オンライン対戦はほとんどやりません。育成とか戦略モードの方が好きです」

 

「良い例え!」

 

「よ、よくわからん……」

 

まぁゲームしない人にとっては難しい例えかも……。私の場合は育成した選手がどこまで通用するか試したいから、オンライン対戦の方も普通にやるけど……。

 

山崎さんの打球はレフトのファインプレーによってアウトになってしまう。

 

「タマちゃん惜しい~!」

 

「ヨミちゃん、息吹ちゃん、肩は暖まった?」

 

「私は基本いつでもOK!」

 

「わ、私も一応……」

 

「何の話をしてたの?ゲームがどうとか……」

 

芳乃さんは武田さんにさっきの話をした。

 

「成程ね……。試合よりも練習かぁ……。でも確かにうちだってもし部員が揃わなくて、好きな人同士だけで適当に体を動かすだけの部活だったら、いつか部員が揃っても他校と試合するのが億劫になってたかもね」

 

「いつかしたキャッチボール部の話ね……」

 

「まぁ影森がそうとは限らないよ。あれはあれで楽しんでいるのかもしれないし……」

 

「そうだね」

 

主将の打球もレフトによって阻まれていた。

 

(レフトの三角さんか……。あの人は影森のハイレベルな守備の中でも頭1つ抜けてるな。)

 

「まぁどうであれ手強い野球をしてる事には変わりないな……」

 

「できればもうちょっと相手として見てもらいたいなぁ……」

 

「もしそうなったらそれがこの試合が動き始める時だよ」

 

5回の守備だけど、藤原先輩の球威が落ち始めた……。先頭打者にヒットを打たれて、次の打者の送りバントによってワンアウト二塁のピンチ。

 

「監督」

 

「はい」

 

芳乃さんと藤井先生によって藤原先輩がサードに、武田さんがファーストに、中村さんがレフトに、そして……。

 

「な、なんでこのタイミングで私……?ヨミや朱里の方が良いんじゃない?」

 

ピッチャーに息吹さんを投入。

 

「梁幽館の偵察がいるからね。出来るだけヨミちゃんと朱里ちゃんは見せたくない……」

 

あと個人的な理由としては一眼レフを構えている橘の前にマウンドに立つのはごめん被りたいから。

 

「まぁそういう事だからよろしくね」

 

「後ろには私達がいるから大丈夫!」

 

「あっ、投球は勿論コピーの方でお願い!」

 

私と芳乃さんはその言葉を残してベンチに戻っていった。

 

(……私は勝つ為にこのマウンドを任されている。朱里にも色々教えてもらったし、いつまでも初心者だからではいられない!)

 

息吹さんが投げるアンダースローのモーションは中山さんのフォームと殆んど同じ。それに対して影森の人達……特にコピー対象の中山さんは動揺していた。

 

「初めてストライクを見送った!」

 

(これで分岐点は通った……。投手戦もそろそろ終わりかな?)

 

ここからは勝ちにいかせてもらうよ!

金原いずみの藤和生活……(藤和高校野球部の登場人物は全てオリキャラ及び他作品キャラになります)見たい?

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