最強のスラッガーを目指して!【本編完結】   作:銅英雄

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県大会2回戦!新越谷高校VS梁幽館高校⑤

試合の前半が終わってグラウンド整備の為に少し休憩。その間に私達は息を整える。

 

「タマちゃんどうよ?私のピッチングは」

 

「まだまだかな。強ストレートがど真ん中に来てヒヤッとしたし。朱里ちゃんのコントロールを見習ってよね」

 

「むー、厳しいなぁ……」

 

ここまでの武田さんの投球数は62球。全力で梁幽館打線を抑えにいっているから、疲れが出始めている。

 

「ヨミちゃんって1日で最高何球投げた事がある?」

 

「う~ん。ダブルヘッダーとかもあったし……」

 

女子の高校野球は7イニングで、それのダブルヘッダーだから大体120球くらいだろうか?私の最高よりも少し多いくらい……。

 

「250球くらいかな!」

 

「は?」

 

思わず声を出してしまった私は決して悪くない。全力投球じゃないとはいえ投げすぎでしょ……。

 

「ちょっ、勘弁してよ!よく今まで壊れなかったね?」

 

本当だよ……。リトル時代の私でもそんなに投げた事ないよ。それでも投げすぎで私は右肩壊したのに……。

 

「250……って言っても全力で投げた事なかったし……。でも今日はタマちゃんが一生懸命リードしてくれて、そのお陰で全力が出せているから、120球くらいでバテるかも」

 

(それでも私よりスタミナあるんだよなぁ……。私ももっとスタミナを付けないとね)

 

「でも調子良いし、決め球でゴリ押ししても耐えられると思うから遠慮なく!」

 

「しないよ!すぐ調子に乗る!」

 

まだ県大会の2回戦なのに、なんだろうこの最終回近い感じは……?

 

「とにかく武田さんは水分取ってしっかりと休む事。後半戦に備えてね」

 

「朱里ちゃんの言う通りしっかりと休んでてよ?」

 

「は~い……。って事でもしも私がバテたら頼むよ朱里ちゃん!」

 

話聞いてた?

 

(……武田さんの奮闘を無駄にする訳にはいかない。だから山崎さん、ここは必ず……!)

 

(うん。ヨミちゃんの為に出る!)

 

吉川さんのストレートを山崎さんは初球で上手く打ってライト前ヒット。そして藤田さんが送ってワンアウト二塁。

 

(くっそ……!これ以上は点をやらん!)

 

『ストライク!バッターアウト!!』

 

3番の川崎さんは三振。吉川さんのピッチングがガールズの時みたいなストレート押しになってきたな……。

 

「すまん。後は頼む」

 

『4番 ファースト 中村さん』

 

「希ちゃん打ってー!」

 

芳乃さんが中村さんを4番に起用したのはランナーを置いて、チームで1番打率の高い彼女を回す為に他ならない。

 

(現に前の2打席でもランナーはいたし、この5回もツーアウト二塁だから、その戦略は的中している……。中村さん自身も生粋のアベレージヒッターで、想定内の球なら思うがままに低い打球へ打ち返す技術もある)

 

そんな中村さんに吉川さんは……。

 

(げっ!)

 

(あっ!)

 

ど真ん中……。スライダーが抜けたのかな?でもこれならいける!

 

 

カンッ!

 

 

「ピッチャー返し!抜けるか!?」

 

本来今打った中村さんの打球は流し打ちとしても100点に近いバッティングだった。しかし……。

 

「なっ!?」

 

中村さんの完成された打撃と、それを全面に押し立てた芳乃さんの戦略を更に敵が上回った。

 

セカンドの白井さんがダイビングキャッチをして、それを上手くフォローするショートの高代さん。2人の守備によってまたもやチャンスが崩れてしまう。

 

(ここまでは想定内。とはいえこのまま投手戦が続くとこっちが不利になる……。その前に手を打っておかないとね)

 

中田さんの3打席目を迎える5回裏が次のターニングポイント。

 

(武田さんのピッチングは良いけど、観客の反応を見るに流れが向こうに行きつつある。でももしこの打席の中田さんを打ち取る事が出来たら……)

 

その瞬間から私達の勝利が限りなく近くなる。

 

『ストライク!』

 

(攻撃の嫌なムードを感じさせない武田さんのピッチング……。やっぱり大したものだね)

 

『ストライク!バッターアウト!!』

 

先頭の白井さんを三振に抑える。尻上がりの武田さんのギアが更に上がった……。今の3球はそれがよく伝わるピッチングだったよ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「こんな良い試合滅多に見られないよ!」

 

「確かに双方譲らずの同点だもんね~!」

 

「ただ少し梁幽館が有利に傾いていますね。先程のファインプレーが響いています」

 

「あのセカンドの守備によってチャンスに点を取れなくしてるもんね……」

 

「しかし新越谷も武田さんの好投によって決して流れを完全には渡さない……。恐らく次の中田さんの打席で試合は動き始めるでしょう」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

3番の高代さんをショートフライに打ち取っていよいよ……。

 

『4番 ファースト 中田さん』

 

「外野は長打警戒!」

 

この3打席目は中田さんを歩かせる訳でも、私がワンポイントで投げる訳でもなく、武田さんが勝負をする。

 

(中田さん……。いざ勝負するとなると威圧感が凄い。だからこそぶつけたかった)

 

(今こそ遥ちゃんとの勝負を続けた成果を見せる時だよ。ヨミちゃん!)

 

(うん!)

 

武田さんと山崎さんはこの中田さんと勝負する時に備えて雷轟との勝負を積極的にやるようになっていた。

 

 

 

ここで話は3日前に遡る……。

 

「朱里ちゃん、何を見てるの?」

 

中田さんの打撃を映像で見てると武田さんが声を掛けてくる。山崎さんも一緒にいた。この2人仲が良いな……。幼馴染なんだっけ?

 

「中田さんのバッティングを見てイメージトレーニング。大体だけど、中田さんが苦手としているコースを予測して頭の中で組み立ててどう抑えるかを考えてたんだ」

 

まぁ実際は清本との1打席勝負を思い出しては清本を中田さんに見立ててるだけだけど……。勝負は3対7で私の負け越しなのを思い出してはムカムカするのを繰り返している。

 

……なんかまたムカムカしてきた。

 

「あ、朱里ちゃん?顔が怖いよ……?」

 

あっ、顔に出てた……。試合の時は常にポーカーフェイスを心掛けてるけど、普段だとどうも感情が表に出ちゃう。それにイメージだけだと具体的なビジョンは浮かばない……か。

 

「こうなったら仮想中田さんを用意するしかないか……」

 

「仮想中田さん?」

 

「幸いうちには中田さんに匹敵する長打力を持っている子がいるからね」

 

「呼んだ?」

 

2人に対中田さんの対策をどうするかを説明しようとすると仮想中田さん……もとい雷轟が私を後ろから抱き付いてきた。

 

「……丁度今から雷轟を呼ぼうと思ってたところだよ」

 

「そっか……。遥ちゃん!」

 

「確かに遥ちゃんなら中田さんにも負けないバッティングと威圧感みたいなプレッシャーがあるもんね」

 

「そういう事。あと暑いから、さっさと離れて雷轟」

 

そんな訳で雷轟を右打席に置いて、山崎さんは捕手として球を受けてもらう事で対策開始。まずは私から……。

 

 

カーン!カーン!カーン!カーン!カーン!

 

 

「全部打たれてない……?」

 

「これで良いんだよ。どのコースが1番打球が飛びにくいか探っていたからね」

 

実際中田さんのデータを調べたところ偶然にも雷轟とコースの得意不得意が被っていた事がわかった。中田さんがなんか可哀想になってきたよ……。

 

「よし……!私はこれで良いかな。次は武田さん」

 

「よーし!」

 

「勝負だよヨミちゃん!」

 

雷轟が武田さんとの勝負に気合いを入れる。すると……!

 

(な、何……?この感覚は?)

 

(これは抽選会の日に遥ちゃんと勝負した時にも感じたプレッシャー……?)

 

どうやら武田さんと山崎さんにも雷轟の放つプレッシャーを感じたようだ。

 

「どうやらバッテリーには雷轟が放つ圧を感じられているみたいだね」

 

「圧……」

 

「圧?」

 

雷轟は何の事かわかっていないみたいだ。無自覚なのか。恐ろしい……。

 

(やはり雷轟にはいつか清本の……というより洛山高校野球部のバッティングを見てもらいたいね。そうする事で雷轟が得られる経験値は大幅に上がる)

 

「とりあえず2人はその状態の雷轟との勝負を続けて。雷轟は常に気合いを入れ続けて」

 

「う、うん!」

 

「わ、わかった!」

 

バッテリーの2人はプレッシャーに慣れてもらう事で中田さんとの対決に備える為に、雷轟は自身の成長の為にそれぞれ練習を続けた……。

 

 

~そして~

 

「これを覚えておけば中田さんとの対決でもきっと役に立つよ」

 

「「つ、疲れた~……」」

 

「私はまだまだ平気だよ!」

 

武田さんと山崎さんは1時間くらい練習を続けてぐったりとしていた。雷轟は元気いっぱいだけど……。

 

「強打者が放つ威圧感は投手のスタミナを多く持っていくからね。私もシニアではそんな相手と何度も戦ったよ」

 

まぁ清本の事だけど……。あっ、またムカムカしてきた。

 

「これを中田さんは持っているって事?」

 

「確証はないけどね。……武田さんは中田さんと勝負したい?」

 

「えっ……?うん、私のピッチングが中田さんに通用するか試してみたい!」

 

武田さんと雷轟との勝率はほぼ互角。雷轟は初心者だからある程度は経験の差で武田さんが上回るけど、中田さん相手だとそう上手くはいかない。2対8くらいで中田さんの勝ちだと思う。

 

「……それなら勝負は3打席目以降ね。それまでは勝負を避ける事」

 

「それが勝つ為……だもんね」

 

「はーい……。ちなみに朱里ちゃんはもしも中田さんと当たる事になったら勝負するつもり?」

 

「どうだろうね。慎重に立ち回れば抑えられないとは思っていないけど……」

 

(やっぱり朱里ちゃんは凄いな……。こんなに自信に満ち溢れているんだもん)

 

「勝負する事になったら私の全部を出し切るつもりでいくよ」

 

私が新越谷に入ってから得たものを使って……ね。

 

 

 

 

 

 

 

そして回想は終わって現在。

 

「おっ、勝負するぞ!」

 

「武田も尻上がりで抑えられると見たか!?」

 

「早川みたいなピッチングを期待してるよ!」

 

観客も2人の勝負を期待しているようだ。あと私は私で、武田さんは武田さんだから。

金原いずみの藤和生活……(藤和高校野球部の登場人物は全てオリキャラ及び他作品キャラになります)見たい?

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