整列が終わって私達は球場の外で待機。
(あと2つ……。あと2つ勝てば私はここで野球を続けられる)
残っているのは準決勝に当たる咲桜、反対のブロックに椿峰と美園学院。強敵しかいないけど、私が新越谷で野球を続ける為には負ける訳にはいかないのだ。
「ちょっとお手洗いに行ってくるね」
「あっ、私も行ってきます」
「遅くなるなよ~」
前科があるから反論出来ない……。山崎さんもトイレらしく、一緒に行く事に。
(しかし山崎さんと2人……というのはどうもあの時のシリアスシーンを思い出す)
変な事にならないと良いけど……。
~そして~
トイレを済ませて戻ろうとすると……。
「ちょっと待ちなさい」
大野さんに絡まれました……。朝倉さんと大島さんも一緒にいるし。
「な、なんでしょうか……」
「……なんでそんなに緊張してるのよ?」
だって大野さん威圧的なんだもの!今日大野さんに三振させられている私からしたら苦手意識を持つのは当然だと思うの!
あっ、でもよく見たら3人共目が赤い。さっきまで泣いてたんだろうね……。
「今日の試合、良かったよ」
「これでうちが勝てば完璧だったんスけどね~」
そう思っていると朝倉さんと大島さんが話を広げる。この2人もコミュ力高いな……。というか敗北を引き摺ってないようにも見える。
「……私達が勝てて良かったです。朝倉さんからは点が取れませんでしたけど」
「それは私が雷轟さんを歩かせたからだと思うよ。もしも雷轟さんとまともに勝負してたらホームラン打たれてたと思うし……」
「練習試合の時も思ったっスけど、あの飛距離はエグかったスからね。あんなのと勝負出来る大野さんは凄いス!」
「……まぁそれほどでもあるわ。もっと褒めても良いのよ?」
「でも結局は打たれてるスけどね」
「あんたは褒めたいのか貶したいのかどっちなのよ!」
「頭が割れるス!」
なんだこのコント……。
「こほん……!この私達に勝ったんだから、絶対に優勝しなさいよね。そうすれば私達が2番目に強かったって事が証明出来るわ」
この人逞しいな……。これもエースの風格だろうか。見習って良いのかは定かではないけど……。
「私達の分まで1つでも多く勝ってきてね」
「頑張るスよ!」
「は、はい!」
朝倉さんと大島さんの激励に山崎さんは良い返事で応えた。誰かの分まで……というのは私自身余り好きじゃない。そもそも私にはそんな余裕はないのだ。
「お断りします」
私がそう言った瞬間、3人の顔がひきつった。大野さんだけは意外そうな目で私を見ているけど……。
「あ、朱里ちゃん……?」
「梁幽館の中田さんにも言いましたが、新越谷は新越谷で戦っています。そこに他校の気持ちを入れる余裕なんて私にはありません。負ける訳にはいかないんですよ……私は」
幸いここにいるのは私の事情をある程度知っている山崎さんだけだし、ぶつけたい事をそのまま口にした。辺りが何とも言えない空気になっていると大野さんが私に問い掛けた。
「……あんた達は来年も全く同じチームで戦えるんでしょう?何故そこまで気負うのかしら?」
大野さんの質問に対して今度は山崎さんが顔をひきつらせている。……まぁ他校の人達だし、別に言っても良いかな?一応周りを警戒してっ……と。
「……私はこの県大会で優勝出来なければ親との約束で新越谷……というよりも埼玉を去る事になります。そうなると負けてしまえば私が新越谷で野球をするのはその日で最後となってしまうんです」
「そう……。道理であんただけ新越谷の中でも気迫が違うと思ったわ。1年生ながらも3年生と同等のプレッシャーと戦っていたのね」
「まぁ県大会さえ優勝してしまえば3年間新越谷で野球が出来ますので、3年生と同じ……というのはまた違うと思います」
「朱里ちゃん……」
それがあの両親との約束なんだ。シニアでも同じ事があったけど、その時はここまで拘ってなかった……。何が私をそうさせているんだろうね?シニアと違って余裕がないから?
「……まぁ身の丈はわかったわ。貴女達は貴女達で全国を目指しなさい。あの怪力女にもよろしく言っておいて。応援してるわ」
そう言って大野さん達は去って行った。怪力女って雷轟の事だよね?確かに清本クラスのパワーヒッターだけど……。
「……私達も戻ろうか」
「そうだね」
(ありがとうございます。大野先輩)
野球をしていた環境は違えど、同じ中学出身の先輩に私は一礼した。
金原いずみの藤和生活……(藤和高校野球部の登場人物は全てオリキャラ及び他作品キャラになります)見たい?
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