4回、5回、6回と武田さんはランナーを許しても、得点までには至らず2回からは無失点で切り抜けている。
一方の大豪月さんは雷轟以外にはバットに掠らせる事すら許さず三振に抑える。全国で洛山と当たった時どうするかも考えておかないとね……!
そして6回裏。こっちの投手は武田さんに代わって……。
「朱里ちゃん頑張ってー!」
「向こうの打線を食い止めろー!」
私が投げる事になった。ライトには前の回で武田さんの代打で出た大村さんが入っている。
「朱里ちゃんと勝負……!」
しかも向こうの攻撃は清本から。でもここを切ると流れはこっちに来る筈……!
(この試合はあくまでも全国前の調整のつもりで投げる予定だったんだけど……)
向こうの面子がガチガチだもんなぁ……。とりあえず私の方は練習中のフォークは投げずにそれ以外でいこう。山崎さんにも了承を得てるしね。
(初球はストレート!)
(これは……速い方のストレートだ!)
カキーン!!
『ファール!』
初球から打ってきたか……。っていうか場外まで飛んだんだけど!?それなら次は!
(速度は同じ……もらった!)
『ストライク!』
(しまった!SFF!?朱里ちゃんの速い方のストレートと球速が同じだから思わず釣られてしまったよ……。次はちゃんと見極める……!)
(追い込むだけなら簡単に出来る。次に投げる球は……)
私が3球目に投げた球は……。
(遅い……。ストレートに見せ掛けた変化球?媒体になっている変化球は……!)
カンッ!
『ファール!』
(合わせられた……。偽ストレートの媒体をSFFにして投げたけど、読まれていたか)
(朱里ちゃん、どんどんいこう!)
(勿論だよ)
その後偽ストレートを連続で投げる私だけど、清本には全部カットされる。打球は全部ホームラン性の打球だし。
『ファール!』
今ので15球目……。これ以上球数を費やすのは良くないな。こうなったらシニア時代に唯一清本を打ち取った球でいく!
(いくよ山崎さん!)
(来て!朱里ちゃん!)
私がシニア時代に清本を打ち取った球……!
(この球は……!)
ガッ……!
清本が打った打球はふらふらと上がって外野が定位置で……って。
(いやいやいや、伸び過ぎですから!ホームランにならないよね!?)
レフトの雷轟はフェンスいっぱいまで下がりぶつかる。なんて馬鹿力なのさ!
(これ以上下がれないよー!)
それでも雷轟は諦めずに腕を伸ばす。その結果は……!
『アウト!』
なんとか雷轟が捕球してアウトになった。滅茶苦茶危なかったよ……。
「惜しかったね和奈」
「完全に詰まらされたよ……」
「朱里さんが最後に投げた球はシニアでも殆んど投げなかったので、意表を突かれましたね」
「朱里せんぱいがあれを投げるのは主に紅白戦で和奈ちゃん相手にだもんね」
「でも2人共ナイスファイトだったよ!」
「ええ、どちらが勝っても可笑しくなかった……。特に速いストレートとSFFは良かったわ」
(朱里が清本さんに投げたのはツーシーム……。他の変化球に比べて決め球に匹敵する球威だったわね。新越谷に入ってからの朱里の成長を私は余り知らない。それは朱里が新越谷に残りたいが為に私達に内緒で練習した成果……と考えるべきかしら)
後続の中田さんと非道さんも打ち取りチェンジとなった。
(でも非道さんはなんか不気味だったな……。武田さんと山崎さんの忠告がなかったら打たれてたかも知れないね。現に2打席目以降の非道さんは武田さんの球を初球から打ってヒットにしているし)
7回表。連合チームは投手を交代。
「私はまだまだ投げられるが……。まぁ良い。頼んだぞ神童!」
「はは……。まぁ精一杯やるさ」
(遂に出て来たか……!)
神童裕菜。白糸台高校の春夏4連覇の立役者であり、複数の変化球を操って打者を翻弄させる。決め球は変化球全部とも言われている程の変化球型投手だ。
7回表の攻撃はクリーンアップからなので、勝ち越しのチャンスだ。
(一足早い新越谷戦か……。サインはどうする?)
(いつも通りで良いでしょう。新越谷は手強い相手ですが、神童さんの変化球があればこの短いイニングで打たれる事はありません)
3番の山崎さんにはスライダー、カーブ、シュートと3種類の変化球で三振。
「ごめん……」
「神童さんが今投げた変化球はどれも決め球クラス……。あれだと狙い球を絞るのも難しいね」
「遥なら打てるよな!?」
「やってみる!」
確かに大豪月さんの豪速球をホームランにした雷轟ならその期待値は高い。でも……。
「こい!!」
(こうして対峙すると威圧感があるな……)
(こちらも全力でいきましょう)
雷轟に対する1球目は……。
『ストライク!』
「な、なんだ今の球は!?」
「……多分ツーシームだね。私や武田さんが投げるそれとは比べ物にならないノビとキレがある」
これまで4球種……。どれかに狙い球を絞るなんて不可能に近い。
『ストライク!』
更に神童さんが今投げたのはシンカー。これも今までの変化球と遜色ないキレと変化量で曲がる。
「圧倒的な変化球ね。今投げているのが高校生最強の投手と呼ばれた人間……」
「神童裕菜ちゃん……。あの子は今すぐプロ入りしたとして、来年には二桁勝利は確実だろうね」
「今後神童さんを攻略出来る人間がいるかいないかで今年の全国大会の勝者が決まるわ」
あっという間に追い込まれた雷轟はバットを短く持ってなんとしても神童さんの球を打とうとしていた。
(な、何がなんでも打たなきゃ……!打ってこの試合に勝つ!!)
(……良い闘志だ。だがまだ負ける訳にはいかない!)
『ストライク!バッターアウト!!』
「は、遥が手も出ずに三振……」
「しかも今神童さんが投げたのはまた新しい変化球だし……」
神童さんが最後に投げたのはフォーク。これも他の変化球と同レベルのキレと変化量だった。
5番の主将も神童さんの変化球にきりきりまい。三振に倒れる。
「と、とにかく切り替えて守りに入るよ!」
「こうなると投手戦だな!」
「それはヨミの時からそうだったんじゃ……?」
そんな空気で守る7回裏だけど……。
カキーン!!
神童さんにホームランを打たれました……。二宮達に攻略方法を聞いたのだろうか?
『ゲームセット!!』
2対3で練習試合は連合チームの勝利となった。
「皆、試合お疲れ様!この後少し休憩してから合同で練習するよ!」
「練習は厳しくいくから、覚悟しておきなさい」
母さんの言葉に何人か震えていた。母さんと六道さんの練習メニューか……。これは厳しいものになるだろうね。
「…………」
「負けちゃったね朱里ちゃん……」
「そうだね。でもこれも私達には良い経験値になった……。全国ではこの借りは必ず返すよ」
「そうだね……」
しかしこの練習試合を切っ掛けに私は調子を崩す事になるのをまだ知らなかった……。
遥「練習試合負けちゃった……」
朱里「まぁ勝つ事もあれば負ける事もあるよ」
遥「全国でこの借りは絶対に返すよ!!」
朱里「燃えてるねぇ……」
金原いずみの藤和生活……(藤和高校野球部の登場人物は全てオリキャラ及び他作品キャラになります)見たい?
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