藤原先輩のジャイロボール云々の事は先に2回戦に向けてのミーティングをやってから……という話に落ち着いたので、なんとか忘れてもらわないと!
「2回戦の相手は鹿児島県代表の永水高校!」
「確か一昨年までシードに入ってたところだよな……」
「その通り。シード圏外に落ちたとはいえ段々と強くなっているところだね」
白糸台とか洛山が強引にシードに割り込んできただけで、シードじゃなくなったとはいえ永水も優勝候補の一校には変わりないしね。
「エースの十曽さんと4番の石戸さん、そして1番を打っている神代さん。特にこの3人は要注意だよ」
「石戸さんは他の高校の4番と比べると長打力は控えめだけど、ほぼ毎試合猛打賞の成績を残している……。十曽さんは美園学院の園川さんと球種が似ているから、その辺りを意識すれば一方的にはならないと思うよ」
「園川さんと似ているという事は十曽さんの球種は……!」
「スライダー、シュート、ストレート……だな」
ちなみに石戸さんの打撃タイプは友沢と金原の中間に属している。狙おうと思えばホームランも狙う事も出来ると思うから、繋ぐタイプの4番だね。
「勿論データにはない球を投げる可能性も捨てきれないので、慢心は出来ないけどね」
(特に神代さんが起こす神を降ろすと言われている行為……。私も母さんに聞いて半信半疑だけど、映像で見た神代さんのプレーはとにかく安定していない。その神様が何か関係あるのかな?)
あと十曽さんはパワータイプの投手でもあるから、ストレートに強く、パワーがある雷轟や藤原先輩が2回戦の中心になるだろう。あとは主将と中村さんか……。
(それに合わせて打順も考えておこうかな?これも芳乃さんと藤井先生に相談だね……)
それからも永水高校のミーティングは十数分に渡って続き、その後は……。
「朱里ちゃん!」
「な、何かな……?」
「理沙先輩がジャイロボールを投げられるようになった経緯を教えてください!!」
「お願いします!!」
武田さんと芳乃さんが藤原先輩がジャイロボールを投げるまでの経緯を私に詰め寄って聞いてきた。近い近い近い!
あと雷轟と山崎さんと息吹さんとまでこっちに詰め寄ってくるのはなんで!?他の皆も詰め寄ってないだけで、興味津々で私の事を見てるし、当の本人である藤原先輩は苦笑いしてるし……。もう話すしかないか……。
「……藤原先輩のストレートが私達投手陣の中でもノビとキレがあるのは皆も知ってるよね?」
「確かに……。あんな重そうなのは中々見られないよな!」
だから重そうって球筋の話だよね?藤原先輩の額に青筋浮かんでる(ような気がする)から、迂闊な発言は止めようね!
「更に球速もかなり速い部類で、これは伸ばせばかなりのものになる……って思った私は藤原先輩にそのストレートを活かせるように投球フォームから足の踏み込み方、最近ではボールのキレを意識して投げてもらうようにしてもらったよ」
「ボールのキレ……。だからあの時の練習で投げた球がジャイロボールみたいに螺旋回転してるように見えたのか」
「本来ジャイロボールというのは普通のストレートとは違って全身の回旋運動から腕を自然に捻りながらボールを捻り出す事でボールがドリルのように回転して打者に向かってくるものです」
私の話を武田さんと息吹さんがメモしながら聞いていた。もしかして投げるつもり?
「……で、それによって縦回転では何度も受けてしまう空気抵抗が正面に縫い目の現れにくいジャイロ回転ではごく僅か……。流体力学による実験でも縦回転とジャイロ回転では空気抵抗の値が50%も違うという結果が出ているらしいです」
私の説明に何人かは目を回していた。もしかしたら私達もジャイロボールを投げる新井さんに当たるかも知れないんだから、聞いていて損がない話だと思うんだけど……。
「でもまだまだ安定して投げられないわ。珠姫ちゃんのリードがなかったら今日の球だってどうなるかわからなかったし……」
「ジャイロボールの完成形が白糸台の新井さんの投げる球ですね。参考の為に見ておいてください」
私は西東京予選で新井さんが投げているシーンを撮っている映像を見せた。
「す、凄い螺旋回転してるよ!」
「これは俗に言うハイスピンジャイロ……と呼ばれる球。藤原先輩の投げたのはジャイロボールと比べてわかるようにボールの回転が更に激しく、打者の手元に伸びてくる……。この球を打つのは難しいだろうね」
「これがジャイロボールの完成形なのね……」
「理想形過ぎるくらいですけどね。無理をすると怪我の元になりかねませんので、ゆっくり練習していきましょう」
「わかっているわ。朱里ちゃんも練習に付き合ってね?」
「私で良かったら是非お願いします」
正直私の今後の参考になるから、断る理由がない。私がジャイロボールを投げるのは無理でも、ストレートの威力の底上げにもなるかも知れない……。それだけでも充分だ。
「わ、私も!朱里に変化球のコツとか教えてくれる?」
「う、うん。良いけど……」
息吹さんが対抗意識を燃やしている……。同じ時期に投手を始めた藤原先輩に負けてられないのかな?それともジャイロボールも投げようと試みるのかな?
「あっ、ズルい!私も私も!!」
今度は武田さんが2人に対抗意識を……。君は私が何かしなくても凄い勢いで成長するじゃん……。むしろ私が武田さんのピッチングを参考にしたいくらいだよ!
「じゃあいっその事4人でそれぞれ思った事を言い合おうか。その方が互いの為にもなるしね」
「あっ、じゃあ4人の球を捕ってみたい」
「確かに捕手の山崎さんがいるとありがたいね」
という訳で私達投手陣と山崎さんによって投手能力の底上げを行った。
武田さんと息吹さんは新しい球種を、藤原先輩は今投げられるジャイロボールを如何に強化するか私に聞いてきた。
ちなみに私のイップスは3人にバレました……。
(私の方も早くイップスを治さないとね……!)
私だってこの3人には負けたくない。最後に新越谷でエースナンバーをもらうのは……私だ!!
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