私達は朱里ちゃんがイップスを克服する為に少しでも多くの練習をしに練習場へと向かった。
「あれ?向こうから誰か来るよ?」
ヨミちゃんが前から人が来ると言っていたので、私達は通行の邪魔にならないように一列に並んでその人が通りやすくする。
「今擦れ違った人のユニフォーム……どこのかしら?」
「確か長野県代表の清澄高校のユニフォームだったと思うよ」
「清澄……?聞いた事がないところだね」
「長野だったら風越とか軽井沢実業とかが全国常連だから、そこに勝った清澄高校は間違いなく強豪だよ」
「ほぇぇ……。そんなチームもいるんだねぇ」
今の新越谷も清澄と似たような状況なのかな……?そう思って朱里ちゃんに聞こうとしたら……。
「朱里ちゃん?汗が凄いよ!?」
「……ちょっとね。ごめん、手を貸してくれないかな?」
朱里ちゃんを見ると大量に汗をかいていて、震えて立ち竦んでへたりこんでいた。
(もしかして今擦れ違った人と何か関係が……?)
私は朱里ちゃんに手を貸して、朱里ちゃんはゆっくりと立ち上がる。
「……ありがとう。助かったよ」
「それは別に良いけど……。それよりもさっき擦れ違った人は朱里ちゃんの知り合いなの?」
「あの人は……」
震えが収まった朱里ちゃんは一呼吸おいてからさっき擦れ違った人について話し始める……。
さっきは4人に情けないところを見せちゃったなぁ……。心配させちゃったし、私は宮永咲さんについて話し始める事にした。
「あの人は……宮永咲。私がリトル時代に3度対戦して私が1度も勝てなかった人なんだ」
「あの朱里ちゃんが……1度も勝てなかったなんて……!」
「さっき朱里が震えていたのはそれを思い出したからなのね……」
「でもそんな怖そうな人には見えなかったよ?」
「見た目こそは可愛らしい人なんだよ」
年上だけど……。
「……それはあの人と対戦して初めてわかると思うから、それについてはその時にしか言えない。まぁとにかく私はあの人に打たれまくったって事だよ」
宮永さんが本当に凄いのはそこじゃない……というのを後に気付いた私は彼女に負けないように練習して、もっと凄い球を投げようと奮起した結果右肩を壊したんだけど、それはここで言う事じゃないから私の胸に仕舞っておこう……。
「あれ?宮永って確か……」
「宮永照さんが去年ドラフトで上位指名された選手よね。プロの中でも数少ない二刀流の……」
芳乃さんと息吹さんが宮永という名字にいち早く反応する。武田さんと山崎さんもそれに頷く。
「その宮永照さんの妹がさっき擦れ違った咲さんなんだ」
「嘘!?」
「そんな凄い人がどうして無名校に……?」
「その辺りの理由はわからない。シニアの舞台では1度も見る事も聞く事もなかったし、その間に宮永さんが何をしてたのかも私は知らないからね」
姉の照さんの方は長野から東京に行って野球を続けていたみたいだけど、宮永さんは空白の3年間どうしてたんだろう……?
「……それと清澄高校には川越シニア出身の先輩がいるんだ」
「朱里ちゃんの先輩さんが……。どんな人?」
「一言で言うなら野球を教えるのが天才的に上手い人……かな?」
「野球を教えるのが……」
「天才的に上手い人……?」
私の説明に4人共ピンと来ていないみたい様子だった。まぁこれだけじゃわからないか……。
「清澄高校の野球部はその先輩と宮永さん以外の選手達は全員この春に野球を始めた人ばかりなんだ」
「ええっ!?」
「メンバーの殆んどが私や遥や白菊のような初心者しかいないって事なの……?」
「そうだね。大村さんみたいな……っていうのは良い例えかも。清澄の野球部メンバーは各部活でレギュラーが取れなさそうな人達に野球の素晴らしさを教えられて野球部に入った人達が殆んどらしいし」
ちなみにこれは金原と二宮から聞いた。本当にあの人は野球を教えるのが上手い……。たったの4ヶ月で全国クラスにまで育ってるもん。
「そんな清澄が1回戦で藤和に勝っているって言うんだから凄い話だよね」
「藤和って……いずみちゃんがいるチームだよね?」
「うん。去年も全国でかなりの成績を残した高校なのに……」
「私達が清澄と当たるとしたら決勝戦……。それまでには大きな山が幾つかあるね」
例えばシードで去年準優勝の海堂学園高校。清澄の2回戦の相手がその海堂だから、向こうからしたら大きな山の1つだろう。
私達は私達で準々決勝で洛山、準決勝で白糸台という大きな山がある……。
(それでもあの人と宮永さんなら海堂に勝つのは不可能じゃないって思ってしまえるなぁ……)
案の定……と言うべきか、翌日の清澄対海堂の試合は6対5で清澄高校が勝利。この結果がわかった私達はよりいっそう清澄高校を警戒するようになった。
金原いずみの藤和生活……(藤和高校野球部の登場人物は全てオリキャラ及び他作品キャラになります)見たい?
-
見たい
-
見たくない