最強のスラッガーを目指して!【本編完結】   作:銅英雄

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全国大会準々決勝!新越谷高校VS洛山高校⑤

5回表。ワンアウト二塁のチャンスだ。しかし……。

 

『ストライク!』

 

(速い……。朱里も遥もこんな速い球を打っていたのね)

 

カウントツーナッシングで追い込まれた藤田さん。まぁ大豪月さんのストレートに手が出ないみたいだけど……。

 

(でも……!)

 

「これで三振だ!」

 

(どんなボールを相手が投げようともバットを振り抜く事を忘れない……それを朱里から教わったのだから!)

 

(例え長打力のない選手でもバットを振りさえすれば必ず何かが起こる……。これが1人の打者としての仕事なのだから!)

 

それこそ私が藤田さんにアドバイスした打撃なのだから……!

 

 

 

それは全国大会出場を決めた後の練習での話……。

 

「朱里、ちょっと良いかしら?」

 

「どうしたの?」

 

「私のバッティングについてなんだけど……」

 

藤田さんは今の自分の役割について私に話してくれた。ずっと送りバントや四球狙いのバッティングスタイルである事を……。

 

「……私は今のままでも良いと思うけどね」

 

「でも……格上を相手にする時に今のスタイルが通用しなくなったらって考えると……」

 

「成程ね……」

 

藤田さんも変わってきているね。少し前の藤田さんならなら格上相手と当たった時にやる前からどこか諦めている……そんな印象を持ってたけど、全国出場を決めてからは藤田さんだけじゃなく、色々な人達が少しずつ変わり始めている。

 

「……とはいえ私もアドバイス出来る程余裕はないからね。だから1つだけ。どんな相手でもバットを振り抜く事」

 

「……それだけで良いの?」

 

「勿論見逃しも大切だけど、狙い球を絞ってバットを振るだけでも全然違うと思うよ」

 

「狙い球を……絞って……」

 

「藤田さんの場合はこれまで通りのスタイルを維持しつつも迷った時や打てなくなってきた時にそれを思い出していけば良い」

 

「成程……。ありがとう朱里。胸のつっかえが取れた気がするわ」

 

「私で役に立てたのなら何より」

 

当たり前の事しか言ってないけど、それで藤田さんが救われたのなら……まぁ良いかな。

 

 

 

 

ガッ……!

 

 

『ファール!』

 

「当てた!?」

 

(な、なんとか着いていけたわ……。これも朱里のアドバイスと洛山戦に備えて速球打ちの練習をしたおかげね)

 

「良いぞ菫ーっ!」

 

「打てるよーっ!」

 

連合チームとの練習試合以降大豪月さんの投げるストレートに備えてマシン打撃を沢山したからね。後は前に飛ばせるかどうかだけど……。

 

(仲間の声援で目の色が変わった……。激情タイプの打者は何を起こすか把握出来ないから厄介だね~。ここから先の全員が同じタイプの打者なら真っ直ぐだけだと厳しいかもですね~)

 

(それなら投げるか……。ストレートしか投げないという私の風潮を払拭させようではないか!)

 

(了解です~)

 

4球目に大豪月さんが投げたのは……。

 

(なっ!?)

 

『ストライク!バッターアウト!!』

 

あの速度で落としてきた。あれは私が投げるのものとは比べ物にならない……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「大豪月が最後に投げたのはSFFか。私達の試合でも10球投げたかわからないが、まさかこんなに早い段階で見られるとはな」

 

「そんなに珍しいですか?」

 

「大豪月は基本的にストレートしか投げないからな。本人曰く認めた相手にしか変化球は投げないそうだ」

 

「……それをこの場面で投げるという事は、藤田さんを、新越谷を認めた……と?」

 

「恐らくそうだろうな」

 

「大豪月さんが投げる変化球はSFFだけですか?」

 

「私が知っている限りだと他には高速スライダーと高速シンカーも投げるぞ。まぁあいつ自身が新しい変化球を身に付けているかも知れないから、それが全てとは言えないが……」

 

「そうですか……。新越谷は大豪月さんの変化球を打てると思いますか?」

 

「さぁな……。大豪月の投げる変化球はストレートと遜色ない球速だが、幸いストレートよりも若干遅い。速度の違いに気付く事が出来たのなら、もしかすると……って感じだろう」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「最後に投げたのは変化球だったわ……」

 

「あのスピードで変化するのかよ!」

 

(藤田さんに投げた球はSFFか……)

 

しかも私が投げるよりも速く、しかも変化も鋭かった……。更なる成長の為にもっと見ておきたい。それに……。

 

(まだ大豪月さんは変化球を隠し持ってる……。それ等を引き出させる前に出来るだけ打っておきたい)

 

でも大豪月さんの投げる球に着いてこられる人はどれだけいるだろうか?

 

9番の武田さんも三振に終わって、5回表が終了。

 

(2点差しかないのは不安だけど、あの洛山を相手に食らい付いている武田さんならもしかしたら……!)

 

武田さんも負けじと9番から始まる洛山打線を3人で抑えて5回裏が終わる。

 

(洛山が1イニングで無得点っていうのも珍しい。これは恐らく神童さんを相手にした時以来の筈……!)

 

何にせよあと2イニング……。なんとか逃げ切りたいところだ。

 

「お疲れヨミちゃん」

 

「ありがとー!」

 

「体力の方はどう?」

 

「私はまだまだいけるよ!」

 

11点も取られて尚も折れない不屈の闘志とスタミナ……。これが本物のエースなんだね。ダブルヘッダーありで全力投球じゃないとはいえ、最高で250球投げたというだけあるね。

 

(この試合で私は武田さんに完全に遅れを取ったとわかっただけでも収穫かな……)

 

私にとって1番のライバルは大豪月さんでも、神童さんでもなく、武田詠深なんだと……改めてそう感じた瞬間でもあった。

 

(私に今のピッチングスタイルを教えてくれたあの人は……ライバルというのは少し違う気がするな)

 

シニア時代から続けているストレートに見せ掛けた変化球を私に教えてくれたどことなく雷轟に似ているあの人は……今頃どこかで野球をやっているのだろうか?




遥「リードを広げる事が出来なかったよ!?」

朱里「大豪月さんが温存していた変化球に対してきりきりまいだもんね。あと2イニング……。勝って準決勝に駒を進めたいね」

遥「それよりもどことなく私に似ているあの人について聞きたいんだけど?」

朱里「内緒。少なくともその人が登場するのは大分先の話だからね」

遥「具体的には?」

朱里「来年の夏以降」

遥「それってつまり……」

朱里「今のペースだと最低でも50話以上先になるね」

遥「そんな先の伏線が今出てくるとは……」

朱里「次回で洛山戦は決着になるよ」

遥「打ち合いを制するのはどっちかな!?」

朱里「それが私達だと良いね」

金原いずみの藤和生活……(藤和高校野球部の登場人物は全てオリキャラ及び他作品キャラになります)見たい?

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