6回表。私達の攻撃は1番からの好打順なんだけど……。
『ストライク!バッターアウト!!』
『ストライク!バッターアウト!!』
中村さん、山崎さんと連続で三振になってしまう。
「要所で投げてくるSFFに上手く反応出来なかったよ……」
「せめてストレートとSFFの違いさえわかっていれば何とかなるんだけどなぁ……」
こればかりは何ともならなさそう……。あと一歩なんだけど、その一歩が届かない現状だ。
「あれ……?」
「どうしたの遥ちゃん?」
「私の気のせいかも知れないけど、大豪月さんのストレートとSFF……微妙に速さが違うような……」
えっ……?もしかして雷轟ってばそんな細かな違いがわかるっていうの?
「雷轟、詳しく教えて」
「えっ?うん……」
雷轟は自身が感じた大豪月さんのストレートとSFFの違いを私達に説明した。
「あとは……腕の振りがSFFの時はストレートの時よりも振りきってるような気がするよ」
「な、成程……。それが本当なら……!」
私は主将に雷轟の言う大豪月さんの腕の振りに注目するように助言した。
「わ、わかった……。でも上手くいくのか?」
「確証はありませんが、やってみる価値はあります」
不確定要素でしかないけど、大豪月さんを攻略するチャンスだ。やれる事は全部やっておきたい……!
『3番 センター 岡田さん』
「何やらコソコソと作戦会議をしていたみたいだが、私の球を小細工で打てると思ったら大間違いだ!」
大豪月さんの1球目。
(雷轟が言うには大豪月さんの腕の振りを見て……)
(腕を振りきってるとSFFだ……!)
ガッ……!
(ム……?)
(これは……!)
『ファール!』
当てた……。しかも投げたのは間違いなくSFF。本当に雷轟の言う通り腕の振りが関係あるの?
2球目は……。
(さっきよりも腕を振っていない……。ストレートだ!)
カンッ!
大豪月さんの投げるストレートを主将が捉えてヒットになった。
「やったーっ!」
「ないばっちキャプテーン!!」
ツーアウト一塁で打者は雷轟。全国大会で恐らく1、2を争う注目の対決……雷轟対大豪月さんの勝負が幕を開けようとしていた。
「岡田が大豪月のストレートを上手く捉えたな」
「それだけではありません。その前のSFFもタイミングは完璧でした」
「……もしかして大豪月のピッチングに何か癖があるのか?」
「ここからではよくわかりませんね。ですがもしも大豪月さんに何かしらの癖があって、それを新越谷の誰かが見抜いたとしたなら……」
「大豪月は攻略される……という訳か」
「もしも本当にあるかも知れない大豪月さんの癖を見抜いたのなら、この回で勝負が決まるかも知れません」
「丁度打席に入っているのは今日全打席でホームランを打っている雷轟か……」
「この全国大会でも見所トップクラスの勝負ですね」
「かっ飛ばせ遥ーっ!」
「遥ちゃんなら打てるよーっ!」
皆は雷轟への声援を忘れない。勿論私も……!
「来たな雷轟遥……。あの時の借りを全力で返させてもらおう!」
大豪月さんはこれでもかと捻って構えている。
「これが……私の……全力だ!!」
大豪月さんはこれまでよりも速いストレートを雷轟にぶつけた。
『ストライク!』
雷轟はそれを見送る。本当に見送っているのか、それとも手が出なかったのか……。
(凄いストレート。こんな球を間近で見られるなんて……。野球を始めて良かった。あの時、朱里ちゃんに出会ってなかったらこんなに球を打つ機会なんてなかったからね……!)
2球目。大豪月さんは1球目よりも勢い良く投げる。
(腕は振りきってる……。SFFだ!)
カキーン!
『ファール!』
SFFにもタイミングバッチリ。あとは打つだけなんだけど……。
(あの時と同じ……。腕が痺れて、それが勝負の楽しさを助長させてくれる……!)
(神童や清本では味わう事のなかった緊張感……。これが私の求める野球だ!)
カウントはツーナッシング。奇しくも連合チームと練習試合をした時と同じ展開になってきてる。
(ストレートもSFFもタイミングが合ってるね~。本来なら高速シンカーとかも織り混ぜたいんですけど~)
(……いや、雷轟遥にはこれだ!)
(ですよね~。では最高の球で打ち取りましょう~)
(勿論だ!)
「これで……三振だ!!」
(腕の振り、角度、大豪月さんの投げる球はストレート?SFF?それともまだ見ぬ変化球……?いや、考える前にバットを振り抜く!!)
カキーン!!
大豪月さんが投げたのは恐らくストレートだろう。それを雷轟はそれを完璧に捉えて……。
ドンッ!
スタンドへと叩き込んだ。ホームランだ。
『ホームラン!』
雷轟がホームランを打った事によって15対11とリードを広げる事が出来た。
『な、なんとあの豪速球をスタンドに叩き込みました!雷轟選手によるツーランホームランです!』
『先程投げたストレートは今まで投げた物とは比べ物にならない球速でした。恐らく高校新記録でしょう。それを打った雷轟選手もお見事です。これは大きく展開が動くかも知れません』
(解説の言う通り展開はこれで大きく動いた筈……。このまま勢いを掴んでいきたいね)
「大豪月さん……」
「フハハハ!流石だ雷轟遥!今回は私の負けだが、次に戦う事があれば、更にストレートに磨きをかけて挑んでやるぞ!!」
(……どうやら心配なさそうですね~)
しかし5番の藤原先輩は大豪月さんの球に当てるもファーストフライに打ち取られてしまう。
「さぁ、この勢いを維持して勝利を掴みにいくぞ!」
『おおっ!』
6回裏は3番の非道さんから。
(まさかうちが白糸台以外にこんなにてこずるとはね~)
この試合においての対非道さんの成績は決して良くない……。ここで打たれたら流れは向こうにいきそうだ。
(非道さんにジャンケンは余り通用しない……。それなら!)
武田さんは1打席目で非道さんに投げたあの魔球を同じコースに再び投げる。
(1打席目と同じ球とコース……。でも私にはわかるよ~。あの時とは何か違うって~!)
カキーン!
1打席目と同じく掬い上げる様に低めに投げられたあの魔球を打つ。あの時はホームランだった。でも……!
『アウト!』
今回はセンターフライ。非道さんを打ち取った。
(打ち取られたか~。まぁ今打った球はビリビリと腕が痺れたからね~。でも清本ちゃんは同じようにはいかないよ~?)
ワンアウトで清本の打順。
(まさか非道さんが打ち取られるなんて。武田さん……!朱里ちゃんと同じ天才レベルの投手だね)
(清本さんかぁ……。連合チームとの練習試合でも何度か勝負したけど、殆んどホームラン打たれてなぁ)
(それでも打ち取れるよ。今のヨミちゃんなら!)
清本相手に敬遠は通用しない。かといって甘く入るとホームランは確実……。
(私のピッチングを……清本さんにぶつけるだけで良い!)
(武田さんは私との勝負を楽しんでくれている。今まで私と勝負した人は皆2度目以降になるとどこか怯えていた……。武田さんにはそれがない……っていうのが私も嬉しいんだ!)
(負けられない……!)
(でもこの勝負を楽しみたい……!こんな感情……川越シニアと洛山の皆以外には感じられなかった)
外野からだとよくわからないけど、武田さんも清本もなんだか楽しそうに見える。
二宮から私と勝負する為に川越シニアのチームメイトは散り散りになった……という事を聞いた事があるけど……。
(少なくとも清本からは私が投げなくとも武田さんとの勝負を楽しんでるの……かな?)
何にせよ新越谷のエースの力を見せてやってよ武田さん。
カキーン!
武田さんが投げたのは強ストレート。清本はそれを捉えて外野まで運ぶ。しかしその打球は……。
『アウト!』
ライトを守っている私のミットに収まった。
(私は清本に殆んど勝った事がない……。でも武田さんは勝ったんだね)
清本を打ち取って味方として嬉しいような、過去に清本に何度も打たれている私からしたら武田さんに先を越されて悔しいような……そんな感情が渦巻いていた。
(……でも清本を打ち取れたのは大きい。武田さんも段々打たれなくなってきたし、あと1イニングで4点差を返される可能性はかなり低くなった!)
それでも最後まで油断は出来ない。一応前のイニングから私達投手陣は肩を作る為にキャッチボールをしているけど、武田さんの調子を見る限りだと多分出番はなさそうかな……。
~そして~
『アウト!ゲームセット!!』
最終回も武田さんはピンチを作りつつもリードを守って洛山高校の猛攻から逃げ切った。
『試合終了です!15対12で新越谷高校が洛山高校を破りました!』
『準決勝は白糸台と新越谷になりましたね。白糸台と洛山の過去2年に渡る因縁もここで終わった……と考えると少し寂しく思いますが、新越谷との試合が洛山以上の熱い戦いになる事を期待しています』
危ない場面しかないように思ったけど、準々決勝突破!
遥「準々決勝突破!」
朱里「過去最大の打ち合いをした気がするよ。投げてないのに、くたくただ……」
遥「私は楽しかったよ?」
朱里「雷轟はホームラン連発してたもんね」
遥「次は準決勝だね!」
朱里「白糸台との戦いか……」
遥「神童さんにリベンジしなきゃ……!」
朱里「……私も神童さんには借りを返さなきゃね」
金原いずみの藤和生活……(藤和高校野球部の登場人物は全てオリキャラ及び他作品キャラになります)見たい?
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