今日は準決勝……白糸台との試合だ。
「今日はよろしくな」
「良いゲームにしましょう」
神童さんと二宮が声を掛けてくる。この2人の余裕がこの試合で崩れる事を祈ろう。
『よろしくお願いします!!』
整列と挨拶を済ませて、互いにオーダーを発表する。
1番 レフト 雷轟
2番 キャッチャー 山崎さん
3番 ファースト 中村さん
4番 サード 藤原先輩
5番 センター 主将
6番 ショート 川崎さん
7番 ピッチャー 私
8番 セカンド 藤田さん
9番 ライト 息吹さん
今日は雷轟が1番の日。神童さんの球を打つ為に1打席でも多く回るようにしたいからね。それに……!
(今日は私が先発だ……。全力でいかせてもらう)
「頑張ってね朱里ちゃん!」
普段はぶー垂れてる武田さんも今日は普通に応援してくれてるし、その期待にも応えたいね。
そして相手のオーダーは……。
1番 ショート 亦野さん
2番 セカンド 渋谷さん
3番 ピッチャー 新井さん
4番 センター 大星さん
5番 ライト 神童さん
6番 サード 鮫島さん
7番 レフト 九十九さん
8番 ファースト 神宮寺さん
9番 キャッチャー 二宮
向こうの先発は新井さんか。一応昨日のミーティングで新井さんの事もある程度触れているけど……。
(神童さんの変化球を1球でも多く見てほしくて雷轟を1番に添えたけど、二宮に読まれていたっぽいね……)
(やはり雷轟さんを1番に置いてきましたか……。新越谷はこの大会で奇数の試合で雷轟さんを1番に置いていく傾向を確認したので、もしかしたら……と思い神童さんを先発から外したのが功を奏しましたね)
オーダーの読み合いでは負けたか……。まぁ速球に強い藤原先輩を4番に繰り上げたのが幸いかな?今日私達は後攻だから、まずは相手打線を抑えないとね……!
『さぁ間もなく始まります。新越谷高校対白糸台高校。試合の実況は七瀬が、解説には白糸台のOGである宮永照プロに来てもらっています』
『よろしくお願いします』
『宮永プロ、今日の試合の見所はどこになるでしょうか?』
『この試合は新越谷も白糸台も投手に注目したいですね』
『……と言いますと?』
『先発の新井選手は今年度に入って大きく成長した投手の1人ですし、新越谷の先発である早川選手は昨年のシニア全国大会で優勝まで登り詰めた川越シニアのエースです。まずは序盤の投げ合いでどちらが主導権を握るか……楽しみです』
な、なんか宮永プロが私の事を大きく持ち上げている気がするんだよ!
『プレイボールです!』
とりあえず足元を整えて投げていこう。王者白糸台相手に私のピッチングが通用するか……。それを確かめる良い機会だからね。
『1番 ショート 亦野さん』
(1番の亦野さん。春大会では早打ちを仕掛けてヒットを打つタイプだった……)
戦術面においても二宮によって大きく変わっている可能性もある。その戦術と春大会までの戦術を織り混ぜてくるから、どちらの戦術を使うか見極める為にもここは様子見だね。
(ここは……で!)
山崎さんのサインは私でお馴染みの偽ストレートだ。
(了解)
本来偽ストレートはスタミナ消費を抑える為にある人から教わったものだ。クリーンアップ以外の一巡目はこれでいこうと思う。
『ストライク!』
(見送りか……。二宮に球の性質を聞いているだろうから、恐らく偽ストレートの媒体を探っているんだろう)
未だに金原にもバレてないんだ。そんな簡単には打たせない!
『ストライク!バッターアウト!!』
まずは1人。今日は全員三振させるつもりで投げ抜いてやる!
「おお~。先頭打者を三振に抑えたね~」
「今日の朱里ちゃんは絶好調みたいですから、余程の相手じゃない限りは打たれないと思います」
「まぁ早川朱里も一流の投手だからな。神童みたいな奴が相手でもない限りは小細工である程度は誤魔化せるだろう。現に亦野は振り遅れている」
(それもこの打席限り……だろうがな)
「お疲れ様です亦野さん。朱里さんの球はどうでしたか?」
「ああ、二宮の言う通りストレートに見せ掛けた変化球だったよ。私に投げてきたのは多分カーブ、スクリュー、SFFかな」
「そうですか……」
(球の仕組みをわかっていても簡単には打たせない……。流石は朱里さんですね)
「渋谷さん、出来れば朱里さんの持ち球を多く引き出してください」
「うん……。わかった」
「ミズキってば張り切ってるね~!」
「それ程この試合に本気なんだろう」
「私はいつも通りです」
「嘘だっ!!」
2番の渋谷さんは二宮みたいに粘り打ちを得意としている。この1打席目は出来れば抑えたいところだけど……。
(次は……で!)
(OK)
私は山崎さんの構えているミットに目掛けて投げる。それだけで良い。
『ストライク!』
(見た感じはストレートと変わらないけど……)
『ストライク!』
(瑞希ちゃんの言う通り僅かに変化してる。今のはカットボール……かな?)
(追い込んだ……けど、1球も振ってこないのは妙だな……)
(流石に1球くらいは振らないと不自然かな……?)
『ストライク!バッターアウト!!』
渋谷さんも三振に抑えた。3球目だけ振ってきたのが私からしたら不自然極まりないけど……。
(まぁもらえるアウトはもらっておこう)
「……早川さんが投げたのはカットボールとパームボールかな?遠目から見たらストレートと変わらないかも」
「やはり朱里さんは持ち球を増やしてきましたね」
「ストレートに見せ掛けた変化球って本当なんだ?」
「なんだ、信じてなかったのか?」
「センパイ達があんな遅いストレートにここまで抑え込まれているなら、信じるしかないね~。まぁこの大星淡ちゃんに任せなさい!」
「その前に新井さんがいます」
『3番 ピッチャー 新井さん』
(新井さんもクリーンアップを打てるレベル……。清本や雷轟程じゃなくても、迂闊に攻めればホームランを打たれるだろう)
クリーンアップに入ったし、新井さんにはストレートを投げよう。
(……って事で良いかな?)
(うん、思いっ切りきて!)
山崎さんからもOKをもらったので、全力のストレートを新井さんにぶつけた。
『ストライク!』
(な、なんだ今のストレートは……?私の投げる球よりも遅い筈なのに、手が出なかった……)
初球は見逃し。見送ったのか、手が出なかったのか……。何にせよワンストライク頂きました!
「今のストレートは中々良い感じですね~」
「ウム、その辺の奴等では決して打てない球だな!」
「あれが朱里ちゃんの決め球とも言えるストレートです」
「確かに初見だと手が止まりそうだね~」
「球速自体は私や新井の方が圧倒的に速いが、あのストレートは速度ではなく勢いが違う。ただ速いだけで打てないのなら、埼玉の熊谷実業にいた久保田という投手がもっと騒がれている筈だ」
(……でも今1番速い球を投げるのは大豪月さんなんですよね~)
「今早川が投げたストレートはこれまでとは違うな」
「梁幽館戦や咲桜戦で投げていたものよりも球威が増しています」
「へー、あんな球も投げられるんだ……」
「私達に投げた球は手を抜いていた……と?」
「いえ、あれはあれで朱里さんの全力でしょう。スタミナ消費を抑える為のものではありますが……」
「何にせよ勝負の時が楽しみだね~!」
「そうだな。一応早川からホームランを打った事はあるが、新井に投げている球は私には投げてこなかった……」
「朱里さんの持ち球は神童さん以上です。当てるだけなら難しくありませんが、前に飛ばすとなると朱里さんが持つ球種を散らすだけでそれが困難になります」
(新井さんに投げているストレート、渋谷さんに投げたストレートに見せ掛けたパーム……。恐らくそれ以外にも私が知らない球種がきっとあるでしょう。それなら今回の私の目的は朱里さんの球種を全て引き出す事ですね)
『ストライク!バッターアウト!!』
(……1打席目は手が出なかったが、次は絶対に打ってやる)
『早川選手、白糸台の打線を連続三振で切り抜けました』
『1打席目は様子見……。それを白糸台の選手達も、早川さん自身もそう思っているでしょう』
『そうなると白糸台が動き始めるのは2打席目以降になる……という事ですか?』
『恐らくですが……』
(気になるのは二宮さんの打順……。裕菜の話によると二宮さんは情報収集に長けている。だとしたら本当に始動するのは二宮さんの打席からである可能性が高い)
なんとか3人で切り抜けたか……。これから先も同じようにいかないだろうし、2打席目以降の白糸台打線を私は抑えられるだろうか?
遥「準決勝開始!1回表は朱里ちゃんの好投で3人共三振で終わらせたよ!」
朱里「まぁ1打席目は様子見だろうね」
遥「次回は裏の私達の攻撃だね」
朱里「雷轟はこの準決勝で1番だから、いっぱい打順が回ってくるよ」
遥「神童さんも新井さんも凄い球を投げるから、楽しみだよ!」
金原いずみの藤和生活……(藤和高校野球部の登場人物は全てオリキャラ及び他作品キャラになります)見たい?
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