渡辺と川原先輩のピッチングを見る為にグラウンドへ。まずは川原先輩から投げる事に。
(私と同じ左投げか……。これは私の成長のヒントに大きく近付くぞ)
是非とも参考にしなくては……!
ズバンッ!
(速いな……。それに今のは武田さんの強ストレートに似ているかも)
余り制球力がないけど、これくらいなら目立たないだろう。その辺りも今後の課題にすれば良いしね。
ズバンッ!
次はスライダー。左打者相手に上手くはまりそう。柳大川越の大野さんが似たような球を投げていたから、川原先輩との1打席勝負の時はそれを連想していけば打てるね。
ズバンッ!
チェンジUP。最初に投げたストレートと織り混ぜて打者を打ち取る……というのが川原先輩の基本戦術になりそうかな?
その後川原先輩が十数球投げて、次は渡辺の番。
「僭越ながら渡辺の球は私が受けるよ」
そう言って私は山崎さんからプロテクターとレガースをもらって装着。
(朱里ちゃんが星歌の球を捕ってくれるんだ……。なんだか嬉しいな)
(渡辺が何か嬉しそうな顔してるけど、私に出来るのは球を捕る事だけだからね?)
「朱里ちゃんって捕手の練習もしてたの?」
「本人は球を捕る為にブルペン捕手に名乗り出た事があってね。それで私が基本的なキャッチングを教えたんだ」
「朱里ちゃんってば今じゃ私のあの球も捕球しちゃうからね~」
最低限の事は一応山崎さんに教わった……。私が捕球に名乗り出たのは山崎さんに外から渡辺の球を見てほしかったから。
とりあえず渡辺にはカーブ、スライダー、高速シンカー、遅いシンカー、そして渡辺の決め球の順番で投げさせる事に。渡辺本人にもそのようにサインを出す。
「いつでも良いよ」
私が合図すると渡辺は投球体勢に入った。
「あっ、アンダースローだ!」
「影森の中山さんとも少し違うわね……」
そりゃアンダースローにも種類がありますから。
渡辺が最初に投げたのはカーブ。かなりのキレだ。
「カーブだね」
「綺麗な曲がり方してる」
スライダー。川原先輩程の威力はないけど、見せ球としては充分なレベルだ。
「このスライダーも光先輩の後に投げさせたら打者を翻弄させられるかも知れないね」
芳乃さんからも好評価だ。かつての仲間が褒められるっていうのは私としても嬉しい。
「次、シンカー1いきます!」
「1……?」
次に投げたのはシンカー。1というのは渡辺が投げるシンカーには2種類あるからだ。
「シンカーも結構速いな」
「同系の変化球なだけに橘さんのスクリューを思い出すね」
「でも今のシンカーが1って言ってたから……」
「次、シンカー2!」
渡辺は先程のシンカーとは対極の遅いシンカーを投げた。
「凄い。今のシンカー2種類だけで打者を打ち取れそう……」
とはいえこれも渡辺の決め球ではない。これで全てなら言っては悪いけど、橘の下位互換だからね。だから最後に投げるのは渡辺の決め球……。
「朱里ちゃん、最後はあれで!」
「もちろんそのつもり」
『あれ?』
渡辺のあれに皆は首を傾げていた。何故皆全く同じ動作で動いてるの?打ち合わせでもしたの?
(……渡辺のあれは恐らくシニアの時よりも精度が上がっている筈。ここに来る前に渡辺の手を見たら新しいマメがいくつか出来ていたからね)
問題は私が上手く捕球出来るか……ってところか。
(いくよ朱里ちゃん。星歌の全力を受け止めて!!)
渡辺のアンダースローから放たれるそれは今までの変化球よりも変化が大きく、鋭い軌道で落ちていく……。渡辺の決め球……多分フォークボールだと思うけど、普通のフォークとは何かが違う。
ズバンッ!
「ナイスボール!」
渡辺の決め球が良いコースに決まったので、声掛けを忘れずに返球する。
「い、今のはフォーク……だよね?」
「多分……そうだと思う」
武田さんと山崎さんを中心に皆が騒然としていた。シニアの頃に見慣れた私からしたら皆が大袈裟な反応を見せているだけなんじゃないかと思ってしまう。
「朱里ちゃん、捕ってくれたんだね」
「ギリギリだったけどね……。私は本職の捕手じゃないから、これが精一杯。あとはうちの正捕手の仕事だよ」
私はプロテクターとレガースを外して身体を解す。捕手の体勢って結構疲れるな……。山崎さんや二宮はこんな感じで捕手の練習をしてたんだね。
「す、凄い……。凄いよ星歌ちゃん!!」
「わっ……!」
渡辺の周りに私以外の全員が集まった。あっ、もみくちゃにされてる。
(これなら渡辺もやっていけそうだね……)
あとは渡辺の我の強い性格についてだけど……。その辺りは追々やっていくとしよう。
金原いずみの藤和生活……(藤和高校野球部の登場人物は全てオリキャラ及び他作品キャラになります)見たい?
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