1回裏は武田さんのピッチングが冴えて三者凡退に倒れた。おい、修行の成果とやらはどうした3姉妹?
(この回は4番から……。私だって負けるつもりは毛頭ないけど、念には念を入れていく必要があるみたいだ)
二宮は中軸相手に専用の守備陣形を白チーム内で考えていたみたいだ。流石二宮……。
「では皆さん、手筈通りにお願いします」
『了解!』
「よーし!朱里ちゃんからホームランを打つぞー!!」
「遥の奴張り切ってるな」
「朱里ちゃんとの真剣勝負を楽しみにしていたものね」
「あれ?向こうの守備が……」
「ポジションが変わるのか。随分早いな……」
「……ってあれは大胆過ぎない!?」
「大方瑞希の入れ知恵だろうな。他にあんな小癪な手腕を発揮するのはあの中にはいない」
(非道さんがもしかしたら同じ事を思っているかもだけど……)
「ははー、そういう事か。瑞希ちゃんも思い切ったね」
「六道さんは何か分かったんですか?」
「まぁね。でも内緒だよ!」
「いや、赤チームが勝つ為に教えてくださいよ……」
「私と天王寺さんは監督支援にあって監督じゃないんだよ。あくまで解答を見付けるのは自分達だからね」
雷轟の打順からの2回表。二宮の指示で一部を除いてガラッと変わる。
外野には三森3姉妹が、外野にいた非道さんと新井さんがそれぞれファーストとサードに入り、二遊間にはファーストとサードに入っていた佐倉姉妹が入った。
(これが二宮の言うスラッガーシフト……。足の速さと守備範囲の広さを売りにしている三森3姉妹がそれぞれ外野に入る事によって外野全てが三森3姉妹の守備範囲内に収まる……というものらしい)
改めて聞くと凄いな……。なんだよ外野全てが守備範囲内って。
(まぁ私は雷轟どのように勝負に集中しよう……!)
『4番 ライト 雷轟さん』
(練習では感じなかった威圧感……。それだけ本気だって事だよね。光栄だよ)
(朱里ちゃんに勝つ……!他の事は考えないよ!!)
(雷轟さんも朱里さんも凄い気迫ですね。互いに一歩も譲らない……といった感じでしょうか)
二宮のミットは内角低めに構えてある。そこから導き出される私の解答は……!
(これだ!)
(低め……真っ直ぐ……!?)
ズバンッ!
『ボール!』
(振って来なかったか……)
(危ない危ない……。空振りを誘うフォークだったんだね)
ほんの数ヶ月前までは素人だったとは思えない。今の雷轟は打撃面だけならプロでも通用する。さっき投げたフォークだって普通はバットが出るようなコースだったからね。
(朱里さん、次はここです)
(了解)
次のコースは真ん中高め。迂闊な球を投げれば簡単に場外まで運ばれるだろうコース。それを雷轟に投げるのか……。それだったら……!
(私の次の手は……これだ!!)
(速い……。ストレート?)
真ん中高めに投げたボールに雷轟はスイングを始動する。ストレートだと思っているなら……!
(えっ?嘘っ!?)
(空振りするよ……!)
ズバンッ!
『ストライク!』
これで1ストライク、1ボール。ただ今日のところはこの手を再利用する事は難しそうだ。
(やられた……。まさかSFFだったなんて……!)
雷轟が悔しそうな顔をしてる。ごめんね。一時的にとはいえ今は敵なんだから……!
(次はここにお願いします)
二宮はど真ん中に構えていた。ど真ん中ねぇ……?さっきのSFFやナックルカーブ、フォークならば空振りが狙えるし、偽ストレートやカットボールの類いならば詰まらせる事が出来る……。難しいところだね。
(……何にしても全力で投げよう。私は雷轟遥に勝つ)
(朱里ちゃんとこんな風に勝負出来るなんて嬉しいよ。私にとって朱里ちゃんは私に野球の楽しさを教わったから、雲の上の存在だったから……。朱里ちゃんのお陰で野球が好きになれたんだよ!)
(いくよ雷轟……!)
(私は全力で迎え撃つよ朱里ちゃん!)
これが私の全力ストレートだ!!
ズバンッ!
『ストライク!』
「うわっ!今のストレート速いよ!」
「間違いなく朱里の中で最速だろうな」
(私の時も投げてくれるかな。あのストレート……)
「あんな朱里ちゃんを見るのは初めてだよ……」
「アタシ達も見た事ないかもね。少なくともシニアではあんなイキイキとしてなかったよ」
「雷轟さんは朱里ちゃんの力を引き出すカンフル剤になってるね。お互いに無自覚なんだろうけど……」
「こうなったらどっちも応援しよう!」
「……今は敵チームだが、確かに遥にも朱里にも頑張ってほしいな」
(凄い……。今の1球からは朱里ちゃんの魂を感じたよ!)
(今のストレートは自分の中で最高の球だった。阿知賀との練習試合でも投げたものだ。あの時と今の雷轟との対面で何か共通する部分はどこなのか……)
(……今のストレートは簡単に打てるものではありませんでした。朱里さんの表情から察するに今のストレートは偶然のものでしょうが、もしもこれをいつでも投げる事が出来るのならば敵として対峙した時にとても厄介なものとなります)
今のストレートは……今までの私にはなかった最高のぶつかり合いがしたいと思って投げたものだろう。シニアまでの私には決して生まれる事がなかった感情だ。
(新越谷に入ったから……いや、そもそも雷轟がいなかったら投げられる事のなかったストレートだね)
次が4球目……。私の全力ストレートをど真ん中に投げる!
(次に投げるのは恐らく朱里ちゃんの全身全霊が込められた球。私はそれを全力で打ち返すだけ……!)
私は腕を振り下ろしストレートを投げた。その結果は……!
ガツッ……!
「……?これってバットの欠片?」
「……最高の球でしたよ朱里さん」
『ストライク!バッターアウト!!』
センタースタンドに何かが当たった音がした時は少し焦ったけど、雷轟を三振させる事が出来た……!
(やるね朱里ちゃん……。次は私が勝つよ!)
(私は誰にも負けるつもりはないよ)
先頭の雷轟を三振。次は清本の打順だ。
遥「すっごく熱い勝負だったよ!」
朱里「こちらこそ」
遥「次の打席は私がホームランを打つよ!」
朱里「私だって負けないよ」
遥「次回は清本さんと朱里ちゃんの勝負が描かれるよ!」
朱里「清本との勝負も全国前の連合チームとの練習試合以来だから楽しみだね」
金原いずみの藤和生活……(藤和高校野球部の登場人物は全てオリキャラ及び他作品キャラになります)見たい?
-
見たい
-
見たくない