「さて……。ここにいる皆様にはどんな投手になりたいか……。それによってメニューが変わってきますので、教えてくださいね」
次は私も参加する投手練習。他に参加するのは武田さん、息吹さん、藤原先輩、川原先輩、渡辺の計6人で、照屋さんはあくまで野手として頑張るそうなので不参加らしい。ちなみにこの練習の指導者は石戸霞さんだ。
「まずは伸ばしたい球種や、新たに覚えたい球種、その他体力や制球力を身に付けたい等……。なんでも良いので、1つ教えてくださいね」
石戸霞さんがそう言うと皆が騒然とし始めた。その理由はなんとなく想像出来るけど……。
「先に言っておきますが、皆様が言ってくれた情報を永水野球部にリークするような真似は致しません。昨年も同じ事を白糸台高校の皆様に尋ねましたが、野球部の方には一切話していませんので」
皆が思っているであろう事態にはならないと石戸霞さんは釘を指していた。私はこの合宿の前に二宮経由で神童さんに霧島神境への合宿の話を聞いておいたから、石戸霞さんが始めからそんなつもりはないと知っている。
(しかし神童さんは仮に永水野球部に情報が漏れていたとしても白糸台が負ける事はないだろうって言ってた事を聞いてあの人の器の大きさを再認識したな……)
まぁ神童さんには新越谷には負けてしまったがな……と苦笑いしていたけど……。
石戸霞さんの発言を聞いて1人1人が話し始めた。
「私は……もっと速い球が投げられるようになりたいです!今のままだと投手として置いていかれるような気がして……!」
そう言ったのは息吹さん。今のままでも息吹さんは充分凄いと思うんだけど、息吹さんからしたらそれでも足りないようだ。
「……成程。それでは1度投げてみてください。何か道が開けるかも知れません」
石戸霞さんがどこからかミットを取り出した。狩宿さんもそうだけど、どこからバーベルやらミットやらが出てくるのだろうか?もしかして気にしたら駄目なやつ?
「わ、わかりました!」
18・44メートルの位置に息吹さんと岩戸霞さんが着く。
「まずは1球ストレートを投げてください」
「はい!」
息吹さんは振りかぶって投げた。フォームは息吹さんが初めて投手の才を認識出来た時に投げた朝倉さんと同じものだ。
(ふんふむ……)
「次はもう少し真上から投げ下ろす感覚でもう1球投げてください」
「……?はい!」
流石……。石戸霞さんは全国レベルの捕手で、全国トップクラスの投手である神代さんの球を捕ってきただけあって改善点もすぐに見付けたのか……。
(しかし息吹さんがこの合宿によって何か掴めたら……一気にエース候補として成長する事になるぞ)
(えっと……。真上から……こうかしら?)
息吹さんが続けて投げる。先程投げられたストレートと同じものだけど……。
「……まさか」
石戸霞さんは息吹さんのピッチングに何か疑問点を感じたような表情をしていた。
「もっと投げてもらっても大丈夫ですか?」
「は、はい!」
それから息吹さんは10球程ストレートを岩戸さんのアドバイス通りに真上から投げ続けた。
「貴女の名前は……」
「か、川口息吹です!」
「……川口さんはそのフォームを誰かから教わりましたか?」
「ある投手のフォームを真似たものですから、教わった……とは少し違うと思います」
「真似たもの……」
石戸霞さんは息吹さんの発言に対して考える素振りを見せて……。
「……わかりました。川口さん」
「はい……?」
「貴女にはこれから左でボールを投げてください」
「えっ……」
『ええっ!?』
石戸霞さんの衝撃な一言によって息吹さんを含めた全員が驚いていた。そりゃそうだ。息吹さんは右投げの投手なのに、それをいきなり左投げにしろなんて言われたらそんな反応になる。しかし……。
(石戸霞さんが息吹さんに示したやり方は私がリトル時代に母さんが私に提示したやり方と全く同じ……。偶然とは思えないな)
合宿が終わった後で母さんに霧島神境と何か縁があるのかを……いや、合宿中に岩戸霞さんにこのやり方をどこで知ったのかを聞いてみた方が良いのかも。
金原いずみの藤和生活……(藤和高校野球部の登場人物は全てオリキャラ及び他作品キャラになります)見たい?
-
見たい
-
見たくない