「そう……でしたか。貴女は茜様の親族だったのですね」
沈黙の中最初に口を開いたのは神代さんだった。様付けで呼ばれるとは……。ますます母さんが何者なのか気になってきた。
「早川茜は私の母です。それで……母と関わりがあるんですか?」
「……はい。私達は親の代から茜様と接点を持っています。今から21年前になるでしょうか?あの方が初めてこの霧島神境を訪れて、私達の親と交流し、今でも時々茜様はここを訪れます」
あっ、特に回想に入る様子はないんですね?それはそれで話が長くならずに済むから、全然良いんだけど。
(しかし母さんはここに来る事があるのか……。家に帰ってからも母さんに聞く事が出来たな)
「小蒔ちゃんから茜様に雰囲気が似ている方を見た……と全国大会で聞いた時はまさかと思いましたが、茜様の血を受け継いでいた訳ですね」
なんか仰々しい言い方……。母さんはここで何をしたと言うの?
「……今回の合宿の相手に新越谷高校を選んだのはそれを確かめる為でもありました。私達の私情で貴女方を利用した事をここに謝罪します」
「誠に申し訳ありませんでした」
神代さんと石戸霞さんが深々と頭を下げる。私は別に頭を下げてほしい訳じゃないんだけど……。
「……母は今でも皆さんと交流があるんですよね?」
「はい……。時々ここを訪れては私達に良くしてくれています。六女仙も、永水高校野球部の部員達も……」
まぁまだ腑に落ちない点はあるけど、これ以上聞くのは野暮な感じもするし、帰って明日の準備をしようかな。
「……なんとなく聞きたい事は聞けました。ありがとうございます。私はこれで失礼します」
私がこの場を離れようとすると神代さんに声を掛けられる。
「ま、待ってください!」
「はい……?」
「今の貴女は大きなプレッシャーと戦っています。決してそれには負けずに練習に励んでください。さもなければ心が歪み、身を滅ぼす事になりかねません」
プレッシャー……か。確かに私はどこか焦っているのかも知れない。新越谷では雷轟の成長速度が凄まじいし、投手陣も武田さん、藤原先輩、息吹さんの3人はそれぞれの個性を発揮しているし、川原先輩や渡辺もそれは同じ……。
(負けられない……という気持ちが今までで1番強いんだ……。だから私はプレッシャーを感じているんだね)
でもそうだとしたら……その忠告が今の私の耳に入る事はないだろう。母さんの話を聞いて私も母さんに負けないように奮起しようと更に焦りそうだし……。
(夢の事を神代さん達に相談したら……この私の中にある変なモヤモヤもなくなるのかな……?)
まぁその辺りの事は明日以降に考えれば良いか……。
『そう……。朱里が』
「はい。茜様のご息女様は何やら焦っていました。あのままではプレッシャーに押し潰されるのではないかと……」
『それを乗り越えるか否かは朱里次第ね。一応私の方でも手は打っておくけれど、余り期待はしない方が良いわ』
「ありがとうございます。茜様が力を貸してくれるだけで百人力です!」
『私はそこまで大層な人間ではないのだけれど……。まぁ私が朱里に何かするのは合宿が終わってからになるわね』
「……やはりお忙しいのですか?」
『シニアの世界大会の日本代表の監督に抜擢されたのよ。これからは主婦業に加えてその辺りの事もやらなければならないから、多忙になるわね』
「わかりました……。相談に乗ってくださってありがとうございました」
『少しくらいの雑談ならいつでも言いなさい。私も霧島神境には21年前からお世話になっているのだから。小蒔や他の六女仙、その親達にもよろしく言っておいて』
「はい。小蒔ちゃん達にもそのように言っておきます」
(朱里様の運命の賽は投げられた……。私達に出来るのは朱里様が壊れないように見守り、祈る事だけ……)
部屋に戻ると何やら盛り上がっていた。
「あっ、朱里ちゃんが戻ってきた!」
「朱里も連想ゲームやろうぜ!」
連想ゲーム……バスでやってたやつかな?それでこんなに盛り上がっていたのかな……?
「朱里ちゃんも参戦って事で新しいお題を出すよ!」
「今度こそ上手く答えてやるぜ!」
「頑張るよ!!」
(まぁ今はこの時間を楽しみますかね……)
就寝ギリギリまで連想ゲームは盛り上がった。
金原いずみの藤和生活……(藤和高校野球部の登場人物は全てオリキャラ及び他作品キャラになります)見たい?
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