「今回はありがとうございました」
「また来てくださいねー」
永水の六女仙達、姉帯さんや臼沢さんに見送られて私達は帰路に着く。道中は練習に疲れたのか、私を含めたほぼ全員がバスや電車の中では寝静まっていた。
(行きしに見た夢を見なくなった……。私の中で焦りがなくなったからなのかな?)
新越谷に戻り、それぞれ解散となった。
「ただいま」
私は家に帰り挨拶をする。その声に答えてくれるのは……。
「あら、おかえり」
「母さん……」
今回の合宿を経て母さんに聞きたい事が色々ある。
「母さん、その……」
「……朱里が何を言いたいのかはなんとなくだけれど、わかるわ。晩御飯の支度をするから、先に入浴を済ませてきなさい。話は食事をしながらゆっくりとしましょう」
「……うん」
母さんには恐らく向こうから連絡がいっているのだろう。私の心境をお見通しみたいだ。
私は入浴を済ませ、食卓に着いた。
「……さて、どこから話したものかしらね。朱里はなにか聞きたい事はあるかしら?」
「私、は……」
私はなにを聞くべき?母さんと霧島神境や神代さん、六女仙達の関係性?それとも母さんの高校時代そのもの?六道さんからもぼんやりとしか聞いた事はないし……。
「響からも今回の事を私の話しやすい部分からで良いから話しておいて……とも言われているし、そうね……。話をする前に謝罪させてもらえるかしら?」
「謝……罪?」
「朱里。貴女がリトル時代に苦しんでいたにも関わらずそれに対してなにも出来なかった事、そして私達のわがままに貴女を巻き込んでしまった事を謝らせて。本当にごめんなさい」
そんな……。なんで母さんが謝るの……?私が反抗期を拗らせて母さんや父さんに迷惑をかけたのは私なのに……!
「わ、私の……私の方こそごめんなさい。母さんや父さんに冷たく当たって、母さんは私の事を考えてくれていたのに、私はそれを無下にして……本当にごめんなさい!」
「朱里……」
私は涙を流して母さんに抱き付いた。母さんは優しい手付きで私を片手で抱き締め、もう片方の手で私の頭を優しく撫でた。
(家族ってこんなにも暖かいものなんだね。長らく感じていなかったよ)
「……朱里の心中はわかったわ。このままだと話が進みそうにないし、ここは手打ちにしましょう」
「……母さんかそう言うなら」
母さんから許しをもらい、私の心の中は軽くなった。あとは私自身の醜い嫉妬心くらいだ。
「では私の高校時代くらいの事から話そうかしら?」
「ちょっと待って母さん」
「どうしたの?」
「その話を聞くのはもう少し色々落ち着いてからにしてほしい。今は秋大会に向けて余計な感情をなしにして練習したいし」
「……そういえば月末からだったわね。わかったわ。シニアリーグの世界大会が終わった後にまた話させてもらうわね」
「私としてはそれでも良いけど……。シニアリーグの世界大会が終わった後?」
母さんがシニアリーグの世界大会となにかしら関係があるのかな?
「……朱里にはまだ言ってなかったけれど、私はシニアリーグの世界大会の日本代表に選ばれたの」
「えっ?本当に!?」
「ええ。私に務まるか不安だけれど、推薦もあってね」
凄い……。母さんが監督するなら今年の日本代表はアメリカ代表を越えるかも知れない!
「母さんなら大丈夫だよ。なんたって私の母親だからね」
「……言うようになったわね。これなら貴女の心配もいらないかしら?」
「うん……。またなにかあったら相談させてよ」
「もちろんよ。貴女の母親だもの」
私の母さんは本当に凄い人間だ。それは私や父さんだけじゃなく、六道さんや神代さん達、そして早川茜を知っている人は全員そう思うだろう。
(母さんの娘で本当に良かった……!)
そうしんみりと思うくらいに私は母さんの事が好きになった瞬間だ。
金原いずみの藤和生活……(藤和高校野球部の登場人物は全てオリキャラ及び他作品キャラになります)見たい?
-
見たい
-
見たくない