「凄いじゃんはづき!あんな素早いフィールディング見たの初めてだ!」
「ちょっとあの3姉妹の動きをイメージしてトレースしただけですよ。でも……」
「でも?」
「あんまり連続しては出来そうにないです。今回は後続の2人がバントをしようとすらしなかったからなんとか誤魔化せたんですが……」
「次の打席以降は危険って事ですね」
「はい。あと裏の攻撃は私からなんですが、期待はしないでください」
「はづきさん……?」
「4回もパーフェクト決められた……」
「それどころか朝海姉さん以外は三振よね?」
「…………」
「朝海姉さん?」
「……いえ、橘はづきの突破口が見えた気がするの」
「本当に!?」
「まだ可能性の段階だけれどね。それに……」
「それに?」
「橘はづきはフルスロットルで投げている……。あんな調子では7イニング持たないわ」
「私達のように山を走っているかもよ?」
「夕香姉さん、それは色々と洒落にならない……」
4回裏。橘の打順からだけど……。
『ストライク!バッターアウト!!』
「はづきどうしたんだろ?1球も振らなかったけど……」
「恐らくですが、はづきさんはピッチングに専念する為に体力を温存しているのでしょう」
「温存……?」
「本来投手というポジションは投げるのに集中させる為に下位打線に置く事が多いです。今回のはづきさんのように打撃方面でも期待されていると上位打線に置かれているケースもありますが」
「じゃあプロ野球でDH制があるのは?」
「……これは私の持論になりますが、投手がピッチング1本に絞る為と、守備が苦手でバッティングに自信がある打者を起用する為でしょう」
なんか二宮と雷轟が投手というポジションについて話し合っていた。途中からプロ野球の話に変わっていたけど……。
(梁幽館が投手である橘を1番に起用するくらいに橘の打撃方面は大きく成長している……って事か)
もしも橘が梁幽館の陽さんと同様の役割をこなせるとしたら、友沢みたいな選手になりそうだ……。
「はづきちゃん、1球も振らないでどうしたの?」
「弥生ちゃん……。私はこれからピッチングに専念したいの。だから少しでも体を休めないと」
「はづきちゃん……」
「それに私が決めなくても先輩達がきっと決めてくれる……。だから私は7回まで全力で投げるよ」
「もしも延長戦に入ったら……?」
「……その時は和美先輩か弥生ちゃんに美園学院の相手をお願いしようかな?」
「か、和美先輩はともかく、私じゃ無理だよ!」
「そんな事ないよ。弥生ちゃんもユニフォームもらってここにいるんだもん。弥生ちゃんだってベンチに入れなかった皆の分も活躍しないとね」
『アウト!』
三森3姉妹の動きに隙はない。私達と当たるのなら決勝戦だけど、これは攻略が難しいな……。
「4回も両チームパーフェクトですか……」
「梁幽館は朝海さん以外は橘による三振、美園学院は打たせているもののほぼ全ての打球を3姉妹に任せて取ったアウト……。中々ハイレベルな試合だよね」
「そうだね~。まるで埼玉県の夏大会の準決勝で朱里と亮子が投げ合った時みたい☆」
「亮子ちゃん……はこの秋大会には参加出来ないんだよね」
「そう……だね。私と橘がほぼ毎日お見舞いに行って様子を見てる。本人は気丈に振る舞ってはいるけど、私達の見えないところではきっと悔しい想いをしていると思う」
あれはリトルで私が右肩を壊した時と同じ印象を受けた。
皆の前ではなんでもない振りをして1人になると肩の痛みや、投げられなくなるかも知れない絶望感、そしてチームの足を引っ張っている悔しさで涙したものだ。
「で、でもでも!どっちのチームが均衡を破るのかは楽しみだよね!投手戦の醍醐味だよ!」
急に雷轟が話題を変えてきた。私達の重い空気を察知したのかな?
「……そうですね。4回の動きを見る限りだと危険なのは梁幽館でしょう」
「はづきの動きが若干激しいからね~。先にバテちゃうかも」
「……それでもここが踏ん張り所なのも間違いないかも知れないね」
それに比べて3姉妹の方はまだ余裕がある。この試合の行方がどうなるか……。ふとした動きで変わりそうだから、目が離せないよ。
金原いずみの藤和生活……(藤和高校野球部の登場人物は全てオリキャラ及び他作品キャラになります)見たい?
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