試合は進んで6回表。ツーアウトまでは橘の変化球によってパーフェクトを見せていたが……。
『ボール!フォアボール!!』
9番打者を歩かせてしまう。
「均衡が……!」
「遂に破れたね……!」
「はづきさんからガス欠の片鱗が見えてきましたね。更に美園学院の次の打者は三森朝海さん……。向こうからしたらチャンスですね」
「大丈夫かなぁ……」
橘……!
「はづき、大丈夫……?」
「なんとか大丈夫ですが……。それよりも歩かせてすみません」
「……私もちょっと慎重にいき過ぎた部分はあるわ」
「正直この局面は厳しいですね。チャンスに3姉妹まで回すまいと思って投げていただけに……」
「アンタはどうするつもり?」
「そうですね……。リスクが高いですけど、抑えやすい状況なら作れます」
「よし!ツーアウトでランナーが出た!」
「朝海姉さんに回ってきたね……」
「…………」
「……朝海姉さん?」
「……夜子。この局面を、そして橘はづきを攻略する人間は貴女になると思うわ」
「えっ?朝海姉さんは!?」
「私は……多分勝負を避けられると思うわ。そしてその次の夕香も……」
「そんなまさか……って行っちゃった……」
ツーアウトでランナーが一塁。ここでバッテリーがどう出てくるか……。
「……って嘘でしょ!?」
「捕手が……立ち上がったね……」
「成程……。3姉妹の機動力を塞ぎにきましたね」
「確かにあれなら3姉妹は迂闊には動けないけど……」
「ハイリスクハイリターン……。まさにギャンブルとも言える行動ですね」
捕手の小林さんが立ち上がり、朝海さんを歩かせる。この次の夕香さんも同様に歩かせて満塁で夜子さんとの勝負に臨むつもりなんだろう。
もしも内野の頭を抜けたら3点タイムリーとなってしまう。
(まさにギャンブル……か……)
だとしたらこの回が大きな勝負所……。橘の、そしてこの試合の命運を分けるイニングになりそうだね。
『ボール!フォアボール!!』
(これで……良いのよね?)
(きっと大丈夫な筈です。私は全力で投げるだけ……。あとはバックの皆さんを信頼しますよ)
『ボール!フォアボール!!』
(朝海姉さんに続いて夕香姉さんまで歩かされた……。朝海姉さんが言っていたのはこういう事だったんだね)
「ツーアウト満塁で夜子に回ってきたか……」
「夏大会が終わってからうちの打力が1番伸びたのは夜子だもの。この試合を決める一撃を打ってくれるわ」
(萌さんと彩菜さんからプレッシャーを感じる……。それでも……先輩達の期待に……応えたい……!)
(ツーアウト満塁……。回ってきたのは三森夜子ちゃん。シニア時代は非力なイメージだったけど、夏大会を終えてから彼女のパワーが大幅に上がったって友理先輩は言ってた。そして三巡目に入って私の変化球はコースに決まらなくなってる……)
「…………」
(左対左は基本的に投手側が有利な筈なのに、3姉妹相手だとそれが全く感じられない。朱里せんぱいもこんな気持ちを味わっていたのかな……?)
(はづき……。満塁とはいえツーアウト。思いっ切り投げなさい!)
(依織先輩は真ん中付近にミットを構えている……。ここで私はなにを投げるべき?三振を取りにいくスクリュー?カーブやスライダーと同等の変化をするスクリュー?それともカーブやスライダー?)
(橘はづきが投げる勝負球……。恐らく初球からくる筈……!)
(絶対にこのピンチを切り抜ける……!)
(絶対に橘はづきから打ってみせる……!)
((負けない……!))
金原いずみの藤和生活……(藤和高校野球部の登場人物は全てオリキャラ及び他作品キャラになります)見たい?
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