試合は進んで4回。
前のイニングで新越谷は主将のタイムリーツーベースでなんとか同点になったものの、後続は抑えられ続ける。そして藤原先輩も1打席目の借りを返すべく金子さんを三振に抑えた。
カンッ!
先頭の山崎さんがヒットで繋ぎ……。
コンッ!
川崎さんが再びセーフティバントを決めて、ノーアウト一塁・二塁のチャンスで私に回ってくる。
「勝ち越しのチャンスだ!」
「頼んだぞ朱里ーっ!」
(期待が重いなぁ……。これで期待に応えられないのは不味いでしょ!)
(前の打席では運良く打ち取れたけど、この人は今日の新越谷のスタメンの中で1番危険だと思います。歩かせた方が良いでしょうか……?)
まぁ歩かせてくれるならラッキーくらいには思っているけど、向こうがどう出るか……。
「ノーアウト一塁・二塁で朱里さんですか……」
「朱里ってどっちかって言うとチャンスメイクするタイプなんだよね~。打者としては」
「シニアでは朱里ちゃんがチャンスを作って、後続がそれを広げて、上位打線に回ってきたら一気に決める……っていうのが朱里ちゃんが出場した時の得点パターンだもんね」
「これまではチャンスで朱里さんに回ってきた数が少ないですからね。朱里さんがどのようにするか、そして向こうが勝負してくるか見物ですね」
「朱里ちゃんが歩かされる可能性もあるの?」
「1打席目で朱里さんが見せた粘りは投手側としては1番嫌なパターンの打者です。そうならないように歩かせる可能性は低くありません」
「捕手が立ち上がってないのを見ると朱里とは勝負するみたいだね~☆」
(果たして姫宮側には朱里さんに対する勝算があるか、それとも朱里さんが新越谷勝ち越しの切欠を掴むか……。それがこの打席の肝となるでしょう)
捕手が立ち上がってないところを見ると勝負はしてくれるみたい。まぁ主将や藤原先輩や雷轟とかに比べると大した打者じゃないし、一塁が空いている訳じゃないから、無理してピンチを広げる必要もないって事かな。まだ同点だし。
カンッ!
『ファール!』
(この15番、やはり吉田さんの球に着いていっている……。タイミングも完璧です)
(ここで私がミスをしても次は照屋さん……。打率の方は私達の中でも上位だから期待値も高い)
だからと言って私が易々とミスをする訳にはいかないけど……ね!
カンッ!
『ファール!』
(少しタイミングがずれた……。下手すれば空振りするところだったよ。危ない危ない)
(これでもまだ打ってくるのね……。もう少しタイミングをずらせれば……!)
3球目。吉田さんは振り被る。
(えっ?この球は……!)
ガッ……!
吉田さんが不意に投げてきた球に私は打ち上げてしまった。
『アウト!』
(まぁゲッツーじゃないのが不幸中の幸いかな……)
もしかしたらまだまだ吉田さんの、姫宮の攻略は程遠いかも知れないね。
「朱里ちゃんが打ち取られちゃった……」
「今の球ってチェンジUP……だよね?」
「チェンジUP……というよりはサークルチェンジと言った方が正確ですね。普通のチェンジUPよりもやや斜めに曲がるのが特徴的な変化球です」
「斜め……?」
「しかも普通のチェンジUPと殆ど差違がないのが厄介な球ですね。普通のチェンジUPと誤認させてサークルチェンジを打ち取らせる……というのが本来のサークルチェンジの使い方だそうです」
「はぁ……」
「吉田さんが最後に投げた球は何だったの?」
「チェンジUP……でしょうか?」
私がベンチに戻ってくると雷轟と大村さんが私に尋ねてきた。
「……あれはサークルチェンジと言ってチェンジUPとはちがってやや斜めに曲がる球種だね」
「サークルチェンジを投げる投手を見るの初めてだよ~!」
芳乃さんがぴこぴこしていた。まぁ私もサークルチェンジを打席で見るのは初めてだけど……。
(これで更に吉田さんが普通のチェンジUPを持っていると厄介だな……。1打席目では温存されていたし、まだ見ぬ変化球を隠している可能性もある)
そうなるとこの試合も苦戦を強いられるかもね……。
金原いずみの藤和生活……(藤和高校野球部の登場人物は全てオリキャラ及び他作品キャラになります)見たい?
-
見たい
-
見たくない