準決勝まで明後日に迫っているある日。私は芳乃さん、主将、藤井先生の3人と話していた。
「そうですか……」
「私事で大変申し訳ないんですが……」
「……本音を言えば私達は朱里の力に期待している。仮に新越谷が秋大会を制して全国出場を決めたとしても、朱里が参加出来ないのをわかってはいるんだが……」
「うん……」
やはり3人共苦い表情してるよね……。まぁ正直私の言っている事はただのわがままで自分勝手なものだ。まぁ二宮達は同様のわがままを押し通しているんだけど……。
(私だって本当は試合に参加したいけどね……)
「……わかりました。監督として早川さんの準決勝不参加を許可しましょう」
「……ありがとうございます」
正直通るとは思わなかった。試合には不参加で、偵察に行く訳でもないからね。
「その代わり決勝戦まで進んだらまた私達に力を貸してね!」
「それは……言われるまでもないよ。私の力なんかが役に立つのなら」
準決勝の相手は咲桜。田辺さん達が引退して、友沢が怪我で不参加とは言えシード候補であるのは間違いない。
「そんな事はないさ。4回戦だって朱里の粘りのお陰で突破口が掴めたようなものだしな。そして今までの試合も……」
「……買い被りですよ」
本当にね……。試合を決めたのは主将だし、私はむしろチャンスを潰しちゃったくらいなのに……。
「何々?なんの話をしてるの?」
話をしていると雷轟が割り込んできた。
「……いや、なんでもないよ。話はもう終わっているしね」
「ふーん……?まぁ良っか!」
訝しげに私を見ているけど、深入りはしないようだ。なんとなく察しているんだろうなぁ……。普段の言動からはわかりにくいけど、雷轟は頭の回転が速い。学力も学年1位を取れるレベルだしね。
「それよりも朱里ちゃん!バッピをお願いしても良い?橘さんの対策をしたいから!」
「橘の……?」
そうか……。橘も球種は違えど偽ストレートを投げるようになった。スタンド越しだと判断はし辛いけど、媒体の変化球はスクリュー、カーブ、スライダーのどれかである可能性が高い。
(まぁ私達の知らない変化球を橘が覚えている可能性もあるけど、今の内に予習しておくのも悪くないか……)
「構わないよ」
「ありがとう!」
話を切り上げて私は雷轟とグラウンドに向かった。
「……私達は朱里に頼り過ぎたのかな?」
「どうなんでしょうね……?朱里ちゃんのお陰で夏大会も全国優勝まで辿り着けたし」
「……何れにせよ新越谷が秋大会を勝ち抜けば、春にある全国大会に早川さんは参加しません。1回戦の時と同じように早川さんがいない環境に慣れるべきなのかも知れませんね……」
「「そうですね……」」
準決勝当日。私は試合会場には行かずに、ある場所に向かっている。
「来たよ」
「……まさか本当に来るとはな」
行き着いたのは友沢の病室。
「今の友沢は目を離すと危ない気がしたからね。特にこの準決勝……新越谷と咲桜が戦うこの試合は友沢1人で見せる訳にはいかないよ」
「経験者は語る……か。朱里がそう言うのなら、今の私はかなり危ない状態なんだろうな」
過去に私が右肩を故障した時に川越シニアの試合見るとドス黒い感情が沸いた事がある。そうなったら取り返しのつかない事になる……と二宮に言われて、二宮がずっと私の側にいてくれた。
(思えば二宮がいなかったら私の野球人生は終了していたんだろうなぁ……)
二宮の存在にありがたみを感じる今日この頃だった。
金原いずみの藤和生活……(藤和高校野球部の登場人物は全てオリキャラ及び他作品キャラになります)見たい?
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