ストレート1本であの聖皇学園を下した新井さん……。決勝戦で投げてくる可能性が低いとは言え、この結果は想定外だ。
「せ、聖皇学園って全国の4強常連なんだよな……?」
「その筈……」
「それをストレートだけで三振で抑え続けて、挙げ句の果てに完全試合だなんて……」
誰が漏らしたであろう言葉から、立て続けに発言する。
「これが二宮の言ってた……。しかしまさかここまでとは思わなかったな……」
「朱里ちゃん、何か知ってるの?」
私の呟きが聞こえていたのか、武田さんが尋ねてきた。
「今日の新井さんはゾーンに入ってたんだよ」
『ゾーン?』
一部を除いた全員がゾーンについて疑問点を持っていた。その中で反応したのは芳乃さんだった。
「ゾーンって……あの一流アスリートがなるって言われているあの!?」
「そのゾーンだね。意味合いについてはまたいずれ解説するとして、何故新井さんがゾーンに入れたかって話だけど……」
私が新井さんのゾーンについて説明しようとすると……。
「新井さんが今日の試合でゾーンに入れたのは条件が全て揃ったからです」
『二宮さん!?』
いつの間にか観客席に座っている二宮が答えた。君いつからここに来たの?全く気配を感じなかったんだけど?試合終わったばかりだよね?忍者?忍者なの?ニンジャナンデ?
「試合終わったばかりなのに、どうしてもうここにいるのさ……?」
「午後から始まる新越谷と梁幽館の試合を観戦する為に良い席を確保しておきたかったからです」
それ理由になってないんだけど……。まぁ良いや。
「それで?条件が全て揃ったっていうのはどういう事?」
「ゾーン状態に入る条件は人に寄りますが、共通している部分は一定以上の能力がある事と、最上級生だから……という部分です。朱里さん達も心当たりがあるのではないですか?」
心当たり……。あったような、なかったような……?
「今日の新井さんと同じ状態なのが夏大会での大野さんと梁幽館の中田さんです」
「大野さんと中田さんが……?」
大野先輩と中田さんが!?いや、確かにあれはそんな感じがしたけど、あれがそのゾーンだって事……?
「はい。と言ってもあれは一時的なものに過ぎません。不安定に入り、短時間で解除されます。そして、試合になると常にゾーン状態に入れるようにコントロールを完璧にしたのが神童さんですね」
『神童さんが!?』
確かに私達は神童さんの球をまともに打った事がない……。まさか常にゾーンに入っていたから?
「ゾーン状態に完璧に入る事が出来れば、いつもと違う……という事が悟られなくなります」
「悟られなくなる……?」
「そうですね……。今日の新井さんを見て朱里さん達はどう思いましたか?」
二宮が問うと1人、また1人と感想を述べた。
「なんか威圧感を感じた……」
「あんな球を打てるのか、本当に私達は新井さんから点を取ったのか……って思ったな」
「私もあんな球が投げられるかしら……?」
上から川原先輩、主将、藤原先輩だ。それぞれが新井さんの球を見た時に思った事を口にしている。
「……川原さんと岡田さんの言うように調子が絶好調である事に加えて、条件が全て揃った時にゾーン状態に突入出来ます。人によってその条件はバラバラみたいですが」
「バラバラ?」
同じゾーンでも新井さんと神童さんだと別のものになるの?
「新井さんの場合だと3年生が引退した現状が実質2年生が最上級生である事で1つ、ボロボロに打ち込まれた事が1つ、落ち着きを手に入れた事が1つ、そして最後に闘志を見せる事……。この4つが新井さんがゾーン状態に突入する条件でした」
色々気になる部分はあるけど……。
「じゃあ神童さんは……?」
「神童さんの場合は少し特殊な例ですね。あの人は1年生の時点でゾーンに片足を浸かっている状態でした」
やっぱりあの人とんでもないな……。あとはそんな神童さんと3年間ライバルとして戦ってきた大豪月さんも……。
「まぁ神童さんのような例外もありますし、最上級生以外だと和奈さんや雷轟さんが無自覚に片足を浸かっている状態ですね」
「えっ、私が!?」
まさかの新事実。雷轟がゾーン状態に入っていた……?
金原いずみの藤和生活……(藤和高校野球部の登場人物は全てオリキャラ及び他作品キャラになります)見たい?
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