ま、まさか2度も梁幽館に勝てるとは思わなかった……。夏大会で勝てたのは運が良かったからのと、奇襲が上手くはまったからだ。
それに吉川さんのゾーンだって頭から入っていたら私達は完全試合を食らっていた可能性すらあった。
(だから橘にホームランを打たれた時は負けたんじゃないかと思ってしまったんだ……)
それでもめげずに後続を抑え、ピンチを作りつつも要所でキチンと打者を打ち取り、最後まで投げ切った武田さんのお陰で私達は勝てたんだ……。
「朱里ちゃん!」
「雷轟……」
「ナイバッチ!!」
「うん、ありがとう」
……今思い出すと大声出したのって久し振りな気がする。今もアドレナリンが出まくってるし……。
(自分が試合を決めた……って考えるとなんか嬉しくなってくるね)
あとは明後日にある決勝戦……。相手は白糸台。準決勝で新井さんが投げていたのを考えると、先発は鋼さんでくる可能性が高い。鋼さんからは全然点が取れてなかったから、これを機に苦手意識をなくしたいところだ。
「最後には新越谷が勝ちましたか……」
「……良い勝負だった。本当にどちらが勝っても可笑しくなかったよ」
「それでも……自分達がいたチームが勝てなかったのは悔しい」
「勝つ事があれば、負ける事もあります。実力が拮抗している高校同士の対戦はほんの少しの綻びが敗北に繋がり、今回は新越谷が梁幽館の綻びを見付け、試合に勝つ事が出来ました」
「綻び……とは結局何だったんだ?」
「……恐らくですが、終始雷轟さんとの勝負を避けた事でしょう」
「だけど雷轟は……」
「確かに雷轟さんは全国で1、2を争うスラッガーで、勝負を避けたい気持ちはわかります。ですが勝負を避けられた時に備えて雷轟さんが確実に点が取れるプランを新越谷全体で考え、その結果があの走塁でしょうね。雷轟さんとの勝負を避けると、雷轟さんの走塁に翻弄されてしまいます。今回の影森がそうでしたね。逆に言えば勝負をして雷轟さんを抑える事が出来たなら、新越谷の流れは崩れ、梁幽館の勝利へと一気に近付く事が出来たでしょう」
「君は……凄いな。常に状況を二手、三手先を見据えている」
「確かに……。普通そんな事まで出来ない」
「これが私の性分なんですよ。趣味であり、日課であり、日常なんです。こういう風に情報を集め、それを分析し、そこから思考を回らせないと落ち着きません」
(本当に、気が付いたら今の私が誕生していただけです。多分『あの時』からずっと……)
『ありがとうございました!!』
整列と挨拶を済ませて、私達はこれから決勝戦に向けてのミーティングだ。
「朱里せんぱい、お疲れ様でーす!」
「せいっ!」
「おぶっ!?」
あっ、つい反射的に回し蹴りをしてしまった……。
「な、ナイスキック……」
「はづき殿と朱里殿のこのやり取りを見るのも久々でござるな」
橘と一緒に村雨が来ていた。村雨とはシニア以来だけど、相変わらず濃い。
「今日は我々の完敗でござった」
「いや、勝てたのは運が良かったからだと思うよ?」
実際に村雨がスタメンで出場していたなら外野の守備力は大幅に上がっていただろうからね。
「そんな事はないでござるよ。確かに我々梁幽館は日々練習に明け暮れ、尚且つ毎年シードに食い込む実力を持ってはいるけど、きっと新越谷はそれに負けない練習をしていたでござろう。まぁこれはあくまでも拙者の勝手な予想でござるが……」
まぁ確かに私達は私達なりに精一杯練習してきた。しかしそれが対戦相手に通用するかはまた別の話だ。
「そうそう。瑞希殿から伝言をもらっているでござるよ」
「伝言?」
二宮が……?
「『関東大会の決勝戦、私達は1年生だけで挑みます。これをどう捉えるかは朱里さん達次第です』……と言っていたでござる」
二宮の声真似滅茶苦茶似てるな……。思わず本人が言っているのかと思っちゃったよ。
「1年生だけで……ね」
私達が必死で梁幽館と戦っている裏側で白糸台は余裕だな……。もしかして本番は全国大会だけとかそういうのスタンス?
(まぁ新戦力を育てている最中の可能性があるし、二宮の発言が本当なら、私達1年生が3年間相手する面子で来るって事だよね?)
何にせよ私達は関東大会優勝に向けて、打倒白糸台……のつもりで練習をするだけだ。
金原いずみの藤和生活……(藤和高校野球部の登場人物は全てオリキャラ及び他作品キャラになります)見たい?
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