試合は進んで6回裏。スコアは1対0のまま私達がリードしているんだけど……。
(あれからヒットは打てても追加点が取れないから、流れが悪いんだよね。しかも雷轟に至ってはこの試合ノーヒットときたもんだ)
これに関しては雷轟の調子が悪いのか、鋼さんの調子が良いのか、雷轟と鋼さんの相性が悪いのかはわからない。今の私は雷轟を心配する余裕はないからね。
カンッ!
5回までパーフェクトに抑えてたんだけど、この6回裏に7番、8番と連続でヒットを打たれてしまい、ノーアウト一塁・二塁のピンチになってしまう。
(ここにきて連打か……。5回までの朱里ちゃんは絶好調だったし、今の朱里ちゃんの投げる球も勢いは落ちてなかった……。1年生とは言え、白糸台の選手の対応力が上がったって事なのかな?)
不味い事になったなぁ……。私にとって最悪のタイミングで打たれてしまったよ。
「朱里ちゃん、大丈夫?」
「……まだ問題ない筈。1年生で下位打線とは言え、流石白糸台の選手って事だね。最悪のタイミングで打たれてしまったけどね」
『9番 キャッチャー 二宮さん』
「二宮さん……」
今の私にピンチになった場面で、2打席目の二宮を抑えられるのだろうか……。
(ここが恐らく最大のチャンスですね。もしもここで点が取れないとなると私達の敗北はほぼ確定と見ても良いでしょう)
恐らくここが最大の山場……。ここを凌ぐ事が出来れば私達の勝利に大きく近付く筈。気張っていかなきゃね!
「瑞希殿の2打席目でござるな!」
「しかも逆転のチャンスと来たもんだ」
「逆にここで早川ちゃんに抑えられたら、このまま新越谷が逃げ切りそうだね~」
「わ、私はどっちを応援したら良いんだろう……?朱里ちゃんも、瑞希ちゃんも私にとっては大切な人達だから、悩んじゃうよ」
「う~ん。ここはより付き合いが長い方を応援したら良いんじゃないかな~?」
「……それなら瑞希ちゃん、ですかね」
「早川よりも二宮の方が付き合いが長いのか?」
「朱里ちゃんと知り合ったのはリトルに入った時ですが、瑞希ちゃんは幼稚園からの幼馴染なんです。実は朱里ちゃんと同じ小学校なのを卒業まで知らなかったですけど……」
「な~んか不思議な人間関係だね~」
カンッ!
『ファール!』
今何球目だろうか?二宮にカットされ続けて正直辛い。ナックルカーブもギリギリで当ててくるし……。
(カットもギリギリですね。タイミングが寸分でも違えば空振りになってしまいます。向こうにそれが悟られてないと良いのですが……)
(ボール球は見逃されるし、ストライクゾーンを通る球はギリギリのところでカットされるし、状況が悪くなる一方だ。どうしたものかね……?)
「タイム!」
山崎さんがタイムを掛けて、こっちに来た。二宮相手に歩かせるかの相談に来たのかな?私も一息付きたかったし、丁度良かったかも……。
「良い感じに瑞希ちゃんが粘ってるね」
「二宮さんは私達の為に早川さんの球数を費やしてくれています。日葵、私達のバットで白糸台を逆転まで導くのよ。二宮さんの頑張りを無駄にしないようにね」
「もちろんだよ!陽奈お姉ちゃん!」
(1年生達の結束が深まっていく……。これも二宮の人徳のお陰だろうな。まぁ本人は自覚が全くないみたいだが……)
「ミズキさん、fightデース!」
「頑張って……!瑞希ちゃん!」
(今の主力メンバーを中心に1年生にまとまりが出来ているのは間違いなく二宮に感化された影響だろう)
「二宮さん、朱里ちゃんの持ち球を悉く打ってきてるね……」
「それもカットという形でね……。芳乃さんには完投を目指すように言われているけど、下手すればこのイニングで限界かも知れない」
「そんな……!何か打つ手はないの?」
山崎さんは泣きそうな目で私を見ている。そんな顔されたら罪悪感が出ちゃうじゃん……。
「……1つだけ、試したい事がある」
「試したい……事?」
「これが失敗すれば一気に逆転を許されてしまう……。試しに何球か投げたけど、未完成なんてレベルじゃないくらいに酷かった……。大分マシになったとは思うけどね」
「それが……二宮さんを抑える術になりうるの?」
「それはわからない……けど、意表は突けると思うし、やってみる価値はあるかもね。その分リスクも高い。所謂ハイリスクハイリターン……ギャンブルだよ」
私がそう言う事で山崎さんは悩みだした。余り時間は取れないのに、二宮を抑える為にどうするかを短時間で悩まなきゃいけないんだからね。
(あの人が見ていたら……今の私になんて言うのかな?)
私がこれから投げようとしてるのは、あの人の投げる球を彷彿させる1球だ。
金原いずみの藤和生活……(藤和高校野球部の登場人物は全てオリキャラ及び他作品キャラになります)見たい?
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